第二十二章「無事で良かったと思うだけ」
「ちょ、ちょっと!!このままじゃ木に炎が燃え移って……って言ってる側から燃えてるよーーー!!?泣」
「……自然を火災するのはいけないゾっ☆」
「そんなぶりっ子して言うとる場合ですかっ!!」
「──…あっちの方に走れば森を抜けられる」
「ええ……!?。だ、だってこの森は、試練を乗り越えないと抜けれないんじゃ…」
「ププッ!真に受けちゃって~!かわい~なぁ~、冗談に決まってるじゃないかぁ~!。それに…オレはこう見えて僧侶だからさ───善人を導かなきゃいけないんだ」
"だから、行きな"と……僧侶は森の抜け道の方向に指をさす。
「でも!!」
「それに───昔から彼奴は、オレの事がどうも気に喰わないらしい……───なので、オレも逃げます!」
「えぇ~~!?そこは戦う流れじゃないの!?」
「あっははは!、普通はそうだよね。でも、オレっちは無駄な争いは大嫌いなのさ!。───あ、まだちゃんとキミに名前言ってなかったよね。オレは、黒龍───普段は惹黒と呼ばれて、皆から慕われるカッコイイ僧侶だよっ」
神美の手を取って、黒龍は森の抜け道に向かって走り出した。
「それ自分で言わないよ!?」
「この男前面に免じてっ」
じわ……
(やば…血がもっと出てきた……)
赤龍に噛まれた部分から血がどんどん溢れ出す。遂には立つのもしんどくなり、黒龍の手を振り払いその場にしゃがみ込んだ。
「どうした?」
「ごめん…なさ……、ちょっと、辛いかも。…黒龍…貴方だけでも行って!」
「……───キミは、オレの好みのタイプって知ってる?」
「はあ?───」
こんな状況で何を言っているんだろう──この人は。いや、龍か……
「オレには遠い昔、主が居たんだけど……───その人は、神に近い存在の筈なのに……馬鹿みたいに自分を犠牲にする人だったんだ───」
(頭が……ボーッとして……きた)
熱い────
炎が、近くにまで迫ってる─────
意識が……
「キミも────ロンちゃんと一緒だね」
(……おばあちゃん…)
その時──黒龍の目付きが変わった瞬間を、あたしは見たの。
ヘラヘラしてて、変態臭くて、物凄い気持ち悪い趣味とか持ってそうで、厨二病みたいな面構えの黒龍が……────
(なんだか……カッコイイなぁ……なんて──)
おばあちゃんが一緒に過ごした時の五龍は、どんな感じだったの?
あたしにも教えて?─────
あたし……もっと皆の事
『か……─────』
知りたいんだ。
皆の過去を今を未来を─────
喜びを哀しみを────
「神美ッッッ!!!!!!!」
(小龍の声が聞こえる……)
カアァァッ!!───と、左薬指に嵌めていた龍の髭から強い光が放たれた。その光は木に燃え移っていた炎を掻き消し、森全体を鎮火した。
そして───森は生命を取り戻し、生き生きと生い茂る
ドサ!ドサドサ!─────
上空から何かが落下する音と
「神美さん!!!」
「神美!!陛下ッ!!───って、ぎゃあああ!?」
青龍と、何かを見て悲鳴を上げる黄龍の声が響き、神美は安心したのか、そのまま気を失った。
(良かった……皆……無事で───)




