第七十六章「嫉妬」
小屋から出て気付いた───少し離れた所に砦を見つけたのだ。
「仙女……、白龍はあの砦に居る筈だ。アンタを小屋に運ぶ時に、あの砦に運ぶように手下に指示してたからな…」
「そ、そうなの!?」
「…カマ野郎は俺が倒す───だから、アンタは砦に行って、白龍を迎えに行け」
「でも!皆を置いていくなんて出来ないよ!!」
「……───もし、俺達全員が無事だったら、俺の言う事一つだけ聞いてくれるか?」
「こんな時になんの約束!?」
「じゃ、約束な…」
無愛想ながらも笑みを浮かべた赤龍は鎖鎌を使って、腹部を殴打されそうになった青龍を助けだした。少し嫌そうな表情を浮かべた青龍は、「ワザとやられたフリをしていたのに……台無しだ」と言って、 呉鉤を構え直した。
(直ぐに…小龍を見つけてくるから…)
負傷した肩を押さえて、神美は砦に向かって走り出した
(あたしは……───逃げてばっかりだ。ちゃんと向き合わなきゃ……中途半端な気持ちだから、皆を護れないんだ。龍仙女として……ケジメつけなきゃ……!)
何となくだった。皆と居るのが楽しくて、心地が良くて、寂しい気持ちが薄れて消えてって……
でもそれは、あたしの自己満足じゃん!
皆は、世界を護るとか……あたしのせいで人間に生まれ変わって、沢山傷付いて…大変な思いをして生きてきたのに!
「あたしが変わらなきゃ意味がないじゃない!!」
痩せなきゃいけない────あたしは美豚で龍仙女なんだから
「お願い……ちゃんと痩せるから…ッ───皆を護れる力を……悲しみから救える力をあたしに!!」
すると、薬指の指輪が光り始めた。指輪から羽衣が現れ、神美を包み込んだ。
「身体が…軽い!!」
龍仙女の姿へと、初めて自分の意思と力で変身する事が出来たことに喜びを感じる。
「小龍……!どこにいるの!……ッ」
羽衣が神美の思いに反応し、神美の身体は空中に浮き始めた。
「わーーー!?と、飛んでるーーーー!?。…って!もしかして、羽衣さん……あなた、分かるの!?小龍の居場所が!!」
羽衣は頷くように淡く光る。
「お願い、連れてって!!────」
飛行する速度が加速し、あっという間に砦の一室の前に到着する。逸る気持ちを抑えきれず扉に手をかけようとした時だった
『およし下さい!……貴方様は此処で…───』
『離してくれ───こうしてる間に…神美に何かあったら────……』
(小龍の声だ…!!───でも…他に誰か…いる?)
ガチャリ────と、扉を開けると
「きゃ…!」
扉の前に誰かが立っていたのか、ガタン!──と、音がした
「大丈夫か……─────って……か、神美!?」
白龍と小柄な美少女が抱き合いながら床に倒れていた。
「シャ、小龍……」
誰その女の子……
何で抱き合ってるの?
どうして
どうして─────
「か、神美……───!こ、これは違う!倒れそうになった所を助けただけでな…!深い意味は」
「そ……そんな……白龍様……───私とは遊びだったのですか!?。玉美は……玉美はこんなにも貴方様の事を…ッ!!お慕い申してるといいますのにッ!!」
「な、何を出鱈目を言っておるのだ!!其方と私は数時間前に知り合っただけで……」
ヒュンッ!!!!!──────
羽衣は鋭い刃物のような威力で、白龍の左頬を掠めた。
「きゃあ!?あの方は何ですの!?怖いですわ…ッ!!」
「神美落ち着け!」
「ち、違う……」
どうしよう……力が
「…制御できない」
羽衣は玉美と名乗った美少女に襲いかかった
「だ…駄目ッ!!!!!」




