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タキオンの矢  作者: 友枝 哲
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第82話 : やっぱりあるんだな。

<前回のあらすじ>

コロニー1宙域に集結する地球軍部隊。その数、2万超。

その宙域に飛び込む深紅の機体、オル・アティード。

ルナとソルの操るその機体は次々と地球軍の戦闘機、メタリックステラを戦闘不能にしていった。

深紅の機体は地球軍の手薄なルートを通り、地球に向かって進軍していた。

だが、それは地球の巨大AIの罠であった。

1000機を超える機体群に取り囲まれるオル・アティード。

地球軍の機体を操るAIから放たれる拒絶の声がルナとソルの心を蝕んだ。

二人の頭に鈍い痛みが走った。

そして、地球軍のイオンビームがとうとう深紅の機体を貫き、機体が爆発してしまった。

コロニー3のコックピットブースから出てくる二人。

落胆するルナとソル。

落胆のルナに黒猫のシュレディンガーが近づいた。

ソルはその様子がデジャブのように感じた。

前にもあった光景。その時のことを思い出した。

当時はソル以外誰も持っていないはずの0時間通信デバイス=タキオンコミュデバイスが鳴り響いた時のことを。

そして、ソルが何かを閃いた。

ソルはタキオンコミュデバイスに改良を加え、どこかに信号を送信した。

その時、コロニー3に進軍してきた地球軍がコロニー3に向けてS2ミサイルを放った。

二人は真っ白な光りに包まれたのだった。


 

 ソルとルナのいる場所にも退避を促す警報が鳴り響いていた。


 ソルの目の前にコンパイル完了の文字が表示された。


 それを見て、ソルが言った。


「できた。これで伝えられる。」


 ソルがルナを見た。


 ルナにはソルの意志がすでに伝わっていた。


 空中にミサイル着弾までに時間が表示された。


「S2ミサイル着弾まであと、58秒」


 カウントダウンが進む。


 ソルがルナに聞く。


「最後のイオンビームの、、、」


 ルナがソルの質問が終わる前に答えを返した。


「1010(ひとまる、ひとまる)だよ。」


 ソルがうなずき、タキオンコミュデバイスを使って、通信を送った。


 ソルが数回異なる日時を打ち込み、それぞれに空のデータを送った。


 そして、その後、また日時を打ち込み、今度は「1010」とだけ書き記して送った。


 ソルとルナが目を合わせ、頷いた。


 警報が残りの時間をカウントダウンしはじめた。


「着弾まで10、9、8、7、6」


 ルナとソルがぎゅっと抱き合った。


「5、4、3、2、1、」




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 地球の巨大AIが戦闘状況から解析結果を出した。


「あと、最大レベルの100機を接近させれば、RedDevilは回避不可となるでしょう。」


 それを聞いて、リチャード・マーセナスが歓喜の表情を浮かべた。


「ついにこの時が来た!チェックメイトだ!!」





 さらに地球軍の拒絶の声が大きくなっていった。


 苦悶の表情を見せるルナとソル。


 二人の目は真っ赤に染まり、赤い涙を流していた。


 オル・アティードは回避の動きをしつつ、地球軍を1機、また1機と戦闘不能にしていく。


 だが、それ以上のペースで地球軍の機体が深紅の機体(オル・アティード)を取り囲んでいった。


 そして、二人の頭に一瞬鈍い痛みが走った。


 二人の身体がその瞬間ビクッと震えた。


 その時、突然画面に文字が表示された。


(10 10(ひとまる、ひとまる))


 ルナが反応した。


 確かにその方向からこちらを狙っている意志が感じられた。


 ルナが回避行動に出た。加えて、ビットで反撃。


 メタリックステラの武器を破壊し、頭部を撃ち抜いた。


「だれ?さっきの。。」


「分からん。でも。。。もしかして。」


 尚も回避行動。そして、反撃。


「もしかして?」


「いや、いい。今は今に集中しよう!!」


「うん!!」


 オル・アティードの周囲では小爆発が絶えず起こり続けた。


 だが、さらに数多の拒絶の声がルナとソルの頭に木霊した。


 再び、二人の頭に鈍い痛みが走った。


 痛みに一瞬二人の身体が震えた。


 そして、前方やや右側から白い光が飛んでくるのが見えた。


「やばっ!!」


 次の瞬間、真っ白な光がコックピットに照射された。


 コックピットボールにイオンビームが直撃した。


 コックピットには鈍い重低音と甲高い音が入り交じった爆音が響いた。





 コックピットボールの内面に赤い文字が表示されていた。


(No Signal)


 ルナは呆然としながらも不可解な信号について考えていた。


(さっきの1010(ひとまる、ひとまる)って?何で送られて来たの、、、)


 そのルナの思いはすでにソルに共有されていた。


 ソルの表情はすでに閃いたそれに変わっていた。


「ソルさん、それって。。。」


 その想いはルナにも伝わっていた。





 ソルがコンパイル完了の表示を見た。


 空中にミサイル着弾までに時間が表示された。


「S2ミサイル着弾まであと、58秒」


 ソルがその表示を見た後、ルナの方向を向いた。


 ルナがソルの目を見て言った。


「01 09(まるひと、まるきゅー)だよ。」


 ソルが頷いた。


 そして、日時を入力して、(01 09)とだけ送信した。


 ルナが言った。


「私たちが2回目ってことだよね。」


「ああ、これって平行宇宙だな。やっぱりあるんだな。」


 ソルとルナが目を合わせた。


 警報が残りの時間をカウントダウンしはじめた。


「着弾まで10、9、8、7、6」


 ルナとソルがぎゅっと抱き合った。


「5、4、3、2、1、」




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




(10 10(ひとまる、ひとまる))


