第五十九章「玉の行方」
「おい、肉まん女、オンナ男!。お前らにピッタリな薬作ってやろーか?」
「糞ガキ…、口の利き方がなっていないようだけど」
「黄龍、羽交い締めにしたから思う存分にやっちゃって!!」
「ちょ…お前ら卑怯だぞっ!!?」
糞ガキ=琳瞳の頬を抓れば、涙目になりながら「いだいっ!!いだいっ!!」と叫んでいた。
「お、お前ら力強すぎるだろっ!!」
「舐めんなよ小僧。僕は、華奢に見えて誰よりも強いから」
「これに懲りたら、これからは「美人で優しくてキューティーボディなお姉様」と呼びなさい」
「呼べるかっ!!。…───っでも…、お前たちなら沁華様たおせるか!?」
「…沁華様?」
「だれ?それ」
「…オラ…───オラ…せんせーが居なくなってから…、沁華様が来てから…この国や都の人達がおかしくなってって…───姉ちゃんも……」
切羽詰まった様子で琳瞳は神美の腕にしがみつく。身体は震えていて、先程までの威勢の良さが嘘みたいだ。
神美はそっと琳瞳を抱き締める。黄龍は少し面倒くさそうにしつつも話を聞く事にした。
「暇つぶし程度に聞いてあげるけど…、どういう事なの?。」
「…せんせーが都から居なくなってから、一人の尼さんがやってきたんだ…。」
"尼"と聞いて、神美と黄龍は目を見開いた。
まさか…自分達が今捜している尼ではないのか…
「それって…薬師如来って呼ばれてる奴?」
「え!?知ってんのか!?」
「まあね…。そいつ捜しててこの国来たようなもんだしぃ~」
「…せんせーが居なくなった後、沁華様がこの都に来て─────……"男のアレ"がなくなる病が広がったんだ…」
「……………はあ?」
「アレ?」
顔を真っ赤にして琳瞳は「だから…」ともじもじとしている。まあ、これくらいの歳頃だと恥ずかしがるものなのか……。
然し、奇妙な病だ───
(男のアレが無くなるなんて……変なの…)
「アレってなに?」
《そのクソ悪徳大医を殺したのは…尼だ》
赤龍がこの間言っていたあれは……
「!…まさか───」
「ねぇねぇ、アレって───」
「沁華様は…男のアレをこの世から消そうとしてるんだ……。…会ったらオンナ男たちも取られちまうぞ!!」
「……お前はまだ…付いてんの?」
「ばっ…ばかやろう!!当たり前だろ!!。沁華様は15歳以上の男しか取らねぇんだ!」
「ふーん、あと五年じゃん。で、それでどうして君の姉ちゃんが可笑しくなるわけ?」
「ねぇ!!アレってなに!?」
黄龍はウザそうに仕方なく神美に耳打ちする。
顔を真っ赤にさせ、その場でばたりと倒れた神美を見て、溜め息をついた。
「…オラの姉ちゃん、足が悪いだろ?。……そのとったアレを使って…足を再生させるって…。一回足を切断して…そのアレを使った薬を飲めば、健康な足が生えてくるって言ってたって……そんな事あるわけないのに…姉ちゃん信じてんだ───オラが何回言っても、姉ちゃんは取り憑かれたように…」
「…ねぇ、この都で夫婦となっているもの達って…その場合はどうなるの?」
「夫婦だったら切られることはないらしいけど…。でも、病気を持ってたらやばいから…前に皇帝様に仕えていた太医様がやっていた"健康診断"で異常が無かったら認めるって…」
太医は青龍の事だろう。
でも、不審がられないように敢えてそれを口実にして利用をしている…
(どの道、夫となる者のアレは切られる。)
「だから…、せんせーには結婚して欲しくないんだ!!……だって、オラ……」
「青龍は、ワザとああやって言ったんだよ。…その尼に会うには手っ取り早いと思ったのと…(まあ、後は腹が立ったんだろうけど)」
「そ、そうなの!?じゃあ…せんせーのアレ取られない!?」
「取られる前に、斬られるだろうね」
自分以外に優秀な薬師や医者がいるのは、やっぱりいけ好かないというのがあるのだろう。
やっぱりそういう所は、誰よりも人間っぽいと思う黄龍だった。




