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タキオンの矢  作者: 友枝 哲
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第50話 : Go to the next stage!

<前回のあらすじ>

ルナは”OneYearWar”世界大会決勝で戦っていた。

開始直後から単騎で36機の敵機を撃墜。さらに追加で迫ってきた12機の戦闘機をも撃破した。

だが、戦闘機を撃破した地点。そこはメタリックステラ50機が球状に包囲網を作っていた位置だった。

一方、ソル、りょーたろは、自分達が築き上げた絆を破壊したマフィアUnion-Roswellに殴り込みをかけた。

屋敷の前で警備をしているアンドロイド20体ほどを破壊し、屋敷の中に入り込んだ。

屋敷の中では二人の襲撃情報を他のアンドロイド達がすでに受け取っており、無数のアンドロイドがレーザーガンを屋敷の入り口に向けて構えている状況だった。

メタリックステラに包囲されたルナは撃墜されてしまうのか?

アンドロイドに包囲されたソル、りょーたろはレーザーの餌食となってしまうのか?


 

 オル・アティードを中心として球状に配置されたメタリックステラは裕に50体を超えていた。


 後方の戦艦を指揮する艦長AIが言い放った。


「RedDevilよ、チェックメイトだ!!」


 ルナはビットをアサルトユニット、ブースターユニットに1つずつ付けた。


 そして、静かに目を瞑り、再び大きく見開いた。


 その瞳はそれまで以上に赤く染まっていた。


 ルナは目を見開いた瞬間、オル・アティードから虹色の波紋が一際強く全方位に向けて放たれた。


 ほぼ同時に艦長AIからメタリックステラに指示が下された。


「撃てー!」


 メタリックステラの震える腕で構えられたイオンビームライフルから一斉にイオンビームが放たれた。


 オル・アティードはイオンビームが来る軌跡を事前に予測し、全てのブースターを使い、鋭角に機体を動かしながらイオンビームを避けた。


 避けることのできない一部のイオンビームの方向にはビットから中和フィールドミサイルが放たれ、すぐに炸裂。そしてイオンビームを無効化していた。


 紙一重。


 その言葉通り、オル・アティードのアサルトユニット、ブースターユニットは電磁ネットにより連結されており、その間をイオンビームが横切ることもあった。


 オル・アティードはあり得ない角度に方向転換しながら何十というイオンビームをギリギリで避けつつ、反撃のレールガン、イオンビームを放っていた。


 その様子はまるで蝶がヒラヒラと羽ばたき、予測できない動きをみせるそれのようであった。


 そして、その羽ばたきと同時に虹色の波動が次々と周囲に広がっていった。


 オル・アティードから放たれた反撃のレールガン、イオンビームは相手メタリックステラの頭部やイオンビームライフルを撃ち抜き、反撃不可能に陥れていた。


 胸部ジェネレータにヒットするメタリックステラは爆発し、その周囲を巻き込む機体も複数あった。


 加えて、次々と襲いかかる虹色の波動によって、震えるメタリックステラの腕が仲間を誤射させることもあった。


 次々とオル・アティードを囲む周囲で爆発が起こり、それに伴って攻撃数が減っていった。


 艦長AIは信じられない光景を目の当たりにしていた。


(”RedDevil”撃退確率 : 99.99%)


