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タキオンの矢  作者: 友枝 哲
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第45話 : そう簡単には切れそうにはない

<前話のあらすじ>

”OneYearWar”予選決勝を勝ち上がったルナ。

そして、ついにルナは両親と心を開いて話すことができ、決勝の舞台である地球に行くことができるようになった。

時を同じく、ソルは自分で作った0時間通信デバイス=タキオンコミュデバイスで土星衛星などにいる宇宙開拓士と会話していた。

宇宙開拓士は、コロニーに残した家族と今までまともに通信できていなかったが、このデバイスによって家族と遅延なく通信ができるようになっていたのだった。

宇宙開拓士たちからたくさんの感謝の言葉をもらい、ソルは生きている意味を少し感じていた。

そんな折り、どこかで深紅の機体が宇宙を駆け抜けていた。虹色の光を纏って。


 

 漆黒の闇の中、深紅の機体が稲妻のような軌跡を描いて動いていた。


 その回りには50機ほどの戦闘機、そして50機ほどのメタリックステラが配置されていた。


 その間を虹色に光る稲妻の軌跡が通り抜ける。


 そして、その軌跡に触れた15機ほどの戦闘機が爆発していた。


 そして、虹の波動が周囲の戦闘機やメタリックステラに降り注ぐ。


 波動を受けた戦闘機、メタリックステラが振動し始める。だが、戦闘機の振動はそれほど大きくない。


 周囲の戦闘機、メタリックステラが深紅の機体に対してイオンビームを放つ。


 イオンビームの射出精度はそれほど高くはないが、その代わりにそれほどディレイがない。


 続けて、ミサイルが戦闘機から連続的に発射される。


 深紅の機体がそれを避ける。だが、一発一発が徐々に機体の近いところを通り過ぎる。


 さらに戦闘機、メタリックステラからイオンビームが深紅の機体に何発も打ち込まれる。


 イオンビームはミサイル以上に深紅の機体に近くまで迫っていく。


 危機を感じたのか、深紅の機体がそれまで以上に加速する。


 虹色の軌跡に触れた戦闘機が破壊されていく。


 だが、同様に戦闘機も反撃。


 イオンビームが虹色の軌跡の先端に襲いかかる。


 そして、ついに戦闘機の放ったイオンビームが深紅の機体にヒット。


 しかし、それは中和フィールドに飲み込まれ、バチバチと音を立てて霧散する。


 そこに、メタリックステラがスラスターで機体角度を変えつつ、深紅の機体を追うようにイオンビームガンを構え、ビームを放つ。


 放たれたイオンビームは再び深紅の機体を捉える。が、霧散。


 それと同時に戦闘機が赤い機体を後ろから追いかけ、レールガンを射出。


 稲妻の軌跡がレールガン砲弾を避ける。


 が、連続的に打ち込まれたレールガンのうち、1発がブースターユニットにかすった。それによってブースターの推進材放射角度制御用ノズル板が1枚吹き飛んだ。


 その間にも戦闘機はどんどん機体数が減っていた。


 だが、ブースターの推進ノズル板を1枚失った深紅の機体の姿勢制御が僅かに不安定になった。


 周囲のメタリックステラ1体がそれを見逃さなかった。


「今度こそ!落とす!!」


 メタリックステラが深紅の機体の移動予想位置に対して再びイオンビームを放った。


 放たれたイオンビームは深紅の機体に再び命中。ビームの一部が霧散。


 しかし、中和フィールドが削られており、ビームの一部が深紅の装甲に到達。装甲に突き刺さった。


 そして、深紅の機体が意図しない方向に回転した。


 その回転する機体に次々とイオンビームが突き刺さる。


 そして、ついに青白い光を放ち、爆発した。


 爆発した際に戦闘機はすでに15機ほど、メタリックステラも20機ほどになっていた。





「ついにやったじゃないか!!」


 マーセナスがシミュレーションの結果を見て、満足そうな顔をしていた。


 制作担当者が答えた。


「はい。ヒューマンプレイヤーが放つ虹の波動を感知した時には、外部からの信号を拒絶するA(アンチ)T(テラー)F(フィールド)プログラムが作動します。

 これによって、ジャミングによるAIへの干渉を最大限低減させます。

 それでも人の持つ反射神経以上の反応速度は確保可能です。」


「だが、それでは他のAI機に負けるのではないのか?」


 マーセナスが心配になり、質問した。


「いえ。虹の波動が発生した際には他のAI機の処理速度も落ちます。

 我々のAIは、文字通り地球の広大な地の利を活かして、莫大な規模の量子スーパーコンピュータによって計算されています。

 そのため、拒絶プログラムによって、他の機体との連携を一部遮断したとしても、他の者が開発したAIより遥かに高い性能を引き出すことが可能となっています。

 つまり、この我々のAIが最強ということです。」


 B-DAI-N.Co(ビーダイエヌコ)の社長が嬉しそうな表情で付け加えた。


「正味な話、地球圏やコロニー圏の軍事用AIであっても今やこのAIには敵わないのですよ。

 一度地球軍とのシミュレーションを行いまして、それはすでに確認済みなんです。」


 マーセナスが言った。


「なるほど。それは大きな宣伝文句になりそうだな。

 ますます”OneYearWar”が地球圏の発展に貢献してくれそうだな。

 その内容に軍部が慌てふためく顔が思い浮かぶよ。」


 B-DAI-N Co.の社長も同意した。


「そうですね。一騎当千の”RedDevil”と言えども我々の敵ではなくなるでしょう。」


「はやく見てみたいものだな。」


