第43話 : 正体不明の男が現れまして。。。
<前話のあらすじ>
”OneYearWar”予選決勝に駒を進めたルナ。
ハッキングによる操作系ディレイに困惑させられたが、ソル、りょーたろの活躍からディレイが取り除かれ、ルナはライバル達を撃退することに成功。
そして、ルナは敵国の旗艦部隊にまで侵攻していた。
そこにはルナが共闘したことのあるアイザック少年もいたのだった。
E国はRedDevilに対して最大限の警戒として3個の艦隊を差し向けた。
にも関わらず、それらの艦隊はものの5分もせず、ほぼ壊滅状態に追い込まれていた。
下側(地球側)から侵攻して来たZ国部隊は、E国とほぼ同程度の被害を被りながら進撃を続けていた。
そして、別の角度から侵攻してきたRedDevilもどきの戦闘機は中型戦艦を一つ破壊していた。
ルナは地球側の戦闘宙域で一機の戦闘機が戦艦を破壊したのを見た。
ルナが思わず、笑みを浮かべて言った。
「やるな!私も負けないよ!!」
周囲が見渡せるほどの余裕をもってルナは進行していた。
戦艦の爆発をすり抜けたアイザック少年が高高度側から声を聞いた。
「やるな!私も負けないよ!!」
それが誰だかアイザック少年も気がついた。
アイザック少年は目を真っ赤にして、次の戦艦に攻め入り、なんとかそれを破壊することに成功した。
さらに次を狙おうと移動しはじめた。
だが、もうすでにいつも以上の集中で、彼は疲労困憊であった。
アイザック少年は激しく肩で息をしていた。
そして、一瞬、電気が走るような頭痛を感じた。脳への負荷がほぼピークに達していた。
前方のメタリックステラからの攻撃意思を感じたが、頭痛のせいでうまく機体を動かせなかった。
回避行動を行ったが、とうとう二門備え付けられているアサルトユニットの一つにレールガン砲弾が当たってしまった。
少年の機体が纏う虹色の光も疲労によって弱まっており、砲弾を曲げきれなかった。
「こんなところでやられてたまるかよ!!」
反撃に転じようとした。
だが、さらにレールガン砲弾がブースターユニットにまで当たった。
アイザック少年の目の前に赤い文字が浮かび上がった。
(Right Booster Malfunction!!)
「くそー!こんなところで!!」
再びメタリックステラや戦闘機からの攻撃の意思を感じ取った。
だが、右ブースター故障によって、思ったような回避行動が取れない。
ついに機体にミサイルを受けてしまった。
「うわーーー!!」
次々とミサイルが少年の操る機体に突き刺さり、少年の機体が粉々に爆発してしまった。
旗艦斜め下より進行してきた敵戦闘機の爆発をE国旗艦のAI艦長は見ていなかった。
それどころではなかった。
目下の最大の驚異はRedDevilだった。
次々と破壊される戦艦。
残存戦力でAIが最適な防衛作戦を立てようと懸命に計算していた。
AI艦長から算出される作戦。
戦艦や周囲の戦闘機、メタリックステラ各機も同様に計算していた。
AI艦長が伝えるまでもなく、各々が算出した作戦は同じものとなっていた。
戦艦、戦闘機、メタリックステラが作戦通り行動を取る。
「そうだ!それでよい!!」
計算結果が正しければ、RedDevilは破壊できるはず。だった。
だが、作戦を遂行していた機体はRedDevilを破壊するどころか、逆にことごとく破壊されていった。
「そんなはずは!!我々の計算は完璧なはずだ!!」
再び残存戦力での計算。
失敗。
「なぜだ!?なぜすり抜けてくる?なぜ、そんなことが。。。」
深紅の機体が近づいてくるにつれて、旗艦の振動が激しくなっていく。
「我々が震えているというのか?そ、そんなはずは。。。」
幾度となく行った残存戦力での作戦立案と失敗。そのループを繰り返すうちに、AIがこの異常な現象を学習し、ある結果を出した。
(Any elements are lack. If we can’t find any elements we will be destroyed. 99.9999%)
(いくつかの要素が欠けている。我々はそれを見つけない限り破壊されるだろう。99.9999%)
その結果が算出されたすぐ後、旗艦の目の前を虹色の軌跡が通過した。
旗艦のカタパルトデッキにパイルバンカーが撃ち込まれていた。
この旗艦の構造まで把握されていた。
カタパルトデッキの奥に配置されていたミサイル類に火が着いた。
