第三十五章「生きてて欲しいから」
「神美ッ!!…目を…目を……開けてくれッ!!!」
虚しくも、白龍の哀しみの嘆きが白梨の城に響き渡る。
蒼白の少女の名を呼んでも、もう────目を覚まさない……
「ッ……馬鹿────アンタって馬鹿だよ!!神美ッ!!!…一人で……何カッコつけてんだよッ!!!…楽して痩せようとすんなよ!!───……どう……してッ」
黄龍は泣き崩れた。
「………チーちゃん、飲み込んだ実を吐き出させる事は?」
「……大分時間が経っている場合じゃ……私の力でも…どうする事も出来ない」
「………」
龍仙女を護れず、彼女の奥底に秘めていた哀しみにさえ気付けなかった五龍は、己の無力さに怒りを覚えた。
家族を亡くし、呪いの食材として狙われ、別世界に舞い降りたのは、何の力も持たない普通の少女だったのだから。
「か……み…ッ」
《小龍、アタシの娘をよろしく~っ
。泣かせたら承知しねぇーぞっ》
ドクンッ────
「!……杏……奈?」
白龍は神美の心臓に耳を当てた
(今……、神美の心臓から………この子の母────杏奈の声が……)
《この子をいっぱい愛してやってねっ───…アタシの分までさ》
ドクンッ!──────
「…嗚呼……そうか───そなたが…護ってくれたのか」
杏奈……────私は、そなたの分まで…この娘を護る。そなたが与え、繋いだこの生命を……
「護り、愛すると誓おう……」
白龍は、神美の首後ろに片腕を回し、ゆっくりと顔を近付けた。
昇る朝日が、神々しく二人を照らし───
白龍は己の唇を、神美の唇に重ねた。
優しく、溶けてしまうかのような
「───………ぅ……ッ」
すると───神美の身体が段々と膨れ上がり、それぞれの五龍達と最初に出会った頃の、丸々としたふっくらボディ───元の姿に戻ったのだ。
涙を溜め、寝息を立てて……
「…神美……、私が…お前の傍に居る───」
白龍に芽生えた、"使命"はいつしかそれは……本当の"愛"へと変わろうとしていた。