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爛漫ろまんす!  作者: 平野ポタージュ
謎の少女と父親
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第四十九章「九尾は龍に憧れた」

「ったく…、何で俺が薪拾いなんか────」


と、言いつつも素直に拾う赤龍(ホンロン)だった。

風で周りの草木が揺れると、パキン……と───小枝が折れる音がした。


「………そこにいるのは誰だ」


赤龍(ホンロン)は拾った薪の一本を後ろに素早く投げる。

すると────


ゴンッ!!


「キュ…ッ!!」


「……"キュ"?」


鈍い音に謎の鳴き声……恐る恐る振り返ると、小さな白い小狐が額にたんこぶを作って倒れていた。


(九の尻尾……)


「……ミャウ!」


「お前……九尾の狐か?」


一応威嚇をしながら小狐は体毛から炎を生み出し、巨大な狐へと変化する。九尾の尻尾は炎の様に揺れ、額には赤い紋が印されていた。


「ミャ……─────ガウッ!!!!」


「…此処は妖狐の森っつーわけか……。」


周囲からは薄気味悪い笑い声と、狐と(あやかし)の混ざった気が赤龍(ホンロン)の神経を逆撫でた。


《コーコッコッコッコッ……───愚かな赤い龍よ……、まんまとワタシ達の罠に引っかかりよってさ…》


《手始めに、先ずはお前を喰らってやる》


《安心しろ……仲間も直ぐに、お前の元に送ってやるさ…》


「あ…?…誰が仲間だ────」


シャランッ……


それはまるで生きた赤い蛇のような鎖と生きた鎌鼬(かまいたち)のような鎖鎌が妖狐達を一瞬で捕らえた。


「で?……テメェ等の目的はなんだ?」


宙ぶらりん状態の妖狐は、キュイキュイとご立腹の様子で鼻を鳴らす。


《くぅっっ!!……は、離せ!!無礼なッ!!》


《これ、用無しッ!!この赤龍を喰い殺せ!!》


用無しと言われた狐は恐らくこの白い狐の事。


「……ミャ……」


(この狐……───九尾の割には力が安定してねぇな……。)


《此奴を喰い殺せたら、お前もワタシ達と同じように天狐(てんこ)にしてやろう……》


《用無しのお前には願ってもない事だろう?》


白い狐は何故か目を輝かせ、元の小狐の姿に戻ると喉を鳴らして赤龍(ホンロン)の足下に擦り寄る。

妖狐達の声は聞こえていない……のではなく、聞く耳を持たず状態だった。


「な、なんだお前……」


「ミャーウ……ゴロゴロ…────」


《クッ……!!この出来損ないの九尾が!!!》


「出来損ないはテメェ等だろうが……クソ妖狐がよ」


《た、頼む……ワタシ達を殺すのだけはやめてくれ……ッ!!》


《か、仮にも五龍(ウーロン)だろ!?貴様…》


「だからなんだ?───…テメェ等みてぇな自分本位なクソ狐が、生きてる価値があんのか?。この九尾の妖力を吸い取って天狐になるつもりだったんだろ」


《な……なにを…─────》


「テメェ等は、九尾でもなければ天狐にすらなれねぇ───悪霊に取り憑かれた妖狐だ。」


《なっ……!!》


「安心しろ……この鎖鎌で締め付けて、燃やしてやるよ────」


《ヒッッ!!!!や、やめろおぉぉぉぉッ!!!!》


みょーん────ブラブラ……


赤龍(ホンロン)の目の前に、糸でぶら下がった(けむし)が落ちる。(けむし)赤龍(ホンロン)の鼻にピトッ……と張り付き────


ドサッ……──────


悲鳴も上げずに気絶してしまった。

妖狐達は鎖鎌から解放され、そのまま忙しなく逃げて行く。


「キュゥ……?──ミャウ……!」


ぽつんと取り残された白い小狐は、赤龍(ホンロン)の鼻に張り付いた(けむし)をはむはむと食べてしまい、そのまま赤龍(ホンロン)の鼻を舐める。

何をしても起きない事に不安を抱いた小狐は、再び九尾の姿に変化し、己の背中に気絶した赤龍(ホンロン)を乗せて走り出した。

青龍(チーロン)が拾って来いと言っていた薪も乗せて……

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