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タキオンの矢  作者: 友枝 哲
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第3話:あなた方がどちら側になるのか、それはあなた方次第。

<前話のあらすじ>

第3宙域コロニー、通称コロニー3に住む女子高生、ルナ小林。

彼女には、隠された顔があった。

それは”OneYearWar”という宇宙戦争がモチーフのゲームにおいて、

AIをも打ち負かす超絶ヒューマンプレイヤーであるということだった。

一方、同じコロニーの貧困層で暮らす青年、ソル柊。

彼は貧困層の人々を助けるように細々と暮らすエンジニアだった。

だが、彼にも隠された素顔があった。

それは彼が半永久機関”S2機関”を開発した人物の孫であるということ。

彼はRM財団という財閥の御曹司だったのだ。

しかし、母親であり、コロニー3の上院議長であるレミ柊との思想の相違から

貧困層で暮らしていたのだった。


 

ゆったりとした白いワンピースを着たルナが、バロック様式の長い廊下を歩いていた。


 そして、立派な扉の前に立ち、振り返ったかと思うと、少し後ろに立っている母親に声をかけた。


「ママ、行ってきます。」


「ルナちゃん、勉強頑張ってね。」


 ルナがバロック様式の扉を開き、自分の部屋に入っていった。


 ルナは机の前の椅子に深く座り、目を閉じた。


 すると、耳の裏に貼り付けられた細長いデバイスBCDの縁ふちが緑色に光りだした。





 ルナが目を開けた。すると、ルナは制服を着た姿で、立派な門の前に立っていた。


 その奥には立派な校舎が建っていた。


 それはまるで中世ヨーロッパにあったゴシック様式の建造物のようであった。


 門の横には”私立十二星宮学園”と書かれている。


 ルナが門を通り抜け、校舎の方に歩いていった。


 校舎の前には赤色の髪の毛、お嬢様風ブレザーの制服の上にきらびやかなコートを羽織った女子が立っていた。


 その女子の周囲には黒いスーツの執事アンドロイドが4体立っていた。


「ごきげんよう。ごきげんよう。」


 その女子は周囲に軽く手を上げて声を掛けていた。


 周囲の人たちは少し遠慮ぎみにその女子にお辞儀をしながら挨拶をしていた。


 それはまるでその女子が自分の立ち位置、ヒエラルキーの高さをひけらかしているような雰囲気であった。


 ルナはその女子に気づき、避けるように迂回しつつ、校舎に向かって歩いていた。


 だが、その女子はルナに気づき、周囲の人が立っていることは構わず、ルナの方向に直線的に歩いていった。


 周囲はその女子の通る道を空ける。


 ルナはその女子が近づいてくる様子を感じ取っていた。


 そして、その女子はルナに声をかけた。


「ルナさん、ごきげんよう。」


 ルナは声のした方に向き、ひきつった笑顔で返事をした。


「ごっ、ごきげんよう。城ケ崎さん。」


 ルナに話しかけた女子はルナの返事を聞くか聞かないかくらいのタイミングで次の話題に移った。


「そういえば、ルナさんも明後日のパーティー、出席なさるのでしょ?」


 ルナは少し曇った表情になり、下にうつむいた。





 ルナが顔をさっと上げた。


 そして、腰に両手を当てて、キリッとした顔で言いはなった。


「はあ。。。あんなパーティー行くわけないでしょ!!


 だいたいえらい人だかなんだか知らないけど、いっつも上っ面ばっかりの会話。


 もー飽き飽き。


 話聞いてて本心見え見えなのに、お互い探り探り。


 はっきりいえっつーの!!全然心に入ってこねーわ!!


 なにかAIにでも台詞考えてもらってるんか?


 そうか?そうなんか?言うてみーや!!」


 ルナが話しかけてきた女子の目の前に顔をグイッと近づけていた。





(って言えたら良いのにな。。。)


