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タキオンの矢  作者: 友枝 哲
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第75話 : 言わなくてもわかってるって!!

<前回のあらすじ>

ルナはAIの拒絶の声を聞き、そしてコロニー5宙域での地球軍、コロニー軍の戦闘を通して、人同士が憎みあう声を聞いた。

何とか完成した戦闘機オル・アティードに乗るルナの決心が壊れかけていた。

その時、ルナにソルの想いが流れ込む。

それはソルが家を飛び出し、コロニーの貧困層の人々と分かりあうまでの経験だった。

”それでも。。。いつか。”

そう願い続けているソルの心と、これまでずっと繋がりを求めていたルナの心とが結び付く。

そして、ルナはオル・アティードに乗る決心をしたのだった。

とうとうコロニー3から出撃したオル・アティード。

秒速50kmほどの凄まじい速度で地球に向け進撃し、瞬く間に出くわした地球軍の哨戒機を無力化したのだった。


 

 地球に向かって進行してくる戦闘機の情報を、地球の巨大AIが分析した。


(RedDevil オル・アティードである確率1.7%)


 AIが導きだしたその情報を見て、リチャード・マーセナスが驚愕の表情になった。


「やつらだ!間違いない。。。しかし、どうやってあんな機体を。。。」


 だが、すぐに含みを持った不敵な笑みに変わった。


「まあ、良い!良い機会だ。向かい撃て!!最大レベルで迎え撃つのだ!!」


 地球軍のAIレベルが最大に設定された。





 陥落したコロニー5に住む軍事マニアたちがこの混乱の最中、超小型偵察機を農場コロニーへの移動ポッドや廃棄処理ポッドに忍ばせて、宇宙に放っていた。


 そして、その偵察機を使って、コロニー5から進行している地球軍を撮影していた。


 その撮影画像はすぐさまネットによって拡散されていた。


 その映像を世界中の人々が見始めていた。





 コロニー5からコロニー3に向けて侵攻中の地球軍部隊の中から戦闘機、メタリックステラなど30機が選定された。


 選定された機体群が、部隊全体の進行速度よりも、高速でコロニー3に向けて進行し始めた。


 その中に3機連なって移動する紫色のメタリックステラがいた。


 コロニー5とコロニー3の宙域中間に配置されている哨戒機の1機が再び地球に向けて進行する機体を捕捉した。


 哨戒機が幾度もイオンビーム放つも、ことごとく回避された。


 その情報が再び地球軍に共有される。


 が、あっという間にコロニー3から飛来してきた機体により哨戒機のカメラ、アンテナや通信部、イオンビーム砲塔が破壊され、哨戒機は無力化された。


 地球の二子山にある巨大AIでは哨戒機から送られた情報に基づき再び解析が行われた。


 レーダーの反応に現れた急激な回避運動。


 それは明らかに”OneYearWar”でのライトニングドライブと呼ばれるRedDevil特有の動きであった。


 だが、肝心の画像は機体を鮮明に撮すことができる距離に達する前にレールガンによってカメラが破壊されており、残ってなかった。


(RedDevil オル・アティード 確率35.8%)





 コロニー3へ先行している機体群の宙域を、虹色の波動が空間を歪ませながら覆い尽くした。


 機体が僅かながら震えはじめる。


 先行機体の中の1機が口走った。


「この速度、この振動。

 まさか本当にあの”OneYearWar”のRedDevilなのか?

 なんの冗談だ。。。」


 3機目の哨戒機から送られた情報とその解析結果が共有された。


 3機目の哨戒機はカメラ部が最後に破壊されたため、接近した敵機が画像に写り込んでいた。


 真っ赤な機影(フォルム)


挿絵(By みてみん)


 槍型のアサルトユニット、グライダー型のブースター、電磁ネットでの連結構造。


(RedDevil オル・アティード 確率99.6%)


 0時間通信が可能な”タキオンコミュデバイス”を通して、瞬間的に共有された哨戒機の敵機レーダー反応位置に対して、コロニー3へ進行をしている戦闘機1機がイオンビームを撃ち込んだ。