ついに旗艦がRedDevil一機によって破壊されてしまったのだった。
あまりの異様さに静まり返っていた観客たちも旗艦の爆発でふと我に返った。
そして、会場中が拍手で沸き上がった。割れんばかりの拍手。
旗艦の爆発によって戦いに終止符が打たれた。
進行役の男性が集計されたポイントを読み上げていたが、その声は歓声に書き消されていた。
すでに結果を聞くまでもなかった。
ルナ、RedDevilの完全勝利であった。
ルナの元に他のプレイヤーやアイザック少年が駆け寄ってきた。
そして、彼らはルナを讃えていた。
敵チームだった者、”ケンドー・キーノウ”も”NPテイマー”も”空を歩く者”もルナの元に来て、握手をしたり、ルナもそれに応えて笑顔で相手を讃えていた。
ルナはこの瞬間が堪らなく好きだった。
戦いの中で何か分かり合えて、最後にはお互いを讃え合える。
このゲームだからなのか、それはルナには分からなかったが、この瞬間がルナをこのゲームに繋ぎ止めていた。
その様子をソルやりょーたろが、観客席のコックピットブースの横に立ち、見ていた。
二人は先日ルナが語っていた想いを垣間見た気がした。
VIP席からルナの父親がプレイヤー同士で讃え合うルナの姿を見ていた。
しばらくその姿を見て、斜め下を向き、口を紡ぎ、目頭を押さえていた。
ルナの父親の隣でシュレディンガーが手をなめて、顔を洗っていた。
進行役の女性が予選優勝のトロフィーをルナに渡した時、さらに割れんばかりの拍手がルナに送られた。
拍手で声がかき消されながらも進行役の男性が最後に締めの一言を言った。
「それでは、次回、決勝戦開催地、地球でお会いしましょう!!」
「かんぱーい!」
ソル、りょーたろ、そしてルナがF地区の飲み屋街にある店舗『鳥豪族』で祝杯を上げていた。
もちろん未成年のルナはジュースを手に持ち、ソルもノンアルコールのジュース ”さっちゃん氷結” を手に持っていた。
実質、りょーたろだけがお酒を飲んでいた。
りょーたろがキンキンに冷えた中ジョッキビールを飲み干した。
「くはー!!やっぱ、夏はこれに限るな!」
それを聞いて、ジュースを飲んだルナがソルに聞いた。
「ソルさん、大人じゃないの?お酒飲めばいいのに。もしかして私に遠慮している?」
「いや。。。いいんだよ、おれは。。」
話しにくそうなソルに代わって、りょーたろが説明した。
「こいつさ。酒、とことん弱いんだよ。以前知り合った最初の時、一杯やったんだけど、本当にビール一杯で酔いつぶれて暴れだしたんだ。もう大変だったんだよ。」
「しょうがないだろ。なんか遺伝っぽいんだ。じーちゃんも弱かったらしいし。」
「そこだけだぜ。おれがソルに勝てそうなのって。」
「なにゆってんの。部品の情報でりょーたろさんに勝てる人、見たことないよ。」
真面目に応えているソルを見て、りょーたろが照れ笑いをした。
「いやー、しっかし!ルナちゃん。本当にすげーよな。」
「あっ、そうそう!伝えないとだった!!
今回はお二人に本当、感謝してます!
あの変なディレイが続いてたら絶対に勝ててなかったと思うもん。」
ソルとりょーたろが一瞬見合った。やはりルナも二人の行為に気づいていたのだなと、お互いアイコンタクトで確認した。
そして、さっきまでと変わらない様子でソルが言った。
「だろー!結構無理したんだぜ!なあ、りょーたろさん!!」
「そうそう。ソルなんか、拳から血流してたしな。」
「えっ?ホントに。」
心配そうにルナがソルを見た。
ソルがさっと手を隠しながら返事をした。
「いや。まあ。ちょっとしたかすり傷だ。気にすんな。」
ソルがごまかすように話題を変えた。
「それよりも、あの後半。スゴかったな。観客みんな、マジで引いてたぜ。」
「あー。あれでしょ!!私もなんか驚いた。
なんだろう、あれ。
りょーたろさんやソルさんの気持ちがなんか伝わってきて、それからいつも以上に相手の動きが見えるというか、なんか自分で言うのもあれだけど、覚醒した感じだった。」
再度、りょーたろとソルが目を合わせた。
「まあ、そういうこともあるんだろ。
お前がそれだけ集中してたってことじゃねーか。」
「そうだな。あの土壇場でルナちゃん、何か吹っ切れたのかもね。」
「えー、ホントにそれだけなのかな?なんかそれだけじゃないような。。。」
「まあ、いいじゃんか。結果として勝ったんだし。
それよか、お前。おやじさんやおばさんに話つけないとじゃないか?
