第73話 : なんてことしやがる!!
<前回のあらすじ>
地球軍がコロニー1を陥落させ、次にコロニー5に戦場を移した。
コロニー5軍は様々な戦術を展開するも、すでに”OneYearWar”で試されたような戦術であり、地球の高性能AIに突破されてしまった。
コロニー5軍は敗戦必至状態となるが、最高指揮官が人間であるため、降伏をせず、戦い続けた。
その時、地球軍の戦艦から数10機の戦闘機が飛び出し、コロニー5軍に突進しだしたのだった。
コロニー5軍に対して、地球軍はあと僅かで旗艦に届くまで押し込んでいた。
その時、前線の機体より後方の戦艦から数10機の戦闘機が飛び出し、ブースター全開でコロニー5軍に向けて前進してきた。
その時、リチャード・マーセナスが地球軍の前線部隊各機に指示を出した。
「増援戦闘機をプライオリティ最高位として死守するのだ!!」
その指示を受けたAIが後方から近づいてくる戦闘機を確認した。
その戦闘機の中には人間の生体反応と、その反応の横には地球人のIDが書かれていた。
AI戦闘機は即座に後方から迫る戦闘機をカバーするように動き出した。
何かを感じ取ったコロニー5軍総督が指示を出す。
「戦闘機だ!前進してくる戦闘機を落とせ!!」
コロニー5軍が戦闘機に向けてイオンビームやレールガンを放とうとした。
しかし、次の瞬間、コロニー5軍のAIが向かってくる戦闘機内に人間が入っていることを察知した。
AIが再度総督に確認する。
「戦闘機内に人体反応あり。撃ち落としてよろしいですか?」
「なに?人間だと?」
どんどん近づいてくる戦闘機群。
総督は約1秒躊躇した後、判断を下した。
「戦闘機を、、、撃ち落とせ!撃ち落とすんだ!!」
コロニー5軍が直進してくる戦闘機に対して弾幕を作った。
「よし!できた!!」
ソルが人差し指を伸ばして右手を振り上げた。
「おっねがいしまーーーーーす!!!」
ソルが右手を振り下ろした。
全員が機体に注目した。
慌ただしく様々な音がしていた作業場が静まり返った。
。。。。。。。数秒の沈黙。機体は微動だにしない。
重い空気に耐えかねて、りょーたろが口を開いた。
「ん?なんもおこんねーぞ。。。」
技師たちも不安そうに機体を見たり、ソルの方を見たりしていた。
しかし、ソルは顔色も変えず、じっと機体を見ていた。
すると電磁ネットユニットから充電されるような高音が鳴り出した。
「そろそろだ!」
ソルが声を上げたかと思うとアサルトユニット、ブースターユニットとコックピットボールが電磁ネットで繋がり、浮き上がった。
全長50mのオル・アティードが起動完了した。
「おおーー!!」
技師たちが歓声を上げ、アンドロイドは拍手をした。
機体の横にはコックピットブースが用意されており、そこにはタキオンコミュデバイスが設置されていた。
コックピットブースが開く。
りょーたろがソルの横に来て、二人がルナを見た。そして、ソルがルナに言った。
「ルナ、準備はいいか?」
ルナがソルとりょーたろを見た。
「うん。」
ルナが頷き、カチューシャのようなデバイス、JAM-Unitを着け、コックピットブースに移動しはじめた。
「入ってくるな!!入ってくるな!!入ってくるな!!」
ルナはAIに拒絶される声が聞こえはじめた。
ルナは強く目を瞑り、しゃがみこんだ。
「おい!ルナ!?大丈夫か?」
ソルがルナの方に駆け寄った。
ルナは額に汗をかき、顔色が青白くなり、息切れをしていた。
「私が。。やらないと。。。」
ルナは駆け寄るソルとりょーたろを制止して、立ち上がった。
すると、ルナの身体がブルッと震えた。
コロニー5軍の機体が見る映像が、オル・アティードを通じて、ルナに流れ込んだのだった。
後方からコロニー5軍に向けて直進する戦闘機。
その戦闘機が次々と落とされる。
だが、1つの戦闘機が、周囲の戦闘機の爆発の間隙を縫い、遂に旗艦の中腹部分に突入した。
次の瞬間。
旗艦が青白い光に包まれた。
光の球は一気に膨張し、周囲の戦艦数機までも巻き込んだ。
ゼロコンマ数秒後、かん高い叫び声のような音とすさまじい重低音が鳴り響いた。
それを見ていたカメラ全てがハレーションを起こし、全面真っ白になった。
真っ白の画像にノイズが走った。
数秒後、ゆっくりとカメラの映像が元に戻った。
先ほどまで映っていた旗艦と周囲の戦艦数機が跡形もなく消滅しており、さらにその周囲の戦艦や戦闘機、メタリックステラが飛び散る破片によって粉砕されていた。
ルナにはその映像が見えていた。
AIの「戦いたくない」という声も絶え間なく聞こえていた。
地球軍の自爆戦闘機に乗っていた人間たちの悲痛な声。
コロニー5軍総督の声。
コロニーや地球の人々のお互いを憎む声。
死ぬ間際に浮かべた家族の顔、抱き上げる娘の笑顔。
家族への想い。
ルナの目からは涙が溢れていた。
ルナの目から生気がなくなり、意識が遠のいていた。
ソルとりょーたろにもJAM-Unitを通して、その映像が見えていた。
りょーたろが映像を見て言った。
「S2爆弾だ。。。あいつら国際条約破りやがった!っていうか、人か?乗ってたのは?なんてことしやがる!!」
ソルは、人々の持つ互いへの憎悪、分かり合おうとしない心をルナが感じ取り、ルナ自身が今まで感じてきたものとの大きな違いを、無力感を感じていることが伝わってきた。
「人は、人はなぜ分かり合おうとしないの。。。なんで、、こんなに人と人が。。。」
ソルが、涙を流しながら呆然と立ちすくむルナを強く抱き締めた。
「お前のやってきたことは無駄なんかじゃない。
おれが分かっている。
まだその輪が小さいものだとしてもいいんだ。
いつか分かり合える日が必ず来る。
それまでおれも諦めない。
だから、お前も諦めるな。諦めるな!!」
その時、ルナにソルの体験が流れ込んできた。
<次回予告>
起動した深紅の機体。
それに搭乗しようとJAM-Unitを装着したルナに襲いかかるAIからの拒絶の声。
支えるソル。
ルナはその時ソルの苦悩の過去を知る。
ルナは搭乗することができるのか?
次回、第74話 ”ルナ小林、ソル柊、オル・アティード、出る!!”
(あれ?やっぱり出撃するのね。。。(笑))
さーて、次回もサービス、サービスぅ!!