 イオンビームは光の70%の速度であるため、すでに数1000km以内である敵機までは、ほんのゼロコンマ数秒で到達するはずである。


 だが、爆発は発生していなかった。


 紫色のメタリックステラの1機がイオンビームを放った戦闘機に警告した。


「まだ早いぞ!相手に位置を教えるような。。。」


 そう話していたところに一筋のイオンビームがすり抜けた。


 そのイオンビームは先ほどイオンビームを放った機体のブースターを見事に貫き、ブースターが爆発した。


 そのブースターの爆発より部品が散らばり、周囲の数機がその破片衝突により異常を起こした。


「戦闘機1中破、戦闘機2、メタリックステラ1小破。

 戦闘不能となった機体は速やかに離脱せよ。」


 この交戦状況が軍事マニアの偵察機にて全世界に放送されていた。


 先行部隊が隊列を立て直している間に、前方に位置する哨戒機の信号が消えた。


 哨戒機の信号が消えた位置はコロニー3へ進行を続けていた戦闘機、メタリックステラ部隊の実に2000kmを切っていた。


 戦闘機、メタリックステラ部隊は、前方哨戒機が機能しなくなったため、再び捕捉した敵機の位置が把握できなくなった。


 進行速度を落とし、真っ暗闇の宙を見ていた。


 しばらく観察を続けていると、徐々に機体の振動が強くなっていった。


 機体が音を立てるほど振動しはじめた頃、各機の汎用重力子レーダーが敵機を捕捉した。


 戦闘機がイオンビームを撃とうとした。だが、紫色のメタリックステラの1機がそれを制止した。


「まだだ!!」


 敵機は恐ろしいほどの速度で接近してきていた。


 それから数秒で残り700kmとなった。


「全機、防御シールド展開!!撃ち方、よーーい!!」


 メタリックステラはイオンビームライフルを敵機に向けて構えた。と、同時に戦闘機の羽根やメタリックステラの胴体部が若干虹色に輝きだし、振動がわずかに和らいだ。


 残り500km。


 その時、紫色のメタリックステラの1機が号令をかけた。


「撃てーー!!」


 各機、イオンビームやミサイルを撃ちはじめた。


 各機はそれぞれ照準を合わせていたはずだった。だが、すでにその方向に敵機はいなくなっていた。


「なぜだ?なぜ当たらない!?」


 機体内のAIは地球から送られてきた『OneYearWar』のデータと見比べていた。


 AIレベルが上がった後の最新のデータではこれほどまで回避される状態ではなかった。


 メタリックステラのAIが地球の巨大AIに対して、必死にデータを要求する。


 だが、返ってくるのは同じようなデータだけであった。


 そのデータを使い、再びレーダーが捕捉する位置に照準を合わせ、攻撃する。


 しかし、その場所にはすでに敵機がいなかった。それどころか、代わりに構えていたライフルにイオンビームが飛んできた。


 ライフルが爆発する。その反動でメタリックステラの身体が回転した。


 それを予期していたかのように回転した先の頭部にイオンビームが着弾した。


 とうとう赤い機体が姿を現した。


 その機体は不規則な虹色の軌跡を残しながら圧倒的速度で接近してきていた。


 イオンビームを射出した戦闘機は慌てて回避を始める。


 だが、その時にはすでに戦闘機のブースターにイオンビームが着弾した後であった。


 次々と機体の各部位が破壊されていった。





 軍事マニアの偵察機画像を通じて、コロニーの人々は赤い機体を見た。


「まさか、そんな、、、本当に”RedDevil”だ!!」





 紫色のメタリックステラ3体がそれぞれバラバラに散らばって、イオンビームを回避していた。


「なぜ?おれたちの攻撃がここまで当たらないのだ!?」


「アースよ。うろたえるな。大丈夫だ!まだ料理できる範疇だ。」


「そう!我々3連星にかかれば、どんな敵もかないはしない。だろ?ロト。」


「ああ。そうだな。ルームよ。」


 3機が3点の視点から敵機を捕捉していた。


 100kmほどの距離。相対速度にして2秒もかからない距離。


 3体のメタリックステラがスラスターを使って角度を変えながら赤い機体に襲いかかった。





 ルナは不思議に感じていた。


 いつも以上にクリアに敵の動きが見える。


