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爛漫ろまんす!  作者: 平野ポタージュ
惡神五凶~封印解かれたり~
31/84

第三十章「約束」

目が覚めた後────

皆が居なくなってしまった事に慌てていると、若榴(ルオリィ)ちゃんが状況を簡潔に説明をしてくれた。


あたしに痩の実を食べさせたくない一心で、青龍(チーロン)先生の力の一つ、幻眠香(げんみんこう)を使って眠らせたと……


「こうしちゃいられない!!早く行かなきゃ!!」


「此処から戻り方を知っているのですか?」


「……そ、それは……─── 若榴(ルオリィ)ちゃんの力とかって~……」


「私は時を操れるだけで、移動の術は扱えません。あしからず……」


「ええええええ!?。皆が危ない目にあうかもしれないのにーーー!!どーーーしよーー!??」


「…一つだけ、方法がありますが……───それだと、何の為に白龍様が…仙女様を此処に置いていったか……」


「……それって、痩の実?」


若榴(ルオリィ)はこくりと頷く


「それと……──貴女様が嵌めているその指輪には、龍仙女(ロンシィェンニュ)様の魂が封印されております……」


「たま…しい?」


「…死───通常の人間ならばそう認識するでしょうが…、龍仙女(ロンシィェンニュ)様は人間の"器"だけが滅ぼされた……───と言えばお分かり頂けますでしょうか?」


「そ、それって…!!……あたしを、庇ったから!?」


「……いえ───最初から、そのつもりだったのでしょう。仙女様を、龍仙女(ロンシィェンニュ)に仕立て上げる為に……」


(じゃあ……おばあちゃんは、その覚悟で……───)


龍仙女(ロンシィェンニュ)となれば、例え魂でも…貴女様を護れるとお考えだったのだと思います。」


「……っ!!おばあちゃんの馬鹿!!……いつもあたしの事…痩せろとか叱ってた癖に……───自分の事は全然ダメダメじゃん!!」


ぽたり───と、神美(かみ)の目から涙が零れた。


「あたし……っ……あたしには……、おばあちゃんしかいないのに……!」


「……」


「……お母さんはあたしを庇って…──おばあちゃんも…あたしを護ろうとしたから……!!二人ともあたしのせいで……ッ!……───皆居なくなっちゃったじゃない!!……あたしが…美豚(ビトン)なんかが生まれたから…ッ!!。……護られる価値なんてないよ!!」


「それは、龍仙女(ロンシィェンニュ)様もお母様も……否定なさる事になりますよ。」


「ッ……!!」


「遺された者の事なんて、誰も考えられません。目の前に居る、大切な人物で埋め尽くされるのですから」


「……そんなの…狡いよ」


「では、仙女様が逆の立場でしたら、どうなさっていましたか?」


「……それは……───」


「それに貴女様は、先程…痩の実を食べると仰ってましたね。…貴女様を慕う五龍(ウーロン)様の気持ちはどうなるのでしょうか?。」


皆の……気持ち─────


あたしが原因で、おばあちゃんがいなくなったって知ったら……───

それでも皆は、あたしを許して、護ってくれるの?───


あたしが皆の立場だったら?


「……痩の実、ちょうだい」


「……それは───」


「皆があたしの立場だったら……、あたしが皆の立場だったら……──きっと、同じ事考えるよね…───だから、おばあちゃんもお母さんも……助けて、護り抜いてくれたと思うから…!。あたしは繋いでくれた生命を……、皆を助ける為に、今を生きていたい…!」


「……失う部分は、最悪"生命"かもしれません───それでも宜しいですか?……その覚悟……偽りはありませんか?」


「ないよ!」


迷いのない神美(かみ)の表情を若榴(ルオリィ)は一瞥し、神美(かみ)の掌に一つの種を乗せた。その種はみるみる成長し、赤い実が実る。


「これが……痩の実です。」


「ミニトマトみたい…」


そのまま一口で痩の実を食べると、身体が燃えるように熱くなる。

それに反応するかのように、指輪も光り始めた


「熱ッ……!!」


身体が燃えたぎる──────

空気が抜けたようにどんどん軽くなる……



神美(かみ)………生きろ……──生き抜いて、幸せになれ……》


おばあちゃんの声がした


身体に力が湧いてくる──────

今だったら、空も飛べてしまいそうな……


「え……」


目を開けると、桃色の羽衣を身に纏い、神秘的で美しい衣装に身を包んだ自分がいた。

身体は健康的に痩せ細り、しかも……


「ボンキュッボン……」


「ぼん…きゅっぼん?」


「てか、これ……あたしーーーー!?」


「……今の仙女様だったら、龍仙女(ロンシィェンニュ)様のお力が使えるはずです。その羽衣は、貴女様が望む場所に運んでくれるでしょう……」


若榴(ルオリィ)ちゃん……」


神美(かみ)若榴(ルオリィ)を思い切り抱き締めた。


「ありがとう……。柘榴(シィーリオ)ちゃんは、絶対に助けるから……───あたしは、柘榴(シィーリオ)ちゃんを……信じたい。…だって、あんなに優しくて、皆のお姉ちゃんみたいな柘榴(シィーリオ)ちゃんが、……負けるはずないから。」


「………はい」


その希望が叶わぬものだったとしても……


こんなにも愛されていたのだったら……


(姉様……、若榴(ルオリィ)は幸せです……)


ずっと、この場所で待っております。

どんな姿でも……


姉様の帰りを



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