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タキオンの矢  作者: 友枝 哲
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第39話 : やばっ!次、やられる!!

<前話のあらすじ>

”OneYearWar”の大会が始まるや、ルナが機体の操作に違和感を覚えた。

それを察知したソルとりょーたろ。

二人はそれがサイバー攻撃によるものと断定。

ソルはその攻撃元に急いで移動を開始した。

一方、勝ち進むため、敵陣に攻め込むルナ。

ルナの前に立ちはだかるファントム・ノヴァという機体。

その機体の固い防衛に、ルナは攻め入るも、これ以上の接近は困難だというところまで来ていた。

攻め込むルナ。だが、実際に追い詰められているのはルナの方だった。



 

 白いアイマスクを付けたソルがA地区パワーサイド(発電エリア)に建っているビルの上に立ち、下を見下ろしていた。


 りょーたろがソルの位置を確認し、信号がそのビルとビルの谷間から出ていることをソルに伝えた。


「そのビルとビルの間から信号が出てるな。」


「あー、イオンクラフト車が一台停まってる。しかもなにやら護衛っぽいアンドロイドまで立ってる。」


「それで間違いなさそうだな。」


「そだね。分かった。次の場所、調べといて。」


「りょーかい!」


 ソルがビルの上からそのイオンクラフト車に向かって飛び降りた。





 ルナがハッハッと肩で息を切りながら、時々息を止めて、ビームを(かわ)していた。


(やばい。。もうこれ以上の接近は難しい。。。どうすれば。。。)


 前方へのイオン中和フィールド展開領域を最小化したため、イオンビームがブースターユニットからはえているウイングの一部を溶かした。


「うっ、宇宙では翼なんて飾りだ!!はっ!?」


 ルナが次の攻撃が来ることを感じて、回避行動を取った。


 相手の動きがわずかに鈍ったことに手応えを感じたケンドー・キーノウが叫ぶ。


「どんどん削ってやる!おれがお前を落とす!!」


 ケンドー・キーノウが操るメタリックステラの構えるビームガンからビームが放たれた。


「やばっ!次、やられる!!」





 暗闇の中、周囲を警戒する屈強な体躯のアンドロイド。


 だが、次の瞬間、何か金属が切り裂かれる音がビルの間で木霊した。


 そして、そのアンドロイドの視界に赤い文字が多数表示された。


(Mulfunction! ジャイロ異常 信号途絶 温度センサ異常 ・・・)


 ジャイロ異常を受け、直立を維持するように信号を送るアンドロイド。


 その信号とは裏腹に落下する視界。


 その視界には赤い光の帯を纏い、白いアイマスクを着けた人間が映った。


 地面に落下する視界。


 その視界は目撃していた。


 赤い光の帯を纏った人間が赤く光る刃を以て、一瞬の間に大型イオンクラフト車を切り裂く様を。





「次こそは墜とす!!」


 敵機の動きを予測し、その地点にイオンビームを放とうとビームガンを構えるメタリックステラ。


 バリアユニットが、そのビームガンの先端に、ユニット中央の穴を合わせるように動く。


 イオンビームを避けるため、ルナが必死に機体を動かす。


(くっ、、、機体が思ったように動かない。。。ここまでか。。。)