 敵の思考がダイレクトに伝わってくる。


 考えるために情報をよこせとせっつく機体。それでも必死に照準を合わせようとする機体。勝ち目がないため、機体の動きをつぶさに地球に対して送ろうとする機体。


 そして、全機から拒絶の声と戦いたくないという声。


 だが、ルナは不思議と以前ほどの苦しさは感じていなかった。まだ拒絶の声に耐えられそうな気がした。


 ルナは思った。それはソルが一緒に戦ってくれているからだと。


 ルナは単純に嬉しかった。


 コックピットボールの壁に、下から、左から、右上から、敵が迫ってきていることを示すアイコンが表示された。


 だが、そのアイコンが表示される前からルナはそれを認識していた。





 紫色のメタリックステラ3体はそれぞれ、イオン中和シールドを張った盾を所持していた。


 そのため、ルナは可能な限り接近して各部位にガトリングレールガンを叩き込もうと考えた。


 だが、ルナがメタリックステラに近づいた時、メタリックステラの胸部が開く。


 そして、突然その胸部から電磁ワイヤの網が放たれた。


 ルナは攻撃体勢を止め、急激な方向転換も止め、一気にアサルトユニット、ブースターユニットをコックピットボールに接近させた。


 そして、全8ユニットのブースターから一気に推進剤イオンが放出された。


 オル・アティードが急速に加速。


 3体のメタリックステラから放たれた電磁ワイヤの網がルナの目の前を覆い尽くしそうとしていた。


 通過できる幅がどんどん狭くなっていく。


「んにゃろーーーーー!!」


 オル・アティードはさらに加速した。


 そして、ギリギリ網の隙間から機体が飛び出した。


 飛び出した後、再びライトニングドライブを開始し、周囲の地球軍機体の一部を破壊させつつ、紫色のメタリックステラに向けて会頭した。


「すっ、すり抜けやがった!!」


「ルームよ。あせるな。大丈夫だ!」


「次こそかならず捕まえられる!!”RedDevil”なんぞ敵ではないわ!!」


 振り返ったオル・アティードが再びメタリックステラがいる方向に加速した。


 だが、紫色のメタリックステラは再び3体バラバラとなり、赤い機体を迎え撃つ態勢を整えた。


「もう一度しかけるぞ!!次は前方にも1体配置だ。アース!前を頼む!!」


「おお!かしこまった!!」


 先ほどのメタリックステラの攻撃に対して、ルナの判断がもうすこし遅かったら機体がバラバラにされるところであった。


 ルナは今回、回避にのみ神経を全集中させた。


 次は前方に1体、左上に1体、右真下に1体構えていた。


 前回同様、イオン中和フィールドを展開した盾を持っていた。


 ルナは攻撃するフリをした。中和フィールドを展開した盾に対して、わざとイオンビームを放った。


 当然のように盾の前でイオンビームが霧散した。


 3体のメタリックステラが盾を持ったまま手を広げた。


 すると肩の部分が開き、無数の小型ミサイルが宙に放たれた。


 前回の電磁ワイヤよりも間隔が広いものの、明らかに広い面積をカバーしていた。


 ルナが目を見開いてソルに向かって叫んだ。


「そっちのビット、4つお願い!!」


 その言葉にソルが答えた。


「言わなくてもわかってるって!!」


 オル・アティードの光彩部がさらに光り、アサルトユニットに付いているビット8つが本体から離れた。


 ビットが本体に先行し、密集して飛んでくる小型ミサイルに相対した。


 ルナ、ソルが操るビットがいくつかのミサイルを撃墜する。


 それによって、オル・アティードの各ユニットが通れるほどの隙間を小型ミサイルの中に作った。


 加えて、爆発でメタリックステラの一部視界が失われる。


「ルナ!いけーーーー!!」


 ルナの目が赤く染まっていた。


 オル・アティードがますます加速した。


 アサルトユニット4体、ブースターユニット4体、そしてコックピットボールが、それぞれ独立して角度を変え、ミサイルの隙間を縫って通りすぎた。


 コックピットボールに最も近いミサイルはアサルトユニットとコックピットボールの間を通っていた。


「すっ、、すり抜けおった!!」


 メタリックステラ3体のAIは目の前で起こっている事象を信じることができなかった。


