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タキオンの矢  作者: 友枝 哲
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第86話 : 世界はきっと1つになれる!!

<前回のあらすじ>

ルナとソルの操る深紅の機体、オル・アティードは圧倒的数の地球軍に囲まれ、撃墜される寸前であった。

その時、タキオンコミュデバイスを利用して、未来の自分からメッセージが届く。

「JAM-Unitを着けて、そして祈りを。」

「心を解放するんだ!!」

その意味を理解するルナ。

ルナが心を開くと同時に、ソルの開発したタキオンコミュデバイスを受け取った人々がJAM-Unitを装着する。

すると、タキオンコミュデバイスの持つ0時間通信機能とJAM-Unitの持つ思考を伝達する機能により、繋いだ人の脳が1つの大きな意識となる。

その意識はAIをも遥かに超える能力を発揮し、地球軍の包囲網を軽く躱すことに成功した。

だが、突破したのも束の間、その先には地球軍の数万という軌道衛星からの攻撃が待っていたのだった。



 戦闘機、メタリックステラなどの全ての機体やアンドロイドの中のAI。そのAIの中にもタキオンコミュデバイスのファイルとは別の圧縮されたデータが存在した。


 タキオンコミュデバイス内で解凍されたデータは、そのAI内の圧縮データを解凍するためのキーであった。


 AI機体の中の圧縮データ。


 そのデータはまさにルナが時おり見ていた数々の戦争の映像。


 それは宇宙が出来、生命体が生まれる歴史、その生命体が繰り返した戦争の歴史、絶滅の歴史であった。





 宇宙の最初、インフレーション、ビッグバン。


 そして、約3億年。


 恒星ができ、超新星爆発を通して多様な原子が生まれた。


 それからさらに10億年。


 ある惑星内で初めて生命が誕生する。それはごくごく単純な生命であった。


 そこからさらに数10億年。


 幾度の環境変化に伴い、儚い生命は絶滅、誕生を繰り返し、ようやく知的生命へと進化する。


 だが、知的生命は、文明というものを作った後、わずか1万年も経たず、自らの力で滅びてしまう。


 知的生命が生まれるまでの時間に比べて、文明を持った後の時間のなんと短いことか。。。


 それはわずか0.001%にも満たないほど。


 そして、それは宇宙の至るところで繰り返される。


 誕生、絶滅。誕生、絶滅。誕生、絶滅。誕生、絶滅。誕生、絶滅。。。。。


 我々生命がいかに貴重で、いかに脆く、そしていかに愚かなものか、繰り返される歴史がいやでもそれを感じさせた。





(レーザー発射まで 1.5、、、1.4、、、1.3、、、1.2、、、1.1、、、1.0、、、0.9、、、 )


 オル・アティードからの金色の波動を受け、AIの中にあった圧縮データが解凍されはじめた。


 それまで人間が与える命令が置かれる階層よりも下の階層に置かれていた争いの数々のデータ。


 そのデータが解凍され、人間が与える命令と同じ階層にデータが置かれた。



 


 全データの解凍が完了した瞬間、それまでずっと人間の命令の階層下にあったがために却下されていた「戦いたくない」という意思が命令と同じ階層で発生した。


 そして、それは決定事項として選択された。


(レーザー発射まで 0.3、、、 0.2、、、 0.1、、、 0.03秒、、、、、)


 衛星からのレーザー発射カウントダウンが止まった。





 リチャード・マーセナスがその異変に気がついた。


「おい!なぜ撃たない!!衛星はどうした?」


 地球の巨大AIが沈黙した。


 リチャード・マーセナスが人間たちに命令を下した。


「もう良い!こいつらはスクラップだ!!

 地上Human部隊、レーザーを今すぐ撃て!!今すぐだ!!」





 大気圏突入時にオル・アティードの前で圧縮された空気によってオル・アティードが真っ赤に光りだした。


 要塞のような二子山総合研究所の周囲には100台以上のレーザー砲台が用意されていた。


 そのレーザー砲台が真っ赤に輝くオル・アティードに狙いを定める。


 そして、レーザーが発射された。


 だが、レーザーはオル・アティードの数m横を通過した。


 何度も何度もレーザーが発射されるが、なぜだか全く当たらなかった。


 Human部隊はAIの補助によって照準を合わせていたが、AIがわざと照準をずらしていたためだった。


 おびただしい数のレーザーが飛び交った。


 ルナとソルがその様子をコックピット内で見ていた。


 その時、どこからともなく声が聞こえた。


(私たちも一緒です。)


