第三章「ロンシュータンの導き」
「ちょ、ちょっとぉ~コレってドッキリ?。そこの中国語喋ってる人、仕掛け人でしょー!!。んもう~騙された~!」
「殺せ」
「取り押さえろ」
ガシャンッ!!!────パリンッ!!
その場に居た者全員が、神美を逃がさないようにと、手脚を押さえて拘束する。
飾ってあった家族写真が床に落ちてしまい、写真立ては粉々に割れてしまった。
「じょ、冗談でしょー!?や、やめて!!お父さん!お母さん!!助けてーーー!!!」
「誰か首を絞めなさい」
母親の冷たい声が神美の身体を硬直させた。
「嘘……、お母さん……!!!」
どうして!?……何がどうなってるの……!!
これは、夢なの?──────
《ええか神美、生きろ───絶対生き抜け》
「おばあ……ちゃん」
おばあちゃん……!!あたし、駄目そうだよ……
────もしかして、お母さんが昔言ってた…
17歳になったらまたおばあちゃんに逢えるって……この事なの?
ガシッ!!─────キリ…ッキリキリッ!
「ぁッ……!!ぐ……や……め───」
首を思い切り絞められ、神美の身体が痙攣し始めた。
(駄目……頭が……ふわふわして……冷たくなってきた───)
おばあちゃん……ごめん、約束……守れなさそう────
「阿呆、諦める奴が何処にいる───」
グシャリッ!!───────
耳許で骨が砕けるような音がした。神美の首を絞めていた手が、ぐにゃりと歪んでいたのだ。
「うぐあああーーーーーッ!?」
「な……なんだこの《《龍》》は!?」
龍───────?
解放された首を抑えながら思い切り酸素を吸い、薄らと目を開けると
「ばあ……ちゃん?」
小さい時に亡くなったはずのおばあちゃんと透明に近いような白い龍がキョンシー達を睨み付けていた。
「小龍、1つ頼まれてくれねぇか?───ワシの大事な孫の首を絞めたやつと───そこの巫山戯た札を付けた馬鹿共にちょいと痛い目見させておくれや」
「啊、是为什么的五龙的白龙在这里!?」
小龍と呼ばれた白い龍が龍尾を思い切り振り回し、キョンシー含め、その場に居た神美の親族全員が風圧で吹き飛ばされ、全員気絶してしまった。
「お父さん!!お母さん!!皆!!」
「神美───其奴らはお前の「父」でも「母」でもねぇよ……。お前を呪いの的にした、悪魔に身も心も売っちまった哀れな人間だ……」
「ば……ばあ~ちゃ~んんんんんんんんっ!!!!泣 久しぶりぃぃぃぃぃ!!!」
姿があの頃と変わらない祖母のリン子に抱きついた。
「……おめェ、また太ったか?」
「うっ……ぐすっ……!、成長したって言ってよぉ~~涙」
「……久しぶりじゃな、神美。こんなに立派に……───肉付けすぎじゃろ怒」
「イデデデ!?贅肉抓らないでぇ~~涙」
「……小龍、済まなかったな。先に戻っちょくれ」
リン子は白い龍に向けて透明な指輪を翳した。
その指輪からは白い光と、龍の髭のような、繊細で透明で美しい無数の糸が白い龍を包み込んだ。白い龍が糸に包まれ、消えていく瞬間だった
《……》
白い龍───小龍と目が合った
「あ、た、助けてくれてありがとう!!しゃ……小龍!!」
《───……礼には及ばぬ》
「小龍が喋るなんて……、珍しい事もあるもんだな……」
「ってゆーか、おばあちゃん!!……一体何がどうなってるの!?。…あたしの誕生日に、皆が可笑しくなっちゃうし、変なお札貼った…キョンシー?って人達が現れるし!!───……おばあちゃんが、目の前に……居るし」
「……すまねぇな……───全ては……四ノ宮家代々に伝わる《《呪い》》が関わってんだ……。おめェが幼い頃に、ばあちゃんは病気で死んだ事にされてっけど……、本当は──此奴らに殺されたんじゃ」
「え……」
「でも、お前を護る為……────呪いを解放する為じゃった…───」
「おばあちゃん……それってどういう───」
「ッ……杀掉...!!美丽的猪是我们的!!」
キョンシー達は邪悪な気を漂わせ、神美に襲いかかった。
「チッ……諦めの悪い奴らじゃき───神美!!!受け取れ!!!」
するとリン子は、先程小龍に向けて翳していた、透明な指輪を神美に投げ付けた。
カッ!!!!!!───────
白く眩い光が全員を飲み込んだ
「おばあちゃん!!!!!!」
「神美───今更かもしれんがな、ワシだけはおめェの味方で……家族だと思っておる───だから、何があっでも……おめェを護るぜよ」
リン子が優しく微笑むと、神美の目の前は真っ暗となった
。
おばあちゃん……せっかく、また逢えたのに
あたし……あたし……
ぐっぎゅるるるるるるるる!!!
ガバッ!!
「お腹空きすぎてどうにかなりそうだよ!?───……って、アレ?」
「ちょっと……なぁに?あの変な格好の娘……」
「あんな丸くて……まるで「豚」ね」
「新しい異国の食材とか?」
「クスクス……」
「え……────」
ワイワイガヤガヤと、賑わう町並み───
神美は、煌びやかな装飾を身に付け、美しい衣服を身にまとった女性達に嘲笑された。
通り過ぎる者全員に不審な目で見られ
慌てて立ち上がり、辺りを見渡す
「此処………中国?────」
そう───神美の目の前に広がる景色は、古代中国に似た世界────
「わぁ~!!!美味しそうな肉まん……じゅるり……あ、あっちには小籠包……」
匂いがする方向へと、無意識に身体が動き出した瞬間だった────
「見つけたぞ……美豚───」
「え────」
「先程は、龍仙女の邪魔が入ったが……」
「ククク……、もう終わりだ───」
「キョ……キョンシー!?」
先程危害を加えようとしたキョンシー達が神美を囲んでいた。
嘘……だってさっき……この人達は小龍とおばあちゃんが
「死ね─────」
キョンシーの一人が神美の頭部を目掛け刀を振り下ろした
「た、助けてーーーーーーっ!!!!!!」
《白龍剣───》
ザシュッ!! ザシュッ!! ザシュッ!!───
剣に貫かれていくキョンシー達───
どさり──と、目の前で倒れていく。その先に見えた人物に、何故か神美は見覚えがあった
「!お前は……──大丈夫か…!おい、しっかりしろ────」
白いチャイナ服には銀色の装飾が施され、長髪の髪は風で靡き、青い瞳がとても美しいその青年は、神美の顔を見るなり驚愕した。
「龍仙女はどうしたのだ?───そなたと共に此方へ来る筈じゃ────」
「お…………なか……空いた」
「あ……おい!」
おばあちゃん……なんだか凄く凄く、カッコイイ美形の男の子に出逢っちゃったよ。
でもね、不思議なのは……男の子が小龍と似ているの
もしかして……
いや、まさかね……
だってこれは……………………夢だもの