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タキオンの矢  作者: 友枝 哲
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第72話 : 全機、玉砕の覚悟で臨め!!

<前回のあらすじ>

ソルの開発した0時間通信機器”タキオンコミュデバイス”の技術を使い、コロニーに侵攻を開始させた地球議会長リチャード・マーセナス。

地球軍は圧倒的戦力でコロニー1を陥落させ、続いてコロニー5へと侵攻を開始。

コロニー5が落ちると次に近いのは、ソルたちのコロニー3となる。

それを見て、ソルの祖父、柊レイはルナに提案する。

”OneYearWar”で使用される”RedDevil”の機体を作り、それを操縦して、地球の二子山総合研究所を破壊することを。

悩んだ末、ルナはそれを受ける決心をした。

だが、まだ機体は組み立て途中であった。タイムリミットはコロニー5陥落まで。

技師たちは難色を示していたが、ソル、りょーたろが機体組み立てを手伝いはじめ、希望が見えはじめた。

その時、コロニー5は圧倒的戦力の地球軍にみるみる侵攻されていたのだった。


 

 地球軍に押され始めた戦況を見て、コロニー5の総督が指示を出した。


太陽の火(ゾンヴール)起動!!」


 コロニー5軍の機体が一気に撤収しはじめた。


 地球軍の機体が、撤収しだしたコロニー5軍の機体を追走しだした。


 だが、次の瞬間。


 追走する地球軍の機体が端から爆発し始めた。


 その爆発が横の機体に、また横の機体にスライドしていく。


 その爆発を地球軍の機体たちが情報共有していた。


 爆発した機体のログから、急激に機体が熱せられ、一部がドロッと溶けた後、ジェネレータの熱暴走により爆発していたことが分かった。


 この情報が即座に地球に共有され、さらに解析が進められた。


 地球の巨大AIは各機体のサイドカメラで撮られた画像を解析。


 その一部にメタリックステラの機体表面において、浅い角度で入射する光がわずかに全反射する映像を見つけた。


 加えて、この現象と同じようなものがすでに”OneYearWar”に記録されており、それは多数のミラーユニットからの太陽光反射を使った兵器であった。


 それらの情報を合わせ、地球のAIが原因を確定させた。


「ミラーユニットによる太陽光収束兵器確定。ミラーユニットの位置検出開始。」


 地球のAIが、メタリックステラの位置、メタリックステラの装甲角度、全反射する光の角度からミラーユニットの場所を算出しはじめた。


 この方法によって、次々とミラーユニットの位置を特定していった。


 巨大AIにとっては全く造作もない処理だった。


 処理の間も加熱爆発は続いていたが、地球のAIによって算出された結果が、タキオンコミュデバイスにより0時間で、メタリックステラに伝達された。





 情報を受け取ったメタリックステラが、算出されたミラーユニットの位置に対してイオンビームを何発も射出しはじめた。


 外から見ると、メタリックステラがとんでもない方向にイオンビームを射出する、そんな状況だった。


 だが、イオンビームが射出された先の遠方、何もなさそうな位置で突然爆発が発生した。


 そして、続けてコロニーから離れた様々な場所で爆発が発生した。


 後方旗艦に搭乗しているコロニー5軍総督がその様子を見て、指示を出した。


「まただ、、、どうなってる!?

 敵陣前方の戦闘機、メタリックステラは対応を後回し。

 後方にてゾンヴールミラーユニットを攻撃している機体を優先して破壊しろ!!

