第七十八章「爛と漫」
現代───────
それは、神美が白龍達の世界へと誘われてから2時間後の事……
《本日、東京都〇〇区で爆破音と家が燃えていると通報が入りました。えー、爆破音がしたと言われる現場へと辿り着きましたが、こちらの一軒家──見えますでしょうか?、家が全焼してしまい跡形もない状態となっています》
神美の家の前では、野次馬からテレビ局から警察と消防隊でわんさかと溢れ返っていたのだ。
家は全焼し、見るに堪えない。
例えこの中に人が居たとしても……それはもう───
「四ノ宮……────おい!四ノ宮!!」
見た目が若干チャラそうな少年が血相を変えて神美の家に飛び込もうとした。
然し、前で見張っていた警官に止められてしまい少年は警官の胸倉を掴む。
「俺の同級生が此処に住んでたんスよ!!」
「ちょっと!!危ないから下がって!!キミ何?ここのお宅の人と知り合い?」
「四ノ宮 神美って言う奴は無事なのか!?…ちょっと丸っこい体型の!」
「今捜査中だ。友達が心配なのは分かるけど、此処を通すわけにはいかない」
「そんな事言ってられねぇんだよ!!此処には…───」
少年が言い淀むと、全焼した家を見て小さく悲鳴を上げた少女が二人────
「おい、五十嵐!!」
「ちょっと!ネットニュース見て急いで飛んできたけど……どうなってんの!?。なんで神美の家が……」
神美の親友───「あーりん」こと、藤澤 亜華梨と「ゆわっち」こと、本田 優羽だ。
二人は顔面蒼白になりながら少年に問いただす。
見た目がチャラい少年───五十嵐 樹は、神美達と同じ学校に通う男子生徒。何故、神美の家の前に居るのか……───内心パニックになりながらも、藤澤 亜華梨と本田 優羽は疑問を抱いた。
「四ノ宮は………」
「呪いが解き放たれたのじゃ」
五十嵐 樹が重々しく口を開こうとすると、杖をついた老人がいつの間にか樹の隣に立っていた。老人は亜華梨と優羽を見るなり鼻の下を伸ばす
「うっひょおぉぉぉぉ~!!生じぇーけぇマヂ可愛すぎじゃぁぁ~!!どうじゃ娘さん方、ワシの嫁に──」
「この変態ジジイ!!どっから現れた!?」
「うっわ……何このジジイ」
「五十嵐の知り合い?…」
「…俺の祖父だよ。」
「因みに、10年前は田有神社の神主をやっておったんじゃぞ」
「え、田有神社~!?」
「あの、めちゃくちゃご利益あるって噂の神社っしょ?」
「なんだっけ……確か、五匹の竜を祀ってるとかなんとか…───五十嵐ぃ~、あんた見た目チャラそうなのに将来神主とかマジギャップ萌え~」
「誰があんな神社の神主になるかってーの!!」
「つーかおじいちゃん、”呪いが解き放たれた”ってどーゆう意味?」
「それそれ!、神美とカンケーあんの?!」
「娘さん二人……───四ノ宮 神美さんとはどういう関係じゃ?」
「え…神美とは親友だよ!」
樹の祖父は「ふむ……」と、神妙な面持ちで顎に手を当てる。
「樹──…この娘さん二人に協力をしてもらった方が良いぞ。」
「はあ!?何言ってんだよジジイ!。普通の人間を巻き込んだらどうなるか…」
「”想い”は世界を越えて伝わる物じゃ……──場所を変えた方が良いな…」
「ねぇ!、神美は無事なんだよね!?」
「…嗚呼、無事じゃ───じゃが、ちんたらしておると”傷みが早く”なって原型をとどめれなくなる。」
「傷みが……」
「早く…って───なにソレ…?」
「四ノ宮神美は……爛と漫を繋ぐ物となってしまった。あの娘…───美豚は、今すぐに漫に戻ってこないと───死ぬ」
。
。
。
「仙女なら御存知ですわよね?───この世界が爛と呼ばれている事を」
白龍の背に乗る玉美は、神美に対して高飛車な態度で問う。内心、腹が立って仕方がない神美だったが、ぐっと堪えたのだ。
「爛?」
「まあ~!?そんな事も知らないなんて、良く仙女をやっていられますわね!!。私達が存在しているこの世界を指す言葉ですのよ」
「へぇ、爛って言うんだぁ~なんかオシャレだ────」
ドクンッ─────
「痛ッ……!」
何…?急に心臓が─────
「神美どうした?」
「な……なんか……」
駄目だ……意識が遠のいて─────
「ごめ……力が……抜けて────」
一気に力が抜けてしまった神美は急激に落下していく
「神美ッ!!!」
「小……龍」
力を振り絞って手を伸ばすが
(駄目……届かない)
「神美ーーーーーッ!!!」




