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爛漫ろまんす!  作者: 平野ポタージュ
時の一族と実
25/63

第二十五章「痩せるか、死ぬか」

「柘榴茶でございます。」


彼岸花の柄の湯呑みに、柘榴色の飲み物が注がれた。


彼岸花なんて縁起が悪い────


それでも、注がれたお茶はとても甘酸っぱくて優しい香りがした。

然し、それには誰も手を付けようとはせず、その様子に若榴(ルオリィ)は小首を傾げた。


「…毒などは入ってはおりませんよ。」


「その証拠は御座いますか?」


青龍(チーロン)が鋭い視線を若榴(ルオリィ)に向けると、横から"ぐびぐび"と飲み干す音が……


「…うん!めちゃくちゃ美味しい!───なんか甘酸っぱくて癖になりそう!おかわり!」


「言ってる傍から貴女は何をしてるんですか?」


「だ、だって、喉乾いたんだもん……」


「クスクス……、仙女様…どうぞ、お飲み下さい」


「ありがとう!。でも、あたし仙女様じゃないよ!───仙女はあたしのおばあちゃんで……」


「……いいえ────その指輪は……仙女様の証でございます。現に貴女は、此処に五匹の龍を連れているではありませんか」


「あはは…!なんかたまたまこうなって……」


「ですが……、貴女は仙女になる前に、その()()を解かねばなりません」


「今その為に、絶賛ダイエット中です!」


「もっと手っ取り早い方法がございます。」


すると、若榴(ルオリィ)は、掌から彼草色の丸い実を生み出した。


「これは、痩の果実───食した者は一瞬で痩せます。ですが……何かを代償にせねばなりません。」


「だ…代償?───」


「身体の一部を失うか……その命を失うか───黄杏(ファンシィ)様の様に……胸部を無くす事も有り得ますね。」


「!……───アンタ……、あの時の若榴(ルオリィ)じゃ……ない?」


今まで黙っていた黄龍(ファンロン)が身を乗り出し、若榴(ルオリィ)の胸倉を掴んだ。


「後宮の妃達と貴方が信頼していた妃は…私ではありませんよ。私の名を使って、身を隠した愚か者ですから……」


「っ……!!────」


「薄々お気づきだったのではないでしょうか?」


「……嘘よ……───嘘よッ!!!!だってそれじゃあ……ッ!!!」


「貴方がその胸部を切り落としてから……数日の間で、彼女は貴方を殺そうとしていました……───でも、運良く目が覚めたようで……良かったです」


「────柘榴(シィーリオ)が…………?」


「嘘……!!───柘榴(シィーリオ)ちゃんが………」


ボワンッ!!!と、神美(かみ)の腕の中でくるまっていた白龍(パイロン)が人間の姿(子供)に変えた。


若榴(ルオリィ)とやら……そなたの話は本当なのか?」


「……この国や他国に、仙女様……美豚(ビトン)の噂は拡がっております。……それを拡げたのは、魔物に取り憑かれた愚かな妃です……。赤龍様が仙女様を攫い、そして黒龍様と出逢うのは全て必然でした。そうなる様に……柘榴(シィーリオ)様は仕組んだのです。」


若榴(ルオリィ)は、白龍(パイロン)赤龍(ホンロン)黒龍(ヘイロン)に向けて手を翳した。

小声で祝詞の様なものを唱え、室内にカチカチと……───それはまるで、時計の秒針が回るかのような音が響いた。すると、三人の身体は早送りの如く元に戻ったのだ。


「!……小龍(シャオロン)、身体が…」


「元に、戻ったのだな……」


「成程……、私達は誘き寄せられた……と言う事ですか───」


「そうです……───白梨(はくり)国は、今…完全に無防備状態。民と国を人質に………美豚(ビトン)の命を差し出すように要望する事でしょう……」


「そんな……」


「国を救うには、この痩の実で一時的に痩せるか……────この場で死んで頂くか……」


それを決めるのは、貴女です……───と、若榴(ルオリィ)は妖艶な笑みを浮かべた。


(痩せるか………、死ぬか────)

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