 だが、次の瞬間、深紅の機体オル・アティードから放たれる虹の波動が強まった。


 そして、ルナの機体が回避行動に対して、まだディレイはあるもののそれまでの反応以上に機敏に動いた。


 オル・アティードがメタリックステラの予想位置を超えた機動性を見せた。


 ビームは唸りを上げて深紅の機体の横を通過した。


 唸りはそれまでのものより、はるかに小さいものとなっていた。


 ルナは赤い目を見開き、何かが変わったことに気がついた。


 ビームは今までと同じように飛んでくる。だが、先ほどまでよりもはるかに楽に避けられるようになった。


「いけるっ!!」


 そういうとオル・アティードは再び回避しながらも前進をはじめた。





「なに!?なぜだ!!当たらない?」


 それまで以上に機敏に動き出した深紅の機体。


 そして、それまで以上に激しく振動しはじめた自身の機体、そしてバリアユニット。


 構えたビームガンから放たれたビームがバリアユニットの穴を通る。


 だが、大きく震えだしたバリアユニットに掠め、バリアユニットが目の前で爆発した。


 ケンドー・キーノウが焦ってAIに指示を出した。思わず声が出る。


「全面だ!!全面にフィールド用意!急げ!!」


 爆発の光の向こうにビームの光が見えた。


 だが、なんとか中和フィールドの展開が間に合った。ビームが目の前で霧散した。


 そして、ケンドー・キーノウが機体のAIに指令を出した。


「撃て!ビームを撃つんだよ!!」


 メタリックステラが相手の認識マークに対して、ビームガンを撃った。


 しかし、当たった様子はない。


「避けられてる?なぜだ!?もうギリギリだったはずだ。」


 霧が晴れた瞬間、また再びビームが飛んできた。


 それに対して、バリアユニットが的確にビームを霧散させていた。


 ビームを撃っては霧散させるの繰り返しだった。


 だが、ある時、次々と様々な方向からイオンビームが飛んでくるようになった。


 バリアユニットはメタリックステラの周囲を回りだし、中和フィールドを色濃く噴射し始めた。


 ケンドー・キーノウは目の前が散り散りになるイオンビームの霧でよく見えない状況になった。


 その霧にさらにバチバチと飛び込んでくるイオンビーム。


 防戦一方となったケンドー・キーノウが痺れを切らした。


「何をやってる!敵の移動位置予測!!そこにイオンビームを打ち込むぞ!!」


 ケンドー・キーノウがメタリックステラにビームガンを構えさせた。


 だが、腕がより一層大きく震える。


「なんなんだ?これは!振動を、振動を止めろ!早く!!」


 次の瞬間、ケンドー・キーノウの目の前で霧が晴れた。


 そして、バリアユニットがメタリックステラの構えるビームガンの前に穴の部分を合わせるように移動しはじめた。


 だが、その時、ケンドー・キーノウが見たもの。


 それは斜めから飛んでくる何発ものミサイルだった。


 バリアユニットを動かすAIが反射的に防御行動に出た。


 バリアユニットが動きを止めて、中和フィールドのイオン噴射も止めて、ミサイルを撃退しようとビームを射出。


「やはりか!!ミサイル迎撃の時だけ、瞬間動きを止める。待ってた、この時を!!」


 次の瞬間、赤い敵マークがバリアユニットの前に位置していた。


 そして、深紅の機体からイオンビームが放たれる。


 バリアユニットの周囲にはミサイル迎撃のため、霧が晴れていた。


 しかも、飛んできたビームはちょうどバリアユニットの穴をきれいに通過した。


 それはミサイル迎撃の選択をしたAIが瞬間的計算からもっとも確率の低い現象だと結論付けたものであった。


 その通過したイオンビームはメタリックステラの肩とメタリックステラの胴体の一部を溶かし、貫いた。


「うっ、うわーーー!!」


 バリアユニットに囲まれた中央でメタリックステラが爆発したのだった。





 ルナの心の中に、富裕層の両親に叱咤(しった)を受ける映像、会社の部下に怒りを露にする父親の姿、喧嘩をする両親の姿、自分の地位とは関係なく接してくれるゲーム内の仲間達。


 その想いを胸にしまい込み、ルナは心の中で話しかけた。


(私も繋がりに意味を見いだしてる。あなたと同じだよ。その想い、これからも持ち続けよう。)