さすがに決勝で地球行くんだったら、ちゃんと親の許可もらわないとだろ?」
「。。。うん。そだよね。。。」
ルナの気持ちが突然重くなった。
「でもさ、ほら。今回、ルナちゃんの本気も絶対少しは伝わったと思うよ。
今日のルナちゃん見てたらさ、何か感じるものがあったと思うんだよね。」
「そうだぜ!それに、今日お前の親父さん。見に来てたぜ。
絶対伝わったと思う。
『Strike while the iron is hot!』。
今日帰ったら早速話してみろよ。」
「えっ?パパが!?そうなんだ。。。うん。分かった。話してみるよ。」
「そういや、決勝っていつなの?」
「三日後だから。。。二日後には地球に向けて出ないとだね。」
「そんなに日程近いの?」
「うん。ここが予選の最後だったみたい。」
「そっか。じゃあ、マジで早いとこ、話つけないとだな。」
「じゃ!まあ、食べたらすぐ送っていくよ。」
Union-Roswell邸にて、豪華な机を挟んで、白いスーツの男の前に三人の男たちがひれ伏していた。
レーザー銃を手にした白いスーツの男が震えながら、ひれ伏す三人を睨み付けて話した。
「あなたたちには本当に心底失望しましたよ。
少しの間、システムをハッキングするだけ。
そんなこともあなたたちはできないんですかね。」
三人の男たちが震えながら頭を床に擦り付けていた。
「本当に、本当に申し訳ありません。」
「あの時、どのくらいのクライアントの方々がどれほどの損失を出したか、あなたたちは分かっていますか?
私のお得意様がたからも『失望だ』なんて言われたんです。」
机の奥から白いスーツの男がひれ伏す三人の前に移動してきた。
そして、白いスーツの男が三人の前でしゃがんだ。
三人のうちの一人が弁明のため、頭を上げた。
「申し訳ありませんでした。ですが、正体不明の男が現れまして。。。」
頭を上げた男が恐る恐る”ある画像”を宙に映し出そうと何かを操作していた。
白いスーツの男が頭を上げた男の額に銃口を突きつけた。
「で?」
あからさまに白いスーツの男の機嫌が損なわれていくのが見て取れた。
「す、、すみませんでした。本当に。。。」
頭を上げた男はそれ以上、何も言えなかった。言葉の代わりに指を動かし、何かを押す動作を行った。
すると、額から血を流している『正体不明の男』が白いスーツの男の目の前に映しだされた。
白いスーツの男が、映像で映し出された男を見て、歯を食い縛った。
額をまだ床に付けていた男は、白いスーツの男の状況を把握できないまま、言葉を発した。
「その男がアジトを次々と。。。我々の部隊もかなりの損失を。。。」
ひれ伏したままの男がそう言った矢先に、白いスーツの男が逆上した。
「ぐあああーーー!!何が損失だぁーー!!!!」
白いスーツの男が叫びながら、頭を上げていた男を銃の持ち手の部分で何度も何度もぶん殴った。
「てめえらの損失なぞ知ったことか!!おれの顔にドロを塗りやがって!!てめーら雑魚がおれの顔に!!おれの顔を汚すなんざ、このクソがーー!!!」
殴られ続ける男は顔の皮膚が裂け、骨が折れ、血が吹き出した。
それでも白いスーツの男は殴ることをやめなかった。
となりの男たちはその叫び声と殴りつける音でようやく状況を把握して、震えながら頭を強く床に擦り付けた。
殴られた男は脳震とうを起こし、糸が切れたようにドカッと床に倒れ込んだ。
白いスーツは血飛沫で赤く染まっていた。それでも血飛沫を浴びた男は気が済まなかった。
「てめーらは」
「どうしてこうも」
「揃いも揃って」
「使えねーんだよ!」
「何回失敗したら」
「学習すんだよ!!!」
「このクソどもがぁーーー!!」
言葉の合間合間に、床に額を擦り付けていた男二人の頭をサッカーボールのように蹴り飛ばし、浮き上がった頭を再び銃で殴りつけた。
最初に”もの”と化した男から流れ出た血が水溜まりのようになった時、ようやく男の暴行が止まった。
男の指が一本、おかしな方向に曲がっていた。
男はその指を無理矢理元の方向に戻し、机の後ろに歩いていった。
机の前には血溜まりの中に三人だったものが横たわっていた。
赤いスーツの男が息を荒げてまだ宙に浮かんでいる『正体不明の男』を睨んだ。
「てめーだけは、てめーだけは、絶対に許さん!!覚悟するんだな!!」
そう言って赤いスーツの男が不気味に笑い出した。
<次回予告>
両親と話をするルナ。
その時、ソルとりょーたろはエンケラドスのタキオンコミュデバイスを使っている人たちと通信していた。
順調に時間が過ぎている裏で、様々な不穏な影が忍び寄ってきていることを三人は知る由もなかった。
次回 第44話 ”一つずつ少しずつ”
さーて、次回もサービス、サービスぅ!!