 そう表示されたいた数字はものの数秒で見る見る下降していった。


 87.34%、62.18%、43.83%、、、


「これが、、、バタフライムーブ、、、というやつか。。。」




 屋敷に踏み入ったソル、りょーたろはホール全体に陣取っていたアンドロイドに包囲されていた。


 アンドロイドたちはレーザーガンをすでに構えていた。


 りょーたろがソルに向かって叫んだ。


「ソル!!来いっ!!」


 ソルが慌ててりょーたろの方に移動した。


 次の瞬間、りょーたろは上腕部に取り付けていた筒を外し、その筒から薄いシートを取り出した。


 りょーたろが体を回転させ、そのシートがりょーたろとソルを包み込んだ。


 アンドロイドたちは半透明のシート越しのりょーたろとソルを捉え、すばやくレーザーを放った。


 何十というレーザーがソルとりょーたろに向けて進行した。


 だが、ソルとりょーたろを包むシートに到達した瞬間、レーザーはベクトルを真反対に向けて再び移動を開始した。


 そのシートには熱による架橋促進機能、そして再帰性反射加工がなされていた。


 光を一瞬だけ進入方向に対して完全反射させるシートであった。


 全てのアンドロイドたちの腕やレーザーガンに再びレーザーが舞い戻り、レーザーガンと腕の一部が融解。アンドロイドは攻撃不可能に陥った。


 りょーたろとソルを囲んでいたシートは瞬間の反射を行った後にドロッと溶けた。


 ソルは一部溶けていない部分を使って、全面の溶けたシートを振り払った。


 そして、ソルとりょーたろは先端にラッパのような開いた口をした銃をアンドロイドに向けて構えた。


 アンドロイドたちは各々、反対側の手で脚部に格納されている小型の銃を取り出し、その銃を構えようとした。


 ソルとりょーたろの目が再び赤く染まると、二人のシャツに描かれた虹色の帯から波が放たれた。


 それと同時に二人が部屋の入り口付近にいたアンドロイドまで急速に接近した。


 アンドロイドの腕が震え、取り出した銃を構えるのに若干の遅れが生じた。


 ソルとりょーたろはラッパのようなその銃をアンドロイドに向けてアンドロイドたちの横を通りすぎた。


 周囲のアンドロイドから放たれた数発の銃弾が二人の軌跡を追うが、すでに過ぎ去った後に着弾した。


 二人は人が目で追えないほどのスピードで階段に向かい、そして階段を駆け上がった。途中に立っているアンドロイドの間をすり抜けつつ、再びラッパのような銃をアンドロイドに向けていた。