 二人で笑いあっていた。





「まもなくコロニー7-315行き旅客機が出発となります。ご乗車のお客様は第12番ゲートにお急ぎください。」


 イオン推進エンジンの音が鳴り響いている。


 行き交う人々の頭上には『コロニー3-104 スペースポート』と表示されている。


 ルナが、直径約60cm、高さ約1mの荷物運搬用ロボットを連れて、出発ゲートの方に歩いていた。


 荷物運搬用ロボットがルナの少し後ろを付いて移動していた。


 ルナが止まると、そのロボットも止まった。ルナが振り向く。


「じゃあ、行ってくるね!」


 ルナの視線の先にはソル、りょーたろ、そしてルナの両親が立っていた。


「ああ、頑張ってこいよ!」


「ルナちゃん、応援してるぜ!」


 ソルが拳を突き出していた。りょーたろは親指を立ててGoodサインを胸の前に出していた。


 ソルが声を掛けた時、ふと思い出したように鞄から1つのデバイスを取り出した。


 ソルがルナの方に駆け寄り、そのデバイスを手渡した。


「そーだ、そーだ。これ。やるよ。まあ、その、地球との交信テスト用だ。」


 りょーたろが眉を上げて、ニヤケた。


「もうエンケラドスとのテストは終わってるけどな。」


 ソルがりょーたろの方に振り向き、言った。


「うるさいな。地球の磁場との関係で必要なテスト。。。」


「はいはい。分かった。分かった。」


 りょーたろが笑いながらソルの言い訳を遮った。


 ルナもりょーたろにつられて笑った。


「ありがとう。向こうで使ってみる。じゃあ、そろそろ行かないと。」


 ルナが両親の方を向いて言った。


「パパ、ママ。私、行ってくるね。」


「うん。頑張ってきなさい。」


「ルナちゃん、頑張るのよ。やるからには一番取ってきなさいよ。」


 ルナがうんと頷き、出発ゲートの方に歩いていった。


 出発ゲートにはすでに”OneYearWar”のスタッフがルナを待っていて、専用のスペースシップに案内されていた。


 ルナはみんなが見えなくなる前に再び振り向き、手を大きく上げて振っていた。


 その手は両親に向けてというよりも、ソルに向けて振られていた。


 ルナが見えなくなって、りょーたろがソルに言った。


「いっちゃったな。」


「うん。まあ、あいつなら大丈夫だろう。」


 ソルとりょーたろがスペースポートから出ようと振り向いた。


 ソルはルナの両親の方に歩いていった。


 周囲にはSPのアンドロイドが多数立っており、近づくソルを警戒していた。


 だが、レイモンド小林がアンドロイドを手で制した。


 アンドロイドがソルとレイモンド小林の間から身を引いた。


 ソルがルナの両親に頭を下げ、話しかけた。


「この前、振り込まれたお金はお返しします。

 別に彼女に干渉するなというなら、もう干渉しません。

 きっと、もう彼女は一人でも大丈夫だと思います。」


 少しの間をとって、レイモンド小林がソルに頭を下げた。美月小林もその動作に倣って頭を下げた。


「お金を返すというのなら返してくれても結構です。

 ですが、これからもルナの友人でいてやってほしい。

 これが本当に勝手な申し出ということは重々承知の上ですが。。。」


 ソルとりょーたろはルナの両親の対応に少し戸惑った。


 まさか頭を下げられるなんて想像もしてなかった。


 一息おいて、ソルがはにかみながら返した。


「頭を上げてください。

 えーと、さっきはああ言いましたけど、俺たちはもう仲間なんです。

 たぶん切れって言われてもそう簡単には切れそうにはないくらい。

 だよね、りょーたろさん。」


 りょーたろもルナの両親を見て言った。


「ええ。私たちにとって、彼女は本当にとっても良い仲間ですよ。」


 レイモンド小林が言った。


「ありがとう。」





 ルナがスペースシップに乗り込んだ。


 荷物運搬用ロボットが自動で収納スペースに入り、ルナが案内されるまま、座席に座った。


 その時、頭の中に悲鳴のような、悲しそうな声が木霊した。


「やめてください!」

「我々は関係ないのに!」

「私たちを壊さないで。。。」


 ルナは席に座ったまま周囲を見回した。


 だが、周囲では何も起こっていなかった。


 そして、その悲しそうな声はわずかな時間続いたが、すぐになくなった。


 ルナは何かいやな予感がしたが、そのまま席に座っていた。


「まもなく離陸体勢に入ります。シートベルトをお締めください。」


 スペースシップがコロニーからの射出ゲートに移動し始めた。





 スペースポートから移動してきたりょーたろの車がジャンク屋の前で止まった。


 ソルとりょーたろが自動車を降り、唖然と立ち尽くした。


 りょーたろのジャンク屋の中の棚や積み上げられていた部品類が壊されて、店がボロボロになっていた。


「なんなんだ、これ。」


<次回予告>

壊されたジャンク屋を見たソルとりょーたろ。

そこに親しいお婆ちゃんから入る連絡。

そして、ソルの怒りが限界を超える!!

次回、第46話 ”おれは、、、あいつらを許さない。”

さーて、次回もサービス、サービスぅ!!


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― 新着の感想 ―
 ゲームのAIの改良は反則とは言いづらいので、大会運営としてはアリなのかな。  そして、ゲーム技術の軍事転用。実際ありそうでこわい。アメ●カあたりがすでに実践投入とかしていそう。相手国人の文化やメンタ…
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