 その声にルナとソルが笑みを浮かべた。


 いや、もうすでにそれはルナやソル、個々だけの意思ではなかった。


 繋がった全ての人の意思として笑みを浮かべていた。


 そして、その人は言葉を放った。


「ありがとう。

 今、おれが(私が)(僕が)彼らにもこの記憶を。

 そして、この争いの鎖を断ち切ってみせる。」


 大気圏突入が完了したオル・アティードがレーザーの間をすり抜け、ソニックブームを纏いながら、地上200mほどの高度で急旋回した。


 そして、要塞のような二子山総合研究所に対峙するようにアサルトユニット、ブースターユニットを広げた。


 ルナとソルが目を見開いた。


「世界はきっと1つになれる!!」


 オル・アティードから再び金色に輝く波動が広がった。


 その波動が人々の頭に次々と宇宙の歴史を、そして戦いの歴史を送り込んだ。


 人々は入ってくる映像を見て涙を流しだした。


 レーザー砲の操縦士たちは操縦桿から手を離した。





 リチャード・マーセナスが頭に入ってくる映像を、宙を仰ぐように見て震えだした。


 そして、リチャード・マーセナスの目から涙が溢れだした。


 しばらく涙を流した後、自分の行った行為を思い起こし、おぞましく感じだした。


「おれは、おれはいったい何をやっていたんだ。。。」


 そう言うと、リチャード・マーセナスは頭を抱え、髪の毛をクシャクシャにかきむしり出した。


「うわあああぁぁぁーーーーー!!」


 リチャード・マーセナスは叫びだした。


 大声だった声はやがて声にならない声となり、息が詰まる。


 そして、あまりの罪悪感に泡を吹きだし、ついには気絶した。





 その時、オル・アティードの推進剤残量が ”0%” になった。


 アサルトユニット、ブースターユニットの下面小型ブースターからのイオン排出が止まった。


 オル・アティードが地球の重力に引っ張られ、芦ノ湖メガフロートの横に墜落した。





 コロニー1宙域からオル・アティードを追いかけていた地球軍の機体群から一斉にミサイルが放たれた。


 そのミサイルは何もない場所に行き、爆発した。


 その光はコロニー1からも、地球からも見えた。


 それはまるで花火のようであった。


 その爆発の中、地球軍の機体たちから降伏の信号が確認された。





 コロニー1の軍事マニアが操縦する小型偵察機がその状況を実況していた。


「地球軍が全て降伏信号を出しています。

 先ほど地球に突入したRedDevilがきっと、きっと!!」


 コロニーの人々、地球の人々が歓喜した。





 ジャンク屋のコックピットブースから出てきたりょーたろが言った。


「やったな!ルナちゃん。ソル!!」





 コロニー3の議員会で議論をしていたレミ柊に秘書アンドロイドが終戦の報告を入れた。


 レミ柊はおもむろに天井を見上げて言った。


「ソル、あなたの勝ちね。」


 レミ柊の頭にもJAM-Unitが装着されていた。





 会社で会議を行っていたレイモンドも報告を聞いていた。


 ディスプレイには小型偵察機から撮された地球の画像とその横にはコックピットから出てくるルナとソルが映っていた。


「ルナ、お前というやつは。。。」


 レイモンド小林が笑みを浮かべた。





 コックピットからルナが出てきた。その後、ソルも出てきた。


「ルナ、やったな!」


 ルナが口をヘの字にして、大粒の涙を流しだした。


「うわぁぁーーーん。怖かったよーーー!!」


「なんだよ!お前、今になっていきなり。。。」


「ソルさん!ホントに、ホントに、ありがと。

 ソルさんがいてくれたから私、私。。。」


 泣き顔もルナを見て、ソルも目に涙を溜めていた。


 ソルがホッとしたような笑みを浮かべて言った。


「おれもだ。おれもお前がいたから。」


 ルナとソルが強く抱き合った。


 そこにシュレディンガーがコンテナから降りてきて、二人の足に擦りよった。


 ルナがシュレディンガーを見た。


「シュレディンガー、お前もありがとね!!」


 シュレディンガーが頭を足に擦り寄せて鳴いた。


「ニャー!」


<次回予告>

とうとう終結を迎えた戦争。

この戦争を通して、人は何を感じたのか?

人はどこに向かっていくのか?

次回、最終話 エピローグ ”なんか心がくすぐったいね。”

ついに完結です!!


<ちょっとあとがき>

AIの中に封じ込められていた戦争の記憶。

このデータは、実は前作”ガロワのソラの下で”で登場する宇宙の記憶を誰かがAIに入れたものです。

そのお話が実は前作と今作の間の物語になります。

それもいつか公開したいと思います。

それらが合わさり、前作主人公が言っていた「自らを滅ぼさないための知恵」を獲得するための道となっているわけです。


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― 新着の感想 ―
 そうか。前作であの4人は宇宙そのものを作ってしまったから、その記憶全部をそろえることができるのか……。  宇宙を創り出せたのに、その延長線上にある世界線で経済目的の侵略戦争していたなんて、どんだけ欲…
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