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タキオンの矢  作者: 友枝 哲
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第80話 : やばい!!囲まれてる。

<前回のあらすじ>

ルナ、ソルの操る深紅の機体(オル・アティード)

その機体の推進剤がなくなり、地球軍の戦闘機数機に狙われ、絶体絶命となった。

だが、その時、仲間のりょーたろが貨物機で援護に来た。

なんとかピンチを脱し、貨物機がオル・アティードの推進剤と武器を充填する。

しかし、その時、宙域外から戦艦が主砲イオンビームでオル・アティード破壊を狙った。

貨物機が何発か戦艦主砲イオンビームを回避したが、充填完了と共に貨物機が主砲イオンビームの餌食となった。

ルナは仲間をやられた怒りに飲まれ、戦艦とその周囲の戦闘機、メタリックステラを全て撃墜した。

戦艦の破壊と同時に、ソルがルナの頬を叩き、ルナが我に返った。

その時、ソルもルナも、自身の中に世界を破壊する衝動を抱えていることに気づいたのだった。

ソルがルナに仲間りょーたろの無事を伝えた。

二人はこの戦争を終わらせるため、もう少し頑張ることを誓った。

だが、進軍するオル・アティードに対して、地球軍は、コロニー1宙域において、2万を超えるおびただしい数の機体を用意し、迎え撃つのだった。



 コロニー1(ワン)。最も地球に近いコロニー。


 このコロニーは地球と月の間のラグランジュポイントに位置していた。


 そして、そのコロニー1(ワン)と月の間に地球軍が集結していた。


 その数、実に2万超。


 地球地表に対して平行面状に何層にもなるように各機が移動していた。


 大型戦艦である旗艦を最も地球に近い面の中心に据え、その周囲にはメタリックステラ部隊が配置されていた。


 そのさらに月側の高い位置に通常の戦艦が移動してきていた。


 もっと高い層には戦闘機部隊がずらっと列を作っていた。





 その様子を要塞都市のような二子山総合研究所にてリチャード・マーセナスが見ていた。


「これで万が一にも我々が負けるなどということはない。

 確実にRedDevilを仕留めるのだ!!」





 地球軍の整列が完了した頃、全機に警戒アラートが鳴り響く。


「11、01(ひとひと、まるひと)より、敵機確認。

 距離1万。相対速度約65km/秒。」


 5000kmほど前方に配置された哨戒機が敵機の位置情報を送信していた。


 そのアラートからものの10秒ほどで再び情報が全機に発信される。


「距離9000!」


「なに?もう9000だと?なお加速しているというのか?」


「それだけの速度なら攻撃に反応できまいて。」


「戦闘機、メタリックステラ全機、イオンビーム撃ち方、構え!!」


 全機がレーダーの位置に対して照準を合わせはじめた。


 その時、空間を歪めてしまうほどの虹色の波動が地球軍に押し寄せた。


 戦闘機各機、メタリックステラ各機が震えはじめる。


 地球軍の旗艦総司令AIが指示を出す。


「ひとまずは我々の宙域におびき寄せるのだ!その時がやつの最後だ!!」


「距離8000!」


「まだだ。撃つなよ。」


「距離7000!」


 戦艦の周囲の戦闘機部隊、メタリックステラ部隊が今か今かと待ち構えていた。


「距離6000!」


 距離6000から3秒ほど経った時、前方で光の線が走った。


 すると、レーダーからオル・アティードと思われる機影が消えた。


「最前哨戒機、戦闘不能の模様!!」


 全機が照準を失った。そして、各機の振動がより強くなっていった。


 そして、さらに3秒ほど経つとまた別の哨戒機の重力子レーダーがオル・アティードを捉えた。


「02、11(まるひと、ひとひと)より敵機確認。

距離5500!最前線から3000!!」


 全機が再び敵機認識位置に対して、イオンビーム砲を構える。


「まだだ!!戦闘機部隊、前へ!!メタリックステラ部隊、戦闘機部隊から距離を保て!!」


「02、11(まるふた、ひとひと)距離5000!最前線から2500!!」


 再び宙域で光が走った。


 また機体認識情報が消え失せ、全機が照準を失った。


 地球軍の機体がさらに強く振動しはじめる。


 そして、数秒後、三度新しい敵機情報が入ってくる。


それはすでに戦艦の重力子レーダー圏内となった。


「11、01(ひとひと、まるひと)より敵機確認。距離4500!最前線から1500!!」


「なんなんだ!?この動きは?」


 各機の震えが止まらない。


 オル・アティードは、地球軍より前方、まばらに配置されていた哨戒機を次から次へと戦闘不能状態にしていった。


 哨戒機の位置に合わせて、ジグザグに動きながらも圧倒的速度で地球軍に接近していた。


「距離4000!戦闘機部隊より距離1000!!攻撃圏内。」


 地球軍の旗艦総司令AIが指示を出した。


「戦闘機部隊、メタリックステラ部隊、撃ち方はじめー!!」





 突然ルナとソルの頭に今までとは比較にならないほどの拒絶の声が響きだした。


「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」


 恐ろしいほどの拒絶の声が頭に入ってくる。


 二人は歯を食い縛り、思わず声が出た。


「ううっ、、ぐっ!!」


 地球軍2万超からの拒絶の声は、それまでとは比較にならないほど、二人の心の負荷となった。


 意志決定の僅かな遅延が発生する。


「来るっ!!」


 おびただしい数のイオンビームがオル・アティードに対して放たれる。


 ルナ、ソルの目が真っ赤に染まる。


「うおおおおぉぉぉぉーーー!!」


 二人が叫ぶ。


 オル・アティードを纏う虹色の光がより一層強くなる。


