第六十五章「師匠」
神美と白龍は如来の華組に囲まれてしまった。
「我々と共に、青寺院に来ていただきます。そこに、青い龍が先にお待ちしております…」
「青い龍って…────先生のこと!?」
「関係の無い人間を利用してまで…、貴様らの女法師…沁華は一体何を企んでいるのだ」
「フフフ……企むだなんで、人聞きの悪い。貴方にとって……悪い話ではないとも思われますが……白い龍───」
「何?」
「沁華様は、全てを終わらせようとしているのです。…この世界に、五龍が居なくとも…平和を保てる世界を作る為に……───よからぬ事を秘めている愚かな男達を抹消する為に…」
「終わらせる…だと」
「……全ては黒い龍───虚空菩薩の為……」
「何言ってんのよ!!勝手な事ばかり……───男の人の…ア、アレ取るなんてどうかしてんじゃないの!?。そんな物使って、人の病気が治るわけない!!」
「哀れな美豚……───貴方も沢山の…苦行を心に抱えたまま生きてしまったのですね…貴方にこれを唱えましょう…南無阿弥陀仏」
「は、はあ~~!?」
「我々が葬り、来世は…必ず───幸せな人生を約束致しましょう……」
「ふざけるな!!───…神美には…、指一本触れさせやしない!!」
白龍が剣を鞘から抜くと、如来の華組は錫杖で神美と白龍を突き刺そうと一斉に攻撃を仕掛ける。
いくら白龍とは言えど、この数の錫杖を回避する事は不可能だ。
神美は白龍にしがみつきながら心の中で願った
(誰か…!助けて!!)
「キィ~!」
(ん?キィ?──)
カラン───カラン──カラン────
すると───錫杖は真っ二つとなり、如来の華組達は取り乱す。
その隙を突いて、白龍は剣で突風を起こし、如来達を吹き飛ばした。
「ほっほっほっ───流石は、白龍ぢゃ。然し、まだまだ余にはかなわぬのぉ~」
「!……そ、そなたは……」
白龍の剣の先端にちょこんと胡座をかいて座っていたのは、可愛らしい小さな蒼猿だった。
神美はこの蒼猿に見覚えがあったのだ。
そう、それは……青龍と会って間もない頃────
「あーー!!あの時、先生に"師匠"って呼ばれてた、青い小猿ちゃん!!」
「ほお…、余の事をおぼえておるとは……聡明な娘ぢゃ…」
「ってか、喋るの!?」
「く……!一旦引くぞ!」
如来の華組達は紫色の煙幕を使って姿を晦ました。
逃してしまった事に、蒼猿は何処か余裕そうに
「あ、こら~待たんかぁ~!───……あーあー、行ってしもうたワイ」と、年寄りじみた言動に、神美達は呆気に取られてしまう。
「え、えーと~…小猿ちゃんはどうして、此処に?」
「余の愛弟子、青龍の危機ぢゃ───あの尼共を操っとる女法師が相当厄介な人間ぢゃて……───その上、黒龍に妙に固執しておってなぁ…」
「黒龍に?」
「兎に角、あの青寺院に行けばわかることぢゃ。青龍含めた残りの龍……、それに学び舎の子供達も、あの寺院におるのぢゃ」
「琳瞳達も!?」
「急がぬと……」
青龍が死を選ぶ─────蒼猿はそう呟いた