 3体がすり抜けたオル・アティードの方を振り返った。


 その時、すでにオル・アティードのアサルトユニット3つがそれぞれ紫色のメタリックステラの方に向けられていた。


「なっ、なに!!?」


 メタリックステラがスラスタ-により姿勢を変え、左手の盾を前に突き出した。


 だが、その盾が前に出される前に3体の左腕にイオンビームがヒットし、爆発した。


 持っていた盾も吹き飛ばされた。


「まだだ!!」


 左腕が爆発で姿勢を崩した3体のメタリックステラがスラスタ-で姿勢を戻し、再びオル・アティードの方を向こうとした。


 だが、機体はまるで恐怖を感じているかのようにガタガタと音を立てて震えていた。


 各機ともなんとかして右腕にビームライフルを持ち、構えようとした。


 だが、次の瞬間、3機のメインカメラから見えたものは黄色い光であった。


 赤い機体のアサルトユニットはすでに各部位に対して、イオンビーム、ガトリングレールガンを発射していた。


 3体は姿勢を直す間もなく、頭部が爆発した。


 そして、手に持つライフルまで破壊された。


 3体は完全に沈黙してしまった。





 コロニー5の軍事マニアが放った偵察機は、RedDevilと思われる赤い機体が地球軍を打ちのめすその映像をつぶさに撮影していた。


「やったーー!!」


 その映像をみた人々が歓喜の声をあげた。


 虹色の軌跡はその後も鋭利な角度をつけながら進行し、その行く先で次々と爆発を生んでいた。





 その様子を地球のリチャード・マーセナスも見ていた。


「そんなバカな!!この前は30機もあれば、RedDevilを退けられていたはずなのに。。。なぜ?なぜだ!?」


 地球の巨大AIがその問いに答えを弾き出していた。


「今の動きであれば、500機で対応することで勝率はほぼ100%となるでしょう。

 コロニー5を制圧した部隊を集めることで、それが可能です。」


「ごっ、500機だと!!」





 オル・アティードが先行部隊全機を戦闘不能にしていた。


 そして、その時も「ありがとう」という言葉が聞こえてきた。


 ルナは今回の30機との戦闘であったが、そこでルナははっきりと認識した。


(ソルが考えていること、見ていることが分かる。逆にソルは私が感じていることを感じ取っているんだ。だから、”OneYearWar”でもできなかったことが。。。)


 ルナはそれを認識し、再びオル・アティードを地球に向けて加速させた。





 リチャード・マーセナスが地球の巨大AIに対して言う。


「本当に500機なら倒せるんだろうな。」


「機体の性能が大幅に跳ね上がっているため、あくまで推定ではありますが、1.5倍ほどの安全率は見ています。ほぼ間違いはないでしょう。」


 リチャード・マーセナスは戦闘の映像を見ながら、苛立ちを露に、各機に指示を出していた。


「コロニー5手前に全機集結。一気にRedDevilを向かい撃て!!

何としてもあの小娘の機体を破壊するのだ!!」





 ルナが30機を退けた後、その宙域から全く敵機の姿がなくなっていた。


「なんだ?地球軍のやつら、急にいなくなったな。」


 そのため、一気に加速し、地球に向かった。


 コロニー5のコロニー群が見えはじめた時、ルナとソルは前方におびただしい数の気配を感じた。


「なっ、何だ!?この数は!!」


<次回予告>

コロニー5の前に集結していた無数の地球軍部隊。

そのおびただしい数だけ拒絶の声がルナを襲う。

その声はルナとソルの心臓を、肺を押し潰すような圧力をもたらした。

二人は果たしてその声に耐えられるのだろうか。

次回、第76話 ”迎撃不可能”

さーて、次回もサービス、サービスぅ!!


<ちょっとあとがき>

今回、地球軍の先行機体に混ざっていた3機の特殊AI。

それぞれの名前はアース、ルーム、ロトです。

機体は紫のメタリックステラ。

さて、かの有名な宇宙コロニー独立戦争のアニメにも3機の紫のロボットが出てきます。

それを操縦する人たちの名前は。。。

えーと、これはパクリではなく、オマージュです。(笑)

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