第九章「月下美人」
騒動後の謁見の間にて───
百官の中で位の高い役人達は怯えた様子で頭を垂れていた。
何故ならば───黄龍が鋭い黄金色の瞳で、百官達に睨みを利かせていたからだ。そんな様子に柘榴は、転んで怪我をした神美の膝を手当てしながら、呆れ交じりに笑みを浮かべた。
「…黄龍───理由を述べよ。何故、五竜の掟を破ってまで、後宮に入ったのだ?。……お前には、世界の中央を守る役目を与えた筈だが?」
「………」
「…答えられぬ───と……、捉えてよいのだな?」
「…ッ」
緊迫とした雰囲気の中─────
誰もがこの状況をなんとかしてくれと言わんばかりの沈黙を破ったのは、神美だった。
「だから、黄龍は小龍の事が好…むごぉ!?」
神美が何を言おうとしたのか察したのか、慌てた様子で黄龍は神美の口を塞いだ。
「ちょっと!!!、余計な事言わないでよ!!!」
「ぶはぁっ!……──だって!!、気持ちはちゃんと伝えないと!!」
「貴女に言われなくても分かってるわよ!!怒」
「じゃあちゃんと伝えよう?。…じゃないと、小龍はずっと勘違いしたままだよ?。二人は同じ仲間の龍なんでしょ?」
「………」
「あらあら、神美に諭されてるようじゃ貴女もまだまだねっ、黄杏」
「柘榴…怒──あんたに言われると余計にムカつくんですけど!?」
「もうよい────」
痺れを切らした白龍に、百官と黄龍はビクリと身体を震わせた。
しかし、そんな様子に柘榴は、口許を袖で隠しながらクスクスと笑みを零した。
「あら、陛下……少し栄養と睡眠不足では?」
「…柘榴……───そなたの煽り癖は本当に悪意を感じるぞ…。」
「…パ、白龍………」
「私は、人間に生まれ変わる前にこう申した筈だ。……男女の身体を私利私欲で使うなと」
「ん?、男女って?」
「ふふ、要は…あちらの黄龍姫は、《《両性類》》って事よ♪」
「両性類……=♂︎︎ ♀!?」
「両性類って言わないで貰える?───アタシはねぇ!、龍の時も…今この人間の時も歴とした「乙女」よ!」
「はあ……───お前は本当に変わらないな…」
「え………じゃ、じゃあ……男の子にもなれちゃうの?」
「なに?───何か文句でもおありなの?」
「って事は……───小龍も……」
「陛下の女性姿は、世の全ての殿方を虜にしてしまうくらいの美貌よ。──そうね……「女神」と言った方が分かりやすいかしら?」
「柘榴ちゃんは見た事あるの!?」
「ふふふっ、伝説かもしれないわねっ」
「………───絶対に見せぬ!」
「えーーー!!なんで!?」
「…───神美」
玉座から立ち上がった白龍は、神美の元へと距離を詰める
「先程はお前の気持ちも考えずに……───済まなかった……」
「あ……、その……あたしも───」
「お前にとっては酷で…煩わしい話かもしれない……───でも、私は……お前を護りたい。」
そっと、あたしの手を取る小龍に思わず見惚れてしまった。
そう────それはまるで、月下美人の花のような美しさ
ドクン──────
無意識な胸の鼓動のせいでしょうか。
顔が火照って、とても熱い
この感情はなんだろう?