 二人は2階の廊下でもアンドロイドの間をすり抜け、二人が交差した。


 1階の奥間の前にいたアンドロイドが2階に上がった二人を銃で狙うため、広間に躍り出て、銃を構える。しかし、腕の震えから狙いが定まらない。


 二人は2階から同時にジャンプし、1階に着地するまでの間に身体を捻りながら、1階の広間に立つアンドロイドに銃を向けた。


 そして、りょーたろとソルが1階の広間に着地した。広間に立っているアンドロイドたちに背を向けて。


 すくっと二人が立ち上がり、クルっとアンドロイドの方に振り向いた。


 次の瞬間、全アンドロイドが、まるで糸が切れた操り人形のように、大きな音を立てて倒れた。


 二人のラッパ銃の銃口部にはMPUチップと回路を連結する配線を切り離すための電磁波照射ユニットが付いていた。


 それはソルが配電盤のチップ交換に使用している機器の強化バージョンであった。


 その信号を増幅させて、接近したアンドロイドに照射することで、アンドロイドのMPUチップを剥がしていたのだった。


 肩で息をしながらりょーたろが言った。


「うまくいったな。」


 二人は周囲にもう動くものがないことを確認して、思考で超筋繊維スーツのGearを落とした。


 虹色に光っていたスーツの帯が黒に戻った。


 ソルはまだまだ全然疲れていなさそうであったが、りょーたろはかなり汗もかき、息があがっていた。


 りょーたろは脚幅を広く取り、手を膝にあてて、前屈みに立っていた。


「りょーたろさん、大丈夫?」


「ああ。お前のこのパワードスーツ、こんなに体力消耗すんだな。」


「うん。あと、この思考共有ユニットは脳への負担も結構あるから。」


「そっか、なるほどな。それもきいてんだな。」


 りょーたろが息を整えて、立ち上がり、左手親指を奥間に向けて言った。


「ふう。よし! Go to the next stage!」


 ソルが少し心配そうに頷いた。


 二人の持つ銃に赤い表示が点滅していた。


 かなり強い電波照射に多量のエネルギーを使うため、あっという間にエネルギーを使いきっていた。


 二人はその銃をぽいっと捨てた。


 そして、二人が1階の奥間への扉へ歩いていった。





 オル・アティードがほぼ周囲のメタリックステラを撃墜して、再びある方向に加速を始めた。


 それは先ほどのメタリックステラによる球状包囲の指揮を取っていた艦長AI率いる戦艦部隊の方向であった。


「RedDevil。。。これほどまでとは!!」


 レーダー監視AIが叫ぶ。


「0202(まるふたまるふた)よりRedDevil接近!距離500!!」


「弾幕だ、弾幕を張れ!!」





 宙域の中央では戦闘機、メタリックステラ部隊の戦闘が繰り広げられていた。


 両国の戦力はほぼ拮抗しており、互いの機体の爆発の数も同程度であった。


 そして、中央宙域の爆発は、互いの戦艦が構えている位置までまだまだ到達してはいなかった。


 だが、RedDevilの進行する位置だけは例外であった。





 深紅の機体は、ヒラヒラとした蝶のような動きから再び稲妻のような動きになった。


 アサルトユニット、ブースターユニット各々に付いていたビットも本体から離れ、メタリックステラを球状包囲させていた戦艦に向かって進行しはじめた。


 一気に加速し始めた深紅の機体。


「いつも言っている!これくらいは弾幕とは言わないと!!」


 進行するその虹色の軌跡上には再び爆発が彩られはじめた。


「何故だ!?なぜ墜ちん?なぜ、当たらんのだ!!?」


 学習機能を備えているAIの行動決定アルゴリズムは刻一刻と変化をしているが、全てが失敗に終わっていた。


 ルナは弾幕を避けながら戦艦に向かって進行し、その途中にいる戦闘機やメタリックステラにイオンビームを、さらに奥にいる中型巡洋艦に対して、バンカーバスターミサイルを撃ち込んだ。


 オル・アティードの圧倒的速度。


 その速度を以てすれ違い様に撃ち込まれるミサイル。


 虹色の波動によってもたらされるAIの行動決定遅延。


 巡洋艦はミサイルを避けることなどできなかった。


 当然のように爆力反射装甲が作動する。だが、そこに次々と突き刺さるミサイル。


 中型巡洋艦は抵抗むなしく、爆発。


 そして、その爆発に巻き込まれる複数の戦闘機、メタリックステラ。


 中央の宙域で起こっているような小さい爆発とは明らかに規模の異なる爆発。その爆発に瞬間宙域全体が注目した。


「RedDevilが近づいて来た!こちらに増援を!!あああ!!」


 爆発音と共に、通信が途絶えた。


 狭い宙域であったため、旗艦からも巡洋艦の爆発が見えていた。





 ソルとりょーたろが扉を蹴破り、次の部屋に飛び込んだ。


 そこは奥の部屋に繋がる幅の広い通路のような部屋であった。


 そこにはそれまでの人型アンドロイドとは違い、先端に球体が取り付けられた四本の脚と、レーザ-やミサイルなどが取り付けられた二本の腕を持つ大型戦車ロボットが四体。そしてイオンクラフトにより浮上しているバイクサイズのドローン戦闘機が四体待ち構えていた。


 ソルとりょーたろはその戦車ロボット、ドローン戦闘機を見て、驚いた。


 思考でGearを急激に上げる。


(Gear3!!)


 二人の全身に負荷がかかる。


 りょーたろの身体から汗が吹き出しはじめる。


 りょーたろが顔をしかめながらぼやいた。


「クッ、、、マジかよ。。。もう軍隊じゃんかよ。」


 戦車ロボットのレーザーガトリングが回転を始めた。


 ドローン戦闘機もイオンクラフト独特の青い光、赤紫の光を機体の上下に灯しながら、小型ミサイルの発射口をパカッと開けた。


 ソルとりょーたろが一瞬目を合わせ、高速にサイドステップをした。


 二人がいた場所にレーザーと小型ミサイルが着弾し、爆発した。


 レーザーが二人の移動する軌跡を追って着弾した。


 着弾したレーザーは壁や装飾をドロッと溶かしていた。


 小型ミサイルも床や壁を破壊していた。


 破片が飛び散る中、二人は高速に移動しながら虹色の波動を放ち続けていた。


<次回予告>

待ち構えていた戦車、ドローン戦闘機部隊に対峙するソル、りょーたろ。

二人はどのようにこの状況を打破するのか?

そして、ルナこと ”RedDevil”は敵戦艦を次々と撃破する。

だが、目の前に一角獣を意味する”モノセロス”を操るヒューマンプレイヤーが姿を現す。

ルナは進行する先に何を見るのか?

次回、第51話 ”そろそろヤバイ頃あいだろ。”

さーて、次回もサービス、サービスぅ!!


<ちょっとだけあとがき>

りょーたろが貼ったバリア膜。ここに使われている再帰性反射加工という技術。

これはすでに今の世の中にもある技術です。

高速道路の看板などでも使われており、光を入った方向に反射する構造です。

ですが、レーザーの熱には普通耐えられない。

そこには熱硬化型材料、つまり熱に対して硬化が進む材料が使われ、次々と内部で再帰性反射構造が作られるというフィルムだったのです。

宇宙に出て、高温にさらされる人間が作った材料をうまく加工した防御シールドをりょーたろは作ったというものでした。

技術者の知識と二人のアイディアの勝利ですね。


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