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爛漫ろまんす!  作者: 平野ポタージュ
痩身・後宮篇
21/59

第二十一章「血吸い」

シャランッ……

錫杖は、喉元にほんの少し掠めた。


「おおおお落ち着いて!!田舎のお母さんが悲しむよ!?。誰かーー!!カツ丼持ってきてぇーー!!」


しかし、顔色一つ変えずの隻眼の僧侶。

瞳には気だるさと希望が入り交じっているが、最早気味が悪いとさえ思ってしまう。

僧侶の後ろで、少し苛立ちを見せながら僵尸(きようし)は急かし始めた。


「さあ、黒龍(ヘイロン)……───殺せ」


(駄目だ……このままじゃ、殺される───)


「ッ……!いっ…てぇ…………ッ」


「!…ヤマモモさ…じゃなかった………赤龍(ホンロン)さん大丈夫?!」


「?……赤龍(ホンロン)───」


「耳許でギャーギャー騒ぐな……───って……なんだ?この気色悪い連中は」


「かくかくしかじかで……なんか襲われそうなんです!!涙」


「面倒くせぇな……───血が足りねぇって時に……」


「貧血なんですか…!?」


「説明するのも面倒くせぇ……」


全てが鬱陶しいと言わんばかりの赤龍(ホンロン)は溜息を漏らす。

すると隻眼の僧侶が、神美(かみ)赤龍(ホンロン)の間に割って入り、赤龍(ホンロン)の肩に腕を回したのだ。


「やーやー!!赤龍(ホンロン)じゃないかぁ~!!久しぶりだねぇ~、元気っ?」


「な……なんだお前はッ!……───…誰だ?」


「んもぅ~酷いなぁ~!。(かつ)ては一緒に世界を護っていた仲じゃないかぁ~!。あ!ついでに、君の(かしら)を老いぼれ爺さんに変えたのはオレだよっ」


(世界を護っていた……?)


「そうか……───どっかで見た(つら)だと思ったら……、()()()()()()()()()()……」


「思い出してくれたっ?───相変わらず、ツンツンボーイだねっ」


回された腕を振り払い、僧侶に対して今にも"喰い殺してしまいそう"な眼差しを向けて、赤龍(ホンロン)は舌打ちをする。

そんな赤龍(ホンロン)にでも、僧侶は飄々とした様子だった。


「…テメェを仲間だと思った事は一度もねぇ……。つまらねぇ事を抜かしてんじゃねぇよ」


「ひぃ~どぉ~いぃ~泣 黒龍(ヘイロン)泣いちゃうぞ!」


(な、なんなんだろこの人……。悪い人じゃ…ない?)


「……黒龍(ヘイロン)…貴様、我の命に逆らう気か?」


完全に存在を忘れかけていたが、痺れを切らした僵尸(きようし)が僧侶に殺意を向ける。僧侶は錫杖を軽く鳴らし、口角を上げた。


シャラン……


「とんでもないですよ~、……()()()()()()()()()()()()つもりはないんでね」


「貴様!!謀ったな!!?」


「心外だなぁ~。でも、美豚(ビトン)ちゃんを捜してるのは本当だったぜ?。見つけてくれて、サンキュ~笑」


「ッ……美豚(ビトン)諸共纏めて始末しろッ!!!!!」


「平和じゃないねぇ~。……ま、その方が面白いけどっ」


僧侶は、錫杖を地面に突き付け軽い読経を上げた。───すると、身体が墨色へと変色していき───…そして、黒い龍へと姿を変えた。


「黒……龍!?」


「チッ……───そういう事かよ……」


その姿を目の当たりにした神美(かみ)は唖然とし、赤龍(ホンロン)は再び赤龍になろうと試みるが、先程の大量出血で目眩が生じ、立つのもやっとの状態だった。


「ッ……クソ!……血が……」


「……血って、傷口から出たやつでも大丈夫なの!?」


「あ…?」

不快そうに赤龍(ホンロン)は"だったらなんだ"とぶっきらぼうに吐き捨て、神美(かみ)を睨み付ける。

しかし、神美(かみ)はそれに臆せず

噛みごたえのありそうな、自身の白くて艶のある腕を赤龍(ホンロン)に差し出した。


「何の、真似だ…」


「あたしの血をあげる!……だから、あの黒龍を助けてください!…っ」


「……なんで俺が……──それに、なんでアンタが、彼奴をそこまで気にかけるんだ?」


「……だって、あのお坊さんは片目に傷を負ってるし……──それに、お坊さんも…貴方も五龍(ウーロン)なんでしょ!?」


「……」


ドオオォォンッ!!!!!


「!!…ッ」


大量の僵尸(きようし)達を木に打ち付ける黒龍──────

然し、倒しても倒してもその屍から新たな僵尸(きようし)が生まれ、際限のない状態だった。


「あちゃ~、こりゃあ面倒臭い奴らだね──倒しても倒してもキリがない」


「当たり前だ……。本体が存在している限り、我等は永遠に生き続けるのだ」


僵尸(きようし)の一体が黒龍に1枚の御札を投げ付ける。

その御札から禍々しい気と鎖が放たれ、一瞬で黒龍を縛り付け、身体の自由を奪った。


「ありゃ……しくった」


「お坊さん!!」


地面に落下した黒龍───

砂煙が舞い、神美(かみ)が急いで黒龍に駆け寄ろうとした瞬間だった


ガシッ─────と、肩を掴まれ、そのままグイッと引き寄せられた


「……首筋貸せ───」


カ…ップッ!────


「痛ッ!!────」


首筋に激痛が走る。


「……アンタの血───戴いたぜ」


唇が血に濡れた赤龍(ホンロン)は、先程とは打って変わって生き生きとした表情で、身体から赤い光を放った。


「赤…龍」


赤い光は上空に昇り、赤龍が現れたのだ。

赤龍はそのまま僵尸(きようし)達に向かって口から火を噴射した。


「なんだこの炎は……、クソ!!身体が言う事を効かない!」


僵尸(きようし)達は炎に包まれ、メラメラと燃えていく。黒龍が攻撃した時は、無限ループの如く生き返っていたというのに……。

ただ単に赤龍(ホンロン)が強いだけでは無い気がした。


《グア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッ!!!》


そのまま僵尸(きようし)は灰となり、風と共に上空に消え去ってしまった。

それと同時に、黒龍を縛っていた鎖が解かれる。


「ホ…赤龍(ホンロン)がオレを助けた!?───と、言うよりかは……、キミのおかげだよねっ」


黒龍から僧侶の姿に戻る否や、懐から手拭いを取り出した僧侶は神美(かみ)の首筋にそっとあてた。


「でも、キミが…出血多量で死んでしまうよ?」


「あ……ありがとう…ございます」


なんだか……良い意味でも悪い意味でも掴めない人な気がする。

この人は美豚(ビトン)の事を知っていた……───いや、五龍(ウーロン)だから当たり前かもしれないけど……

でも、さっきは本当に……


(あたしを…殺す気だった?)


「余所見してんじゃねぇよ───」


今さっき、僵尸(きようし)から助ける為に放たれた炎は────今度は僧侶に目掛けて噴射された

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