表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
爛漫ろまんす!  作者: 平野ポタージュ
謎の少女と医の國
64/84

第六十一章「記憶の中の欠片」

「断固拒否」


「"玉"取られても良いって言うの!?」


「そんな馬鹿げた話があってたまるかよ」


舌打ちをしてそっぽを向く赤龍(ホンロン)青龍(チーロン)だけは「男」の姿のままであり、他の皆は全員「女」の姿となっていた。

昨夜の琳瞳(リンドウ)の話を全員に伝えた結果、この国にいる間は「女」で居る方が身の安全を保てると判断されたからである。

五龍(ウーロン)達は両方の性を持っているので、抵抗は無いはず……だが──

赤龍(ホンロン)はどうやら抵抗大有のようだ


「まあまあ、赤龍(ホンロン)の気持ちも分かってやってよ~───…態度はデカイけど、あちらの方は案外小s…」


赤龍(ホンロン)の鎌が頭に突き刺さった黒龍(ヘイロン)はそのまま床に倒れた。


「取られる前に刈ってやらぁ…。俺はごめんだぜ…、お前らだけで女ごっこしてろ。」


「どうなっても知らないから!」


「でも、先生は敢えて男のままでって…大丈夫なの?」


「好都合ですよ───例の薬師如来にお会い出来るなら……"玉"で誘き寄せる事なんて容易い…」


「…でも、危険な事は絶対にしちゃ駄目だよ?。先生が怪我したら、この学び舎の皆が悲しむから…」


「…そうですね───ふふ、なら…そうならないように、見張って頂けますか?」


「だから妻役は私が!───」


神美(かみ)青龍(チーロン)の間に白龍(パイロン)が割って入ろうと身を乗り出すと、青龍(チーロン)は失笑する。


「あははははっ……なら、一夫多妻制でいきましょうか?。本来であれば、帝の貴方はそうして子を成さねばならなかったのですから……」


「……私は────」


「私情など…、我々「龍」には必要のない事でしょう?。貴方は…そんな龍でしたか?───世界を護る為に…私情は必要でしたか?」


青龍(チーロン)は嘲笑う。

自分に置かれた立場上での正論を言われた白龍(パイロン)は拳を握り締める事しか出来ない。改めて自分達は「龍」であり「人間」ではない。自由に生きる事なんてあってはならないのだから……


(この感情は……───神美(かみ)に抱くこの感情は……捨てなければいけないのか?)


「───…チーちゃんはさあ~、…誰に対してそんな感情を抱いてたの?」


「────は?」


黒龍(ヘイロン)は笑みを浮かべながら、神経を逆撫でする様に青龍(チーロン)を挑発する。


「キミの気持ちは少し共感出来るところもあるけど……───本心じゃないのに……"正論"で八つ当たりするのは、ちょっといけ好かないねぇ」


「……"人殺し"に言われたくありませんよ」


「先生!!……どうしてそんな事……───先生らしくないよ!」


「私らしい?────本当の私を……貴女は知っているのですか?」


その深みがかかった真紅色の瞳は冷たく、神美(かみ)達を捕らえた。


「……調査は私が全て一人でやります。…貴方達はこの学び舎で身を潜めていて下さい。」


「あ…先生!!」



学び舎を後にし、薬草の香りが拡がる都を彷徨いながら、青龍(チーロン)は物思いにふけ、記憶の中に眠っていた「人物」を思い浮かべていた。


(知らなくていい───本当の私なんて)



藍猿(ランホウ)!───》


遠い記憶に残っていた欠片は、此処に戻ってきた事で残りの記憶を集めようとする。そんな物は要らない────


珖春(グンシュン)


《お前は本当に凄いな。俺はお前と友達なのが夢みたいだよ…───俺のような…片腕の────》


今なら……その残った腕も斬り裂いてしまうのか


それとも……──────


《お前が俺の人生をめちゃくちゃにしたんだ!!!お前が……甘い夢を見させて…地獄の底に突き落としたんだろ……》


珖春(グンシュン)…何を言ってるんだ…》


《近寄るなッ!!!忌々しい龍がッ!!!!》


人の心は分からない────

分かろうとしなかったのは自分だ


私は……そんなつもりじゃ無かった……


「───かつてはこの国の太医を務め、貧しく身寄りのない…五体が不自由な子供や大人達が自立出来るように…───学び舎を設立した 董 藍猿 (トウ ランホウ)先生が……何故、此処にいらっしゃるのでしょうか?」


笠を深く被る僧侶は口角を上げて言った。

僧侶にしては華奢な体型と凛とした美しい声……。


(尼か…?)


「……随分と、私の事を良く知っているのですね」


シャランと錫杖を鳴らした僧侶は、笠を上げる────


(ついで)に……貴方がこの国の守護龍だということも……」


「…その錫杖に付いている"紫色の玉"……───見覚えがありますね」


「…この玉は、真実と虚偽で染まった……哀れで愛しい(たま)です。」


「…貴女、薬師如来(やくしにょらい)と呼ばれている尼ですね?」


尼は不気味に小さく笑う。


「はい…、私は沁華(シンファ)と申します。藍猿 (ランホウ)先生……、貴方にお会いしたいと申している方がいらっしゃいます」


「私に?……」


珖春(グンシュン)様という……この山藍(シャンラン)国の太医で御座います。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