 ケンドー・キーノウの心の中に、ふと富裕層のパーティーの様子、母親との深い確執、友人の応援に対する喜びが流れ込んできた。


 そして、最後に何か同じような想いが流れ込んできた。それは共感のような安心感、孤独のヒモがわずかに緩むような感覚だった。


「なんだ!?この暖かい感じは。。。負けたはずなのに、なんだこの気持ちは。。。」


 ケンドー・キーノウの画面がブラックアウトし、再び母艦の中の映像を映した。





 ビルとビルの隙間で、ソルが超振動ブレードを手に持って立っていた。


 ソルの後ろには真っ二つになったイオンクラフト車とバラバラになったアンドロイドが道路に散らばっていた。


 アンドロイドの肩にはArrowPursuer(矢を追うもの)と書かれたロゴが描かれていた。


「りょーたろさん、次の場所、教えて!」


「おう。次はD地区中央だな。マップ送る!」


 白いアイマスクを付けたソルがジャンプした。





 ルナは少し軽くなった機動力で駆け抜けていた。


 敵前線の宙域から中盤まで来ていた。


 この辺りのAIは若干レベルが上がっており、周囲の数機がきちんと連携を取り、狙い撃ちをしてくる。


 だが、そんな状況の中、ルナであれば若干のディレイがあってもまだなんとか被弾することなく、避けられるレベルであった。


 進んで行くその先に、突然無数の敵機反応が現れた。


 1000kmの距離をおいても複数の敵機マークが一部に重なっていて、ルナはそれを異質に感じた。


 ルナの赤い機体は稲妻のような軌跡を描きながら周囲の機体を破壊しつつ、進行を続けていた。


 すると、ルナがいつもと違うゾワッとする感覚を覚えた。


 狙われているのは間違いない。だが、それとは少し違う感覚だった。


 ルナが回避行動に移った。稲妻の軌跡がより複雑になった。


 イオンビームが虹色の軌跡の上を走った。


 そのイオンビームは明らかに正面の無数の敵機群から吐き出されているものだった。


 回避行動を取るオル・アティードからもイオンビームが射出された。


 ルナからは敵機の群集の中で爆発の光が見えた。だが、敵機の集合数は減るどころか増えていっているように感じた。


 お互い牽制しながら徐々に距離が近づいていく。


 ルナの機体からは、わずかに広がりを見せた無数の敵機認識マークが表示されていた。


 その数は裕に100を越えていた。


 ある男が深紅の機体の動きを観察していた。


 不規則に移動するその動きを解析するが、どのような方程式を用いても1秒後の予測位置が無数に表示される。


 それを全て防ぐためには50以上の砲門を必要とするという結果だった。


 さらに、深紅の機体に近づく機体は、例外なく半径50km以内に近づくこともできず撃墜されていた。


「半径50kmか。。。なるほど。」


 その男が周囲の機体に指示を出した。


 周囲の機体が赤い機体に向けて様々な角度で進行していった。





 ルナの視界に映る敵機認識マークが変化した。


 まだ視界中央に無数の敵機が集まっているものの、20機ほどが散開してこちらに加速していた。


「来る!」


 再びいつもと違うゾワゾワした感覚だった。


 それでもルナは回避行動に移った。


 いつもと変わらず、イオンビームが虹色の軌跡の上を走った。


 さらに前方から20機ほどが散開しているのが見えた。


 オル・アティードが奇妙な角度でシフト移動しながらもガトリングレールガンを放った。


 最初にルナの機体に向けて進行をはじめた機体群との距離75km。


 この距離を切ると、ルナのように相手にディレイでも起こさない限り、ビームの回避は不可能な距離。


 ルナの機体前方に構えるアサルトユニットが、サイド小型ブースターからイオン推進材を吐き出し、グルっと角度を変え、敵機に向けてイオンビームを放った。


 順調に敵機が爆発し始めた。


 ルナは回避行動をしつつ、次の標的にアサルトユニットの角度を合わせ始めた。


 と、その時。次ははっきりとした嫌悪感がルナを襲った。


 狙われているわけではない。なのに、ルナはなにかを感じ取っていた。


 すると、突然前方で先ほど散開した敵機から無数のイオンビームが放たれた。


 そのイオンビームはルナのオル・アティードを狙ったものではなかった。


 オル・アティードが今にも狙いを定めていた敵機に向かって放たれていたのだった。


 距離にして、周囲約60km。最初に散開した20機中15機ほどが爆発した。


 爆発がルナの視界を邪魔した。


 実際に戦場においてこの程度の連続爆発は良くあることだった。


 この視界の遮蔽はルナにとってまだまだ全くの想定内のできごとだった。


 しかし、僅かにルナの動きが鈍った。


 それはこの時感じた嫌悪感から来るものだった。


<次回予告>

ケンドー・キーノウの操るファントム・ノヴァを退けたルナ。

次にルナの前に立ちはだかるは無数の機体を操るメタリックステラ。

ルナはそのメタリックステラを前に普段感じたことのない嫌悪感を感じた。

未だに消えないディレイ、そして感じたことのない嫌悪感。

この2つがルナを追い詰めていく。

次回、 第40話 ”思いを、、、弄ぶなーー!!”

さーて、次回もサービス、サービスぅ!!


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― 新着の感想 ―
 大会を妨害するのもダメだけど、それを見つけて問答無用でバラバラにするソルも大概無茶苦茶してますねー。場内でも場外でも大暴れしている主人公メンバー。  どうなっていくのか楽しみにしています。
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