 虹色の光が稲妻となり、イオンビームをことごとく避ける。


 そして、反撃のイオンビームを放つ。


 地球軍の戦闘機、メタリックステラのカメラ部や武器、ブースター部が破壊される。


 次々と発生する小爆発。


 しかし、圧倒的な数量の地球軍はオル・アティードを進ませまいと前方に弾幕を張る。


 ビームの間を縫いながら進行するも、ついにオル・アティードはやむを得ず、アサルトユニット、ブースターユニットを迂回する方向に曲げた。


「ルナ、02、01(まるふた、まるひと)!」


 ソルがその方向の敵機が手薄であることを意識し、言葉を放つ。


 だが、ルナはその言葉を聞く前にすでにその方向に機体を移動させていた。


 オル・アティードは迂回しつつ、その進行方向に次々と小爆発を発生させ、敵機を戦闘不能にしていく。


 その動きを見て、オル・アティードの行く手を阻むように、地球軍が再び弾幕を張る。


 オル・アティードはまた迂回を余儀なくされる。


 オル・アティードは迂回した先でしばらく進行するも、再三作られる激しい弾幕にさらに迂回せざるを得なくなってしまった。


 それでも僅かずつ、僅かずつ地球に近づいていく。





 リチャード・マーセナスがその様子を見て、焦りを募らせていた。


「おい!!どうなっている!!?次々に落とされとるではないか!!

まさか、まさかこれでも。。。」


 頬に汗が流れるリチャード・マーセナスに地球の巨大AIが答えた。


「この程度の被害は想定内です。

 ご安心ください。

 我々の勝利の確率はどんどん上がっております。」





「10、11(ひとまる、ひとひと)!!」


「02、10(まるふた、ひとまる)!!」


 ルナとソルが手薄な方向を叫ぶ。


 何度も何度もオル・アティードが急激な方向転換をする。


 鋭角な虹色の軌跡が織り成され、その都度、地球軍の機体から小爆発が生まれ、地球軍の機体を戦闘不能にしていく。


 じわじわと地球に向けて接近していくオル・アティード。





 かなりの時間が経過した。


 戦闘不能となった地球軍の機体は数えきれないほどとなっていた。


 しかし、それでもやまない拒絶の声。


 減らない地球軍機のレーダー反応。


 そして、ソルとルナがあることに気づいた。


「やばい!!囲まれてる。」


 地球軍は手薄なルートをわざと作り、1000機を超える機体で囲めるように、オル・アティードを誘導していた。


 その気づきに、ふと二人の心が弱気になった瞬間、幾重も折り重なった拒絶の声が入り込んできた。



「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」

「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」「入ってくるな!」



 ルナとソルの頭の中にその声がますます強く木霊した。


「ぐぅああっっ!!ぐっ!!」


 ルナとソルがAI機に与えていた遅延が少しずつ短くなっていく。


 それとは対称的にルナとソルの判断が鈍っていく。


 その影響はオル・アティードを狙うイオンビームとオル・アティード本体との距離に現れはじめていた。


 四方八方からオル・アティードに向けて放たれるイオンビーム。


 爆発する周囲の戦闘機、メタリックステラ。


 ルナとソルが入ってくる情報を最大限の速度で判断し、移動を繰り返していた。


 ルナもソルも苦しそうな表情を浮かべている。





 地球の巨大AIがその状況、オル・アティードの反応遅延具合、地球軍の機体が受ける遅延減少具合から解析結果を出した。


「あと、100機を接近させれば、RedDevilを撃墜可能となります。」


 それを聞いて、リチャード・マーセナスが歓喜の表情を浮かべた。


「鳥籠の機体を増やせ!!

 今度こそ、時が来た!チェックメイトだ!!!」





 さらに地球軍の拒絶の声が大きくなっていった。


 苦悶の表情が、より色濃くなるルナとソル。


 二人の目は真っ赤に染まり、赤い涙を流していた。


 オル・アティードは回避の動きをしつつ、地球軍を1機、また1機と戦闘不能にしていく。


 しかし、落とされる以上に多くの機体が1体の獲物を取り囲んだ。


 その時、二人の頭に一瞬鈍い痛みが走った。


 二人の身体がその瞬間ビクッと震えた。


 そして、二人は目を見開いて、左斜め下を見た。


 メタリックステラの視点が飛び込んできた。


 その機体はオル・アティードのブースターユニットに向けてすでにイオンビームを発射させていた。


 コックピットの左半分が真っ白に染まる。


 高エネルギー特有の甲高い音が前方から後方に突き抜けた。


 次の瞬間、左後方から爆発音が鳴り響く。


 機体がルナとソルが意図しない方向に吹き飛ばされる。


 姿勢を維持しようとルナが操縦桿とフットペダルを操作する。


 だが、それでも機体は回転を止めなかった。


 視線の前方にAlertが表示される。


(ブースターLTユニット被弾 Mulfunction)


 機体の制動不安定のWarningも発報される。


 次々に上がるエラー表示。


 だが、次の瞬間、至る方向から真っ白な光がコックピットに照射された。


 コックピットに鈍い重低音と甲高い音が入り交じった爆音が響いた。


<次回予告>

手も足も出せなくなったルナとソル。

呆然とするルナ。

ソルは、ルナの様子を見た。

その光景がまるでデジャブであるかのように感じる。

そして、ソルがあることを思い出す。

その記憶が何かを変えるのだった。

次回、第81話 ”そうか!!その手が。。。”

さーて、次回もサービス、サービスぅ!!


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