 ゾンヴールミラーユニット、随時回避移動!!」


 コロニー5軍の戦闘機、メタリックステラはゾンヴールミラーユニットを攻撃する機体をイオンビームで狙いはじめた。


 ミラーユニットが再び光を収束させ、地球軍の機体を爆発させだした。


 爆発の後、再び地球の巨大AIがミラーユニットの位置を算出していた。


 メタリックステラがミラーユニットの位置に向けてイオンビームを発射させていた。


 だが、イオンビームの進む先で爆発はそれほど多くは起きなかった。


 コロニー5軍総督がニヤリとした。


「ふふふ。我々の戦術が一枚上手のようであるな。」


 しかし、その状況も長くは続かなかった。地球軍のメタリックステラが爆発する間にも、地球の巨大AIはすぐにミラーユニットの回避アルゴリズムを解析した。


 その解析結果が即座にメタリックステラに伝達された。


 メタリックステラは照準を若干ずらし、イオンビームを射出した。


 すると、再びイオンビームの進行先で次々と爆発が発生した。


「くっ、、、なっ、、、まるで全ての機体に超高性能AIが搭載されているような、、、こんなことが。。。」


 コロニー5軍は成す術がなくなり、次々とミラーユニットを破壊され続けた。


 コロニー5軍総督がAIからの報告を受ける。


「ゾンヴール、あと5機破壊されると加熱誘爆限界を下回ります。」


 報告を受けた総督は次の判断を下した。


「ええい!もうよい!!ゾンヴールを停止させろ。

 全機、前進!!コロニーへの侵入を許すな!!」


 この判断は明らかにAIが下すそれとは異なるものであった。


 AIは合理的な判断を下す。


 敗北が決定し、旗艦が破壊される可能性が高くなった場合、降伏の判断を下す。


 しかし、人間は時にその判断を下せない。


 プライド、怒り、憎悪。それらが判断を曇らせるからだ。


「全機、玉砕の覚悟で臨め!!」





 りょーたろと技師、アンドロイドが最後のブースターユニットとコックピットユニットの電磁ネットの連動セッティングを行っていた。


 ソルは駆動系プログラミングを行っていた。


 そして、りょーたろが声を上げた。


「よし!これで機体は完成だ!!」


 ソルが空中で指を動かしながら声を出した。

「もうちょっち、、、もうちょっち、、、」


 ソルが、AIサポートを巧みに使いながら、常人ではあり得ないほどの速度でコーディングをしていた。


 技師、アンドロイドですらもその鬼のようなコーディングぶりを眺める他なかった。


 技師の口から心の声が漏れた。


「この量、、間に合うのか。」





 コロニー5軍の戦艦がまた1つ爆発した。依然として圧倒的な地球軍優勢に変わりはなかった。


 次々と戦闘機、メタリックステラも落とされていく。


 コロニー5軍の敗退。誰の目からも明らかであった。


 それでもコロニー5の総督は戦うことを止めなかった。


 総督は艦首の座席に座り、拳を握りしめていた。


「おのれ!マーセナスめ!!武力での現状変更なぞ、絶対に許さんぞ!!」


 総督が手を前にかざした。


「全機、防衛ラインを死守せよ!!」





 リチャード・マーセナスは地球軍艦隊からの映像を見ていた。


「やはりこうなったか。コロニー5の総督のやりそうなことよ。

 手を打っておいてよかった。

 これ以上、こちらの被害が大きくなるのはかなわんからな。フフッ。」


 リチャード・マーセナスは不敵な笑みを浮かべていた。


 そこに|B-DAI-N.Co.《ビーダイエヌコ》のトミー社長が地球軍指令室に入ってきた。


「マーセナス議長、これはどういうことですか?なぜ我々のAIが。。。」


 地球軍のアンドロイドがトミー社長を取り押さえようとする。


 それを|B-DAI-N.Co.《ビーダイエヌコ》のアンドロイドが阻止しようとした。


 だが、それでも地球軍のアンドロイドの方が多いため、結局、トミー社長が取り押さえられた。


 「うおー、何をする!やめろ!!」


 リチャード・マーセナスは、腕を取られて姿勢を低くしたトミー社長を、上から見下ろしながら言った。


「なぜ?なぜだと?私がなぜ地球の貴重な資本をお前の会社に投資したと思っている?この時だ!この時を待っていたからだ!!」


「私はこんなことのためにAIを開発した訳じゃ。。。」


「だまれ!!それはお前たちの想像力が足りないだけだ。

 あのガキと言い、お前ら科学者というやつは、本当にどこまでもおめでたいやつらよ。」


「くっ、何を!!」


 リチャード・マーセナスが視線を逸らし、アンドロイドに指示を出した。


「はやくこいつを摘まみ出せ!今、大事な局面なのだ!!」


 アンドロイドがトミー社長を指令室から追い出そうと動き出した。揉み合っているアンドロイドも共に部屋から出ていった。


 その様子を横目に、リチャード・マーセナスは地球軍総司令に向けて言った。


「手筈は整えているだろうな?」


「はっ!それは抜かりなく。。。」


 リチャード・マーセナスは再び不敵な笑みを浮かべた。


 横に立っている地球軍総司令はリチャード・マーセナスのその様子を見て、恐怖を覚えた。





 コロニー5軍に対して、地球軍はあと僅かで旗艦に届くまで押し込んでいた。


 その時、前線の機体より後方の戦艦から数10機の戦闘機が飛び出し、ブースター全開でコロニー5軍に向けて前進してきた。


 その時、リチャード・マーセナスが地球軍の前線部隊各機に指示を出した。


「増援戦闘機をプライオリティ最高位として死守するのだ!!」


<次回予告>

最後の一機まで戦う覚悟を示したコロニー5軍総督。

そのコロニー5軍に向け突撃を開始した数10機の戦闘機。

それを察知するコロニー5軍総督。

だが、その戦闘機から検出された信号は。。。

次回、第73話 ”なんてことしやがる!!”

さーて、次回もサービス、サービスぅ!!


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