第八十章「欲望が生んだ愛しさ」
上空を飛んでいた白龍と玉美は、神美が落下した方向へと着地する。
「神美ッ!!!!」
ひたすら神美の名を呼ぶ白龍だが、声が響き渡るだけで気配すら感じ取れなかった。
「お待ち下さい───白龍様。…仙女は落下しましたが、無事ですわ。」
「何を根拠にそんな事を…!!」
「あの仙女は……どんな生命の危機に晒されようと、死を辿る事はまだ御座いません」
「……どういう意味なのだ───」
「貴方様は……───お気付きではなかったのですか?。この世界を平和に導く仙女に仕えていた貴方様なら……」
「玉美…そなたは何を言いたいのだ」
「私達の先祖はこう語っておりました……───龍仙女は、己の望みを叶える為に引き寄せたのだと。」
「何をだ!!」
玉美は目を細めた
「あの美豚をですわ」
白龍の記憶の中────奥底に眠っていた、かつての龍仙女とのやりとりが浮かんだ
『何故じゃ…………どうしてワシは……仙女なんかに────』
『龍仙女、落ち着け…』
『何故……彼奴はワシじゃなくて……何故……ワシが作った世界の……あんな人間を────』
『先程から何を申しているのだ…!』
『……小龍───お前は……分かってくれるべ?』
この世界を脅かす神を愛した事も────
望みを叶える存在を生み出したとしても───
「…神美は─────龍仙女の望みを叶える為に……誕生した?」
ドォンッッ!!!──────────
「ッ!?……」
「銃声音?……───この国では銃を使用するのは禁じられている筈……」
「!……黒龍!!」
。
。
同時刻─────
青龍と赤龍は玉娘と死闘を繰り広げていた───が、銃声音が響き渡り、一時中断となった。
三人は急いで銃声が放たれたであろう場所に向かう。
「……あの銃声音───何やら嫌な予感がするねぇ……」
「嫌な予感も何も……」
「あの黒龍の仕業だろ」
「……この際だから此処でハッキリと伝えてやるよ────あんたらの最初の仙女は、己の望みを叶える為に……世界を作ったのさ。それが漫と呼ばれる世界…────その世界で……美豚と呼ばれる望みを叶える欲望の食材を誕生させた」
青龍と赤龍は思わず足を止める。
驚愕した─────何故?……と
誰よりも神美を愛していた筈なのに───
それなのに
それなのに




