第五十八章「欠落した人間たち」
学び舎には沢山の子供と、貧しくて学ぶ事が出来なかった年配の男女や、生まれつき身体が不自由であったり、心を閉ざして口をきかない者もいた。
青龍はそんな人間達を見過ごせる程、心は冷酷ではなかったのだ。
それが運命られた人生だと主に言い聞かせられていたとしても…だ
。
。
「あの人間は生まれつき片腕だ。」
龍仙女は世界を護る者にしては、人間に対して残酷すぎるくらい平等だ。それがたとえ、五体満足・五体不満に生まれても────
裕福な人間や貧困な人間で差が大きくあっても、それは生まれた者の運命だと言い聞かされた。
「… 龍仙女様、あの人間は腕が生えないのですか?」
「ああ。死ぬ迄ずっと…あのままの姿で生きていく。」
「私の力で、あの人間に腕を与える事は出来ませんか?」
「無理だ────そんな事をしてみろ、世界の均衡が乱れるだけ。お前が滅ぼす覚悟があるならば、試してみるのもええんじゃねぇのか?」
(…性格の悪い糞婆だ)
青い龍は心の中で毒づいた。
人間に生まれ変わる機会などそうそうないだろうが、もし……何かのきっかけで人間になれたとしたら…
「私は、その運命を変える手伝いくらいは出来ると思います」
「ほお……、それがきっかけで───他の人間に悪影響が出るとしてでも……お前は哀れだと思う人間に手を貸すのか?」
「哀れだとは思った事はありません。でも…あの片腕の人間から、強い生命力と……片腕という悔しさを糧にして、諦めたくない…───そう…思いが伝わってきます。私は、興味があります───あの人間が何処まで這い上がれるのか…」
「おめぇは龍の癖して……───人間臭ぇな」
この言葉を私に言った主は、一人の人間の娘を愛し、世界がどうなったとしても、その娘を護る為に、この世界を捨てた─────
捨てれるくらい、愛した。
使命なんて阿呆なかっこをつけて……────
その身が滅ぶ事が分かっていて…
だからこそ、その身で私に語ったのか……
今となっても、龍仙女の事は分からない。
「せんせー!!、オラ、せんせーに教わった風邪に効く薬作れるようになったんだ!」
「せんせー!!、アタシね字がかけるようになったの!」
「先生!、此処で読み書きや演算ができるようになったおかげで…新しい仕事に就けることになりました!」
「先生、足がね…動くようになったのよ」
何かが欠けて生まれた者達が集うこの学び舎───
私はただただ───何処までこの人間達が這い上がれるのかを見たいだけ。
"愛"などと言う感情は一切抱かない
だけど……
(何故だか胸が温かい…)
この空間が居心地いい───────
家族とやらが居たら……この様な感じだったのでしょうか?。
(分からない)
だけど、中には裏切る人間だっている─────
初めて心を許せると思った……なんて
(長く人間と共にすると…ろくな事がないですね)




