第四十二章「後宮戦争6」
「……ねぇ、黒龍……」
「なんだい?」
「黄龍から聞いてた話と全然違うんだけど……」
「白蘭ちゃんって、もっと巨乳かと思ったら……結構絶壁だったな…」
「そこじゃないっ!!怒」
「えー、違うの?」
「なんか……ごつくない?」
「………てか、アレって女の子?」
宮中の庭から見える、皇帝や身分の高い者達しか入れない餉の間には、白龍と白蘭?が、食事を摂ろうとしていた所だった。茂みからその様子を窺う二人。
然し神美は、黄龍から聞いていた白蘭の特徴が一致しない事に疑問を抱く。
白蘭は性格はキツく、底意地悪いが
容姿は普通に美女であると聞いていた。
なのに、今目に映る白蘭は…────
「…おじさん?────」
「──の、中には…可愛い女の子が居るような?」
白蘭の容姿は、身体はごつく、顔は美女ではなく、おじさん─────
そして何故か肌の色が青鼠色。
「ねぇ、小龍はさ…白蘭と今日初めて会うのかな?」
「うーん…、白龍が後宮に頻繁に通っていれば、お互い面識はあると思うけど…───ああ見えて初だからさ、今日が初めてなんじゃないかな?」
(初だとしても……何かしら気付かないものなのかなぁ……───あれ、絶対…男の人だよね?)
耳を澄まして、二人の会話を聞くことにした。
「皇帝はん……───ホンマに男前やなぁ……」
「…そのように言われたのは初めてだな。」
「あらやだ、それは後宮に通わないからやでぇ?。物凄いイケメンやっちゅーて、後宮の妃の間では月下美人なんて呼ばれてるんやて…知っとったか?自分?」
「月下美人……花の事か。…女子の目には…、私は花のように映るのか?」
「それくらい綺麗やもん。自覚が無いとか言ったら、嫌味やで」
「…そうか────私は、そなたや…人間は皆、美しく見える」
「…ええ!?ホ、ホンマに!?」
「楽しそうに笑う姿が美しいと思った。……私の知っている…"娘"は…喜怒哀楽が激しくて…────」
白龍は酒が入った酒器に口を付ける。
それを見た黒龍は、何故か青ざめていた。
白蘭?は、そんな白龍の一つ一つの仕草にうっとりとしていた。
舌を舐めずり、一言───「我慢できへん」そう言ったのだ。
神美は黒龍の袖を引っ張る。
「ねぇ、やっぱりあの人…白蘭じゃないよ!!」
「……アレ、お酒かな?」
「え?」
そう言えば、白龍は酒器に口を付けてから瞬殺で俯いていた。
(まさか……、毒とかが入ってたんじゃ…ッ!?)
「小龍ッ!!吐き出して!!!」
「あっ!!神美ちん!!、無闇に出てったら駄目だって!!」
「…────何もんや?」
居ても立ってもいられず───神美は飛び出してしまった。
白蘭?の瞳には……───
「…アンタが……あのお方の…娘────美豚…?」
「ちょ、ちょっと!!あ、貴方白蘭じゃないよね!?──それと…小龍に何を呑ませたのよ!!」
「何って……───皇帝はんはお酒を少量飲みはって─────」
ザンッ!!!!───────
白蘭?持っていた酒器が真っ二つに綺麗に割れた。
キラリ…と光るのは、剣の先端────
「………神美を……視界に入れるな───醜女が」
「し……醜女やてぇぇぇぇッ!!!?───てかアンタ、さっきとキャラも雰囲気も全然ちゃうやんかッ!!!!」
「…ヤバイな…───」
「な、何がヤバイの?!」
「お酒を呑んだ白龍は…、誰にも止められないくらいの狂人的な強さと……───」
「神美………、私の子を孕め───私の妻になれ────私と〇〇〇〇をするのだ……───ふふふ……」
白龍は頬を紅潮させ、卑猥な言葉を発しながら、ジリジリと神美に迫る。
「普段溜めてる感情とかが爆発しちゃうんだよねぇ」
「呑気に言うとる場合ですかッ!!怒 な……なんとかしてよ!!こっちに来るよ!?」
「…神美……───何故……私ではなく…変態菩薩と……一緒に居るのだ…────」
「へ、変態菩薩!?───…白龍ひどぉい!!…そんな風に思ってたの…ッ!?」
「ショック受けてる所悪いけど……間違ってないよ?」
「……なら、変態菩薩を消せば良いだけか───」
剣が黒龍に向けられる。