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爛漫ろまんす!  作者: 平野ポタージュ
謎の少女と医の國
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第五十三章「けせらせら」

「"お嬢様"が覚醒しかけております……。」


「流石!!、我が娘だなぁ~…。」


惡神五凶(あじんごきょう)蚩尤(シユウ)が自由の身となった今、蚩尤(シユウ)は久しぶりの外界に出る為の力を蓄えていた。封印されていた廟で────


「いや……そうなったら不味いでしょう?───」


「───……あの子はどうかな?、ほら…五凶の」


窮奇(キュウキ)ですか?…───」


「そうそう!それそれ……」


「手こずってるようなので、私が行って参ります。」


「え~、それは彼にとって身にならないよ?。自分の尻は自分で拭かせなくちゃね~!なーんちゃってっ」


「ふざけてる場合ですか───…もしお嬢様が龍仙女(ロンシィェンニュ)の力を完全に使えるようになり、再び封印などされてみなさい…。蚩尤(シユウ)様の野望は打ち砕かれますよ。…そうなれば、貴方様は実の娘に封印され……生まれ変わる事もできないまま、暗い鳥籠の中で生きていくことしかできないのですよ……」


「……それは、嫌だな……。娘に逢えないのも……───彼女に逢えないのも……」


「……蚩尤(シユウ)様は、お嬢様と奥様がいらっしゃれば、満足なのですか?」


「………そうだねぇ───僕にとってはかけがえのない存在となったから…。神から普通の人間ってのもやってみたいなぁ~って、最近は思うようになってるよ。」


「………そうですか。」


「?……何を不貞腐れているんだい、 渾沌(フンドゥン)


「不貞腐れてなどおりません。」


憎悪の感情と蚩尤(シユウ)を想う感情の狭間で 渾沌(フンドゥン)は苛まれる。

蚩尤(シユウ)の実の娘ではあるが、 渾沌(フンドゥン)神美(かみ)を憎んでいた。

自分の愛した神が人間を愛し、尚且つその人間と神の血が入った子供が誕生していたからだ……


(死んでしまえば良いのに────)


そう願ってしまうのはいけない事なのか?───

私が一番最初に……


「気を付けて行くんだよ、 渾沌(フンドゥン)


目を細めて、機嫌良く手を振る蚩尤(シユウ) 渾沌(フンドゥン)は胸を抑えた。


(私が一番……貴方を愛しているのですよ───)


己が纏っていた黒い布を剥ぎ取り、その正体は白い鍛えられた裸体に天使の様な羽根が背中から生えていた。首から上は存在はしていなかったが、人間の顔の形に近い霊気が代わりとして存在していた。 渾沌(フンドゥン)が今まで喰らってきた人間の顔が記録されて存在しているのだ。


(……あの娘を喰らうことができたら……私の顔はあの娘になれるのだろうか…)


嫉妬の感情は時に全ての判断を狂わす。



「あーあ、身動き取れないし…地味に熱いし…参ったなあ……───」


羽衣に伝う仙女の炎は、窮奇(キュウキ)を燃やそうとするが、力が安定していないのか、押さえつけるだけで精一杯の様子だ。


「う、嘘ーー!?あんな燃えてるのに何ともないの!?」


「アンタの力が安定していないのもあるが……、それにしても…何もんだ彼奴────」


「───私の部下が、御迷惑をお掛けしましたね…」


パァンッ!!!───と、何かが弾ける音と、一瞬で窮奇(キュウキ)を包んでいた炎が鎮火される。


ゴロン───……と、神美(かみ)目の前には、窮奇(キュウキ)の頭部が転がり、首から上がない白い妖怪が目に入る。


「い……っ!!」


「仙女、目瞑れ…───」


「……おや───私とした事が、勢い余って引っぱたいてしまいました。何…御安心下さい、彼は惡神五凶(あじんごきょう)ですから…───こんな事で死にはしませんよ───」


(惡神五凶(あじんごきょう)…!?)


「お嬢様、いずれまたこの渾沌(フンドゥン)がお迎えに上がります……───貴女様を必ず」


殺してやる─────

渾沌(フンドゥン)から神美(かみ)は殺意を感じ取った。窮奇(キュウキ)の頭部と身体は宙に浮き、渾沌(フンドゥン)と共に消えてしまった。

そのタイミングで、九尾の狐は妖狐を食いちぎって退治していたのだ。


(あっちもこっちも……グロテスク……)


「キュゥ~」と、口の周りに血液が付いた状態で擦り寄る九尾に一瞬戸惑ったが、頭を撫でて抱き締める。何よりも今は皆が無事だった事が……─────


「って……皆、無事!?!?」


「この九尾のおかげで助かった…」


「この子凄いねぇ~、オレたちの毒も勝手に吸い取って、吸収した物を力にしてたけど…」


「それが、本来の九尾の狐の力でもあるのです。…でも、この九尾は特別なようですが…」


「で、神美(かみ)がどうして龍仙女(ロンシィェンニュ)の姿になってるの?」


「…あたしにもよく分からないけど…───赤龍(ホンロン)のおかげかも!」


「……知らねぇ───」


五龍(ウーロン)との心が結び付くと、龍仙女(ロンシィェンニュ)の力が発動するのかもしれないな…」


「誰がどいつと結びついたって?───んな覚えはねぇよ。」


赤龍(ホンロン)……────照れなくても、…もう隠さなくてもよい。…少しずつでも構わない、私達を……信じてはくれぬか?」


白龍(パイロン)の言葉に、煩わしいと思う感情の中に、ほんの少しの"喜び"を感じた事を認めたくない赤龍(ホンロン)だった。

そして────九尾の狐は「花千楽(ケセラ)」と名付けられ、神美(かみ)達と共に痩身(ダイエット)惡神五凶(あじんごきょう)封じの旅に加わったのだった。


「ところで、何で花千楽(ケセラ)って名付けたんだ?」


「あたしの世界で、ケセラセラって言葉があって意味が「なるようになるさ」って───」


「キュゥ〜〜っ!」


何が待ち受けているか分からない────

でも、なるようになる───よね……

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