第七十三章「白龍覚醒」
一瞬の隙で巨漢の女装集団に捕らえられてしまった。
手は後ろにやられロープのような物で縛られ、身動きが取れない状態だった。
白龍と赤龍だったら女装集団をなんとか出来るが、相手は人間であるので無闇に手を出す事は出来ないのだ……。
「あーーん!!もう着せ替えし甲斐があるぅぅぅ~!!」
「触んなカマ野郎!!」
然し、胸板をくるくると人差し指で撫でられたりと……(主に赤龍)色々と限界が迫っていた(主に赤龍が)
「あんッッッッ────ツンな所もぉ~~…ス・テ・キ」
「肥娘はこっちに来な……───たんと扱いてやるよ」
玉娘は神美の首根っこを乱暴に引っ張る。
「きゃっ…!、ちょ、ちょっと!もう少し優しく引っ張ってよ!」
「神美!!」
「ひとまず、アタイらの城に来てもらうから───そこの美形二人は……ちょっと協力してもらうよ」
「ちょっと!二人をどうする気なの!?」
「どうって…………────最新作の着物が手に入ったから、それを着てもらうに決まってんでしょ!!!!?」
「…………………はい?」
「だから……下手に抵抗したら、いくらイイオトコでも……殺すわよん?」
玉娘が懐から短剣を取り出すと、白龍と赤龍の喉仏辺りに先端部分を交互にあてた
(逆らったら…二人が危ない…───でも、あたし一人じゃ…。せめて黄龍達にこの状況を伝えられたら……)
すると、薬指の指輪が一瞬だけ光った。
(指輪……───これって、皆に繋がってたりするの?)
でも、この指輪は、現実世界からこの世界に来た時…、偶然だったかもしれないど小龍と引き合わせてくれた。
思いが強ければ強い程…その相手に届くとか?
(一か八か……やってみるしかない!)
皆!!!───────聞こえる!!?────
お願い!助けて!!!
。
。
「───つーかさ、遅い!!!」
「どこまで行っちゃったんだろうねぇ~……───まあ、白龍と赤龍が様子を見に行ったから大丈夫だとは思うけど~」
「だとしても……何かあったんじゃ」
「捜しに行った方が良さそうですね…───何やら嫌な予感が……」
皆……!!───お願い……助けて!!!
「神美さんの声?……」
「え?神美ちん?───……聞こえないけど……」
「いや…でも確かに今…声が────」
黄龍!!黒龍!!先生!!聞こえる!?───
お願い…!!今、変なオネェ軍団に囲まれちゃったの!!……なんか此処、女の国っていう────
「オネェ軍団…?───女の国…とは」
「ひぃえぇぇ…!大変なことになっのぢゃ!」
「ガウッ!!」
「師匠!ケセラ…!」
ケセラ(覚醒ver.)の頭部に乗った師匠が慌てた様子で青龍達に駆け寄り、神美達が捕らえられた事を伝える。
「赤龍が機転を利かせてくれたお陰で、なんとかあの女装獣共に見つからずにすんだわい」
「女装獣?」
「ちょっと蒼猿!…じゃあ、神美達はそのオネェ軍団に…」
「…玉を取られた猛者達が集う……女の国……───まさか、此処までのものになってるとは……」
「という事は……今の神美さんの声は…」
「青龍…お主───あの仙女の声が聞こえるのか?」
「え!?」
「ええ……───何故かは分かりませんが……はっきりと彼女の声が」
。
。
。
神美さんの声?……
え?神美ちん?───……聞こえないけど……
いや…でも確かに今…声が────
「やった!!伝わってる!!」
「アンタ…さっきから何コソコソやってんだい」
「あ…え、えーと…その」
「怪しいね……──しかも、ここらじゃ見かけない服装だねぇ……無駄な贅肉もついてて肌もツヤツヤまっちろ……──何処の国の姫さんだい?」
「ち、違います!!あたしそんな姫とかじゃ……───てゆーか!無駄な贅肉っていわないでよ!」
「…こうなったら、徹底的に調べてやるよ───おい、この娘の服を全て脱がせ」
「イエッサー!!」
「いっ……いやあああっ!!!触らないでーーー!!」
「止めろ!!」
「テメェ等……」
「アンタら、勘違いしないでくれる?───女なんかこれっぽちも興味ないのよ。変なブツでも持ち込まれたらたまったもんじゃないからね───大丈夫……アンタ達は後でたーっぷり可愛がってやるさ」
「大人しくしなっ!」
巨漢女装男の一人に押し倒され、制服のリボンが乱暴に引っ張られ、制服が着崩れる
「や…やめて!!やだー!!」
「フン……無駄にハリがいい肌だね……───腹立たしい」
「やめ───ろ───」
カッ!!!!!───────
白龍は目を見開き、身体から放たれた風圧で玉娘達を吹き飛ばす。
「いやんっっっ!!?なんなんこの風!?」
「あの美形黒髪男子から急に…!!」
明らかにいつもと雰囲気が違う白龍に神美は動揺を隠せずにいた───
美しい青い瞳は少し濁り、鞘から剣を抜き取ると玉娘達に向けた。誰かが何か言葉を発したら、殺めてしまいそうだった
「おい、お前───」
赤龍が言いかけた瞬間、剣の先端部分が白い龍に変化していき…
「殺せ────…この醜い人間達を」
《ガアァァァァァァァッ!!!!!》
白い龍は咆哮を上げた
「駄目ッ!!!小龍ッ!!!────」
「その青い瞳……奇妙な力に剣の龍は───アンタ、西方を守護する白龍かい?───何十年か前くらいに、世界で災いが起こり始めた時───五龍が人間に生まれ変わったって……噂があったけど──まさか……」
玉娘はニヤリと笑い、挑発するかのように白龍に近付く
「ほれ、その剣でアタイを殺してみなさいよ。普通の人間なら何も起こらないでしょうけど───アンタが五龍の白龍なら"禁忌を犯す"って事で、西方の国は滅びるはず…」
(白梨国が…!?───…待って、龍は人間を殺したら守護していた国が滅びる?───じゃあ、黒龍は…人を殺してない!!」
沁華達は葡華国に居る……───
《…そりゃあ…、アンタは人間殺した事あるっちゅーて、有名やで?》
惡神五凶の饕餮が前に言っていた───
黒龍は人を殺した事があるって……
でも、もし殺したら葡華国は滅びてるはず……
(じゃあ、黒龍は誰かを庇って罪をワザと被った……?)
もしかして……────
「───そんな物……数千年前に分かりきっていた……───愛してしまった時点で……殺める覚悟は出来ていた──国一つが滅び、例え呪縛になろうとも…………その娘に触れる事は許さぬ。」
「案外、自分勝手なもんだねぇ…五龍って奴は…。だけど、嫌いじゃないよ───」
「戯け!!」
白い龍が玉娘に襲いかかろうとした瞬間、ガッ!!────と、何かに噛み付く音が生々しく響いた
「……仙女!!」
「なっ…!?────…ア、アンタ…」
「────!!……か……かみ……」
神美は玉娘を庇い、左肩を負傷する。
「あ…!!…うっ!!」
「仙女!!!」
どさり───と、神美は地面に倒れた
「…………アンタ達、そこの白龍を城に連れて行きな。後、肥娘を担いで、そこの赤い美形くんはアタイに着いてきてちょうだい。」
そう言うと、玉娘は赤龍のロープを短剣で斬る。
「…テメェ……!!」
「殴るのは後回しよ───その娘、ヘタすれば死ぬぞ」




