第40話 チーム再編
二ヶ月後の、七月下旬。
終業式に前期日程の通知表を授業用の電子パッドでもらった。
総合順位 7位 /250名中
『まあまあやるじゃない。私もカレッジにいた時はBプラス四人中の一人でしたけどぉ』
比較しづらいマウントを引き合いに出されても、な。
学校の家族連絡は、相場家ではなくミカコへ行くらしい。
『住所はベットラーの家だけど、メールと電話番号は私のよ』
「面倒くさいことしてくれてんなあ、あんた」
『だってぇ、絶世の美女が自宅に元気ハツラツな青少年と住むわけにいかないじゃなぁい?』
「そりゃそうだけど、その言い回しやめろよ」あと、本当に男いないのか。大丈夫か?
『何かお祝いしないとね』
「夏は海外じゃなかった?」
『んー。実は今、ニューヨークにいるの。今、二三時頃よ。実家にいるの」
「え?」
『明日、実家主催の社交会に顔出したり、テディに頼まれたロスでの研究者たちとの会合に代理出席したりね』
「本当に忙しいんだな。ご苦労さま」
『どういたしまして』うーん、ちょっと違うかな。
「じゃあ、六花も寂しがるな」
『だからお土産たっぷり買い込んで帰るわ。あなたもたっぷりお兄ちゃんしてあげなさいよ』
「そうする。――結城さん達きたから、切るよ」
『うん。Have a great summer.(良い夏を)』
「Thank you. boss. See you later.」
覚えたての英語は、舌の根がちょっと攣った。
「冬馬。明日から、うちの別荘に来ないか?」
終業式。
一年生の教室に、三年の結城康介と市村季鏡が顔を出した。
あのスクレロ討伐以来、二人とは親しく接してくれる。
学食も奢ってくれて、たまに奢り返そうとすると「後輩は奢られてればいいんだ」と二人から拒否される。
悔しいので、バイト先のディナー営業をかけると、拝む勢いで予約を頼まれた。
ベットラーの店はランチはあっさりしているが、ディナーは本格派だ。フロアサービスも研鑽を積んでいる。客が高評価を渋るほどの穴場店らしい。先週も予約状況の確認を頼まれた。
ベットラーからは「酒類を持ち込んだら出禁だ」と妙な釘を刺すよう指示されている。何か過去に結城家と酒で揉めたのだろうか。
あれから結局、[火車切広光]は解散となった。
東城家における結城家は家格を復権したそうで、松田隊長も腹を切らなくてすんだようだ。
代わりに二人は地下事業3課所属チーム[日雁青江]に三年契約の入隊になった。
担当は第6課でも担当した遠山久遠が引き続き担当。部署整理で第6課が統廃合されたことにともなう異動人事、チーム再編のようだ。
外注潜穽者がアーバレストに正式採用されることがどれだけすごいことなのか、ピンとこなくて本人らに尋ねたら、
「実業団体からメジャーリーグ一軍に引き上げられるくらい、なまらすごいよ」
ということらしい。
「[日雁青江]ってどんなチーム?」
「まだメンバーと顔合わせしてなくて、聞いただけなんだけど、男女混成チームで八人いたらしくて、去年二人抜けてチームごと海外にレンタル移籍されてたんだって。今回の【殺陣】前進で、来シーズンから探索層調査に呼び戻すらしいよ」
ちなみに、その来シーズンが始まるのは夏が終わる頃だ。
「そこで。俺たちで強化合宿をやらないか?」
二人は、おれがダンジョンでは荷物持ちだということを忘れている。