 突然の画面表示にルナが反応した。


 ルナはその方向からの狙撃意志を感じとり、回避行動に出た。


 そして、ビットで反撃。


 メタリックステラの武器を破壊し、頭部を撃ち抜いた。


「行ける!行けるよ!!」


 尚も回避行動。そして、反撃。


 オル・アティードの周囲では小爆発が絶えず起こり続けた。


 時間の経過と共に拒絶の声の数が増していった。


 再び、二人の頭に鈍い痛みが走った。


 だが、その時再び画面表示が浮かび上がる。


(01 09(まるひと、まるきゅー))


 ソルがそちらの方向に意識を集中させた。そして、狙撃の意志を感じとった。


 ルナがその情報からオル・アティードを動かした。


 虹色の軌跡の上にイオンビームが走った。


 オル・アティードが攻撃された方向に反撃する。


 オル・アティードが回避しては反撃、回避しては反撃を繰り返し、僅かずつ地球に接近していく。





 リチャード・マーセナスがその様子を見て、正気を失いそうになっていた。


「何をやってる!なぜ打ち落とせない!?

 すでに予測した機数以上で対応しているはずだろ!?」


 地球の巨大AIが答える。


「もちろんです。この状況で生き残るのは天文学的確率です。

 あり得ません。」


 AIの回答にリチャード・マーセナスが苛立ちを露にした。


「ふざけるな!!お前らAIというやつは!!

 何でもいい!早く打ち落とせっ!!」





(03 10(まるさん、ひとまる))


 再び表示が現れた。


 ルナとソルは表示の回数をカウントしていた。


「16回目!!」


 ルナがオル・アティードのイオンビーム、レールガンの残弾を気にし始めた。


(もう半分ほどしかない。)


 回避しつつ、反撃。そして、再び表示される情報。


(05 09(まるご、まるきゅー))


(11 04(ひとひと、まるよん))


(09 09(まるきゅー、まるきゅー))


 ・・・・・・


 おびただしい数の地球軍戦闘機、メタリックステラがオル・アティードが放つ虹色の波動に対して拒絶の反応を示していた。


「うっ、くっ。。」


 ルナもソルも拒絶に対して苦しんでいた。


 それでも、オル・アティードは絶えず地球軍の機体を戦闘不能にしていった。


 だが、あるところから、あまりの地球軍の多さに地球へ僅かに進んでは後退、また進んでは後退と、正に一進一退を繰り返すようになっていった。


 ルナもソルも焦りを感じだしていた。


 二人は目を真っ赤にして、肩で息をするほどに疲労してきていた。


「はっ、はっ、はっ」


「これ以上、、、進めない。。。」


 オル・アティードの残弾数も3分の1ほどになっていた。


「弾数もヤバイ。。。」


 そして、再び二人の頭に鈍い痛みが走った。


「くっ!!」


 二人の身体が一瞬震えた。


<次回予告>

平行宇宙(未来)から次々と舞い込む敵機の方向情報。

地球軍が一機、また一機と無力化されていく。

だが、それでも、あまりの弾幕の多さに、深紅の機体(オル・アティード)の進撃が止まる。

どんどん無くなっていく武器の弾数と推進剤。

積み重なっていく 二人の不安。

その時、ソルが聞く、小さな声。

その先に、ソルは、なにかを見る。

次回、第83話 ”そして、どうか祈りを。”

さーて、次回もサービス、サービスぅ!!


<ちょっとあとがき>

今話でソルとルナが行っているのが、過去への情報伝達です。

そして、それを実現するのがソルの開発したタキオンコミュデバイス。

タキオンという物質をご存じでしょうか。

タキオンは虚数の質量を持つと言われている物質で、実際のこの世界で存在が予見されている物質です。

特徴として光よりも速い速度で移動することが言われています。

光の速度で移動すると、例えば月からその信号を送れば約1秒後に到達します。

ですが、相対性理論(正確には相対性理論ではないですが。)を応用的に考えると、光より速く移動するものは時間を逆に遡ると考えられ、移動する距離分を遡るだけの速度で移動すれば0時間通信が可能となるわけです。

そして、さらに速度を速くすると過去に対して情報を送ることができる、というアイディアです。

これをソルはハッと閃き、その場で数式を作り上げ、プログラムを作り、送ったわけです。

その情報を受けたのはイオンビームで貫かれる前のオル・アティードだったということです。

今回この情報を過去に送った時にだけ、本文に二重線を入れていますが、これは平行宇宙が出来ていっているという表現として入れています。


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― 新着の感想 ―
反則技やー! ソルさん爺ちゃんと同じでとんでもない事を平然とやりおるー! 超技術を使ってはいるけど、やっていることは幼稚な理由による戦争。 技術は進歩しきっているこの世界。技術以外の進歩が残念過ぎる…
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