 ルナは少し曇った顔をそのまま上げて答えた。


「ええ。もっ、もちろん出席いたしますわよ。」


 女子がこくっと頷き、再び話し始めた。


「富裕層の内でも、我々のような特別な階層の者だけが出席を許される最高の場ですものね。


 ここの人たちですらも出ることが叶わない。ふふ。楽しみですわ。」


 周囲を勝ち誇った顔で見回しながら女子は話をした。


「そっ、そうですわね。」


 ルナはひとまず言葉を合わせた。


「では、お互い勉学を励みましょう。ごきげんよう。」


 勝ち誇り顔の女子が校舎に近づいていった。


 校舎には一人が通れるくらいのドアがいくつもあり、勝ち誇った顔の女子がその一つを開くと、そこには2年5組が広がっていた。


 ルナはふうと息を吐き、その扉を開いた。


 扉の先は2年1組になっており、そこはルナのクラスだった。


「ごきげんよう。」「ごきげんよう。」


 ルナは、途中すれ違う友達とあいさつをしながら、自分の席に歩いていった。


 ルナが自分の席に座ると、まるで空想に耽るように、斜め上の宙を向いて、動きが止まった。





 ルナは仮想現実から抜け出て、自分の部屋に戻っていた。


 そこで、昨日のオンラインゲーム(OneYearWar)の結果を確認していた。


「あちゃー、やっぱり負けたか。。。


 もうママさえ、来なければ勝てたのにな。ちょっとランク落ちたんじゃ。。。」





 仮想現実内の学校で始業の鐘の音が鳴り響いた。


 すぐさま教室に担任の先生が入ってきた。





 ルナがランキングを見ようとしていたが、学校の状況に気がついた。


「やばっ!」


 ルナが再び斜め上を向き、目を瞑り、仮想現実内のルナの一時停止を解除した。





 教室のルナが空想から戻ってきた。


 担任が教壇に立ち、出席確認を行う。


 先生が見渡すと、一人だけ空席があった。


 そこには宙に(Absent)の表示があったが、その上に(already received)と表示されていた。


 それを見て担任の先生が話し出した。


「アーデルハイドさんは地球圏のシデン商会との会合に参加するとのことでお休みと伺っています。


 皆さんもご両親やご親族のそういった社会活動には積極的に参加してください。


 今や一般課程をご存じであることは当然でありますが、そういった部分の業務は全て我々アンドロイドが執り行っています。


 人や物の繋がりによる新規開拓、新規分野開発こそが人のみが産み出せる分野であることを自覚していただくことが重要なことなのです。」


 この時代、アンドロイドは人間に限りなく近い推察が可能となっていた。


 それにより、アンドロイドが子供たちの将来を思いやるがゆえに、まるで人のように小言を言う時代ともなっていた。


「では、一時間目、社会科の授業を始めます。


 現在の農業に関する内容でしたね。」


 教室前方にアイソトープ農園がホログラム化され映し出された。


 そして、その画像が生徒全員の脳内に送り込まれた。


「現在では成長を促進させる品種改良、そして弱放射線による成長促進、加えて農園コロニー全体での温度、湿度、大気成分管理により、地球上の約20倍の生産性を確保しています。


 では実際に農園コロニーに入ってみましょう。」


 そういうと、生徒全員が宙を向くような姿勢になった。


 生徒たちは各々が自宅で脳信号連結デバイスBrainConnectedDevice=BCDにより、仮想現実の学校に入り込んでいた。


 そして、そのデバイスの機能の1つである視覚情報共有技術により、今まさに農園コロニーで働いているアンドロイドの視界が脳の視神経に直接送り込まれていた。


 生い茂る木々の中の果物を認識。


 近赤外による糖度検査により、それぞれの果実の完熟具合も表示されていた。


 十分実った果実をアンドロイドが収穫している様子が見て取れた。


 生徒たちの額にはジワリと汗が滲み始めてきた。


「農園コロニーの温度は約38度。


 温室効果のあるCO2濃度をコントロールすることで温度を確保すると共に、農作物への炭素供給を促進しています。


 どうですか。暑いと感じるでしょう。


 この温度コントロール技術は居住コロニーの季節コントロールにも使用されているものです。


 農園コロニーでは成長促進用の放射線の影響もあり、人が労働するには適していない場所なのです。」


 生徒たちはこの時初めて農場での生産活動を把握した。


 脳に直接情報を送れるようになっているこの時代でも、その画像だけでは知識習得はできない。


 それを体験するなどして初めて実際の習得が可能となる。


 脳への入力が画像であるため、公式や年号暗記の時代は終焉を向かえたのだが、それを活用、応用するところには結局勉学が必要であった。


 しばらく作業の様子を見た後、果実を選別するアンドロイドの視界が農園中央のタワーをとらえた時、先生が画像を止めた。


「ここがこの農園のコントロールタワーです。」


 先生がコントロールタワーを拡大する。


 コントロールタワー内では数人の人がタワー上部にある管制室内で周囲を確認していた。


「ここに見える人間がここで働くアンドロイドの管理者です。


 この大規模農園ですら、この管理者わずか数名で実際には運営されています。」


 映像が変わり、コンベアで流れてくる収穫物をアームロボットが選別している場所が写し出された。


 そのアームの横には、流れてきた収穫物をただ眺めている人がいた。


 そして、先生が続ける。


「ですが、社会問題ともなっている人間の職場確保の観点から現在ではアンドロイドやロボット10体に1名の人間配属が義務化されています。


 そのため、この農場で生産される作物は一定価格以下にはできません。


 これが(CropsPricePradox)と呼ばれているものの正体です。


 この問題は、当然ながら、工業製品にも言えることです。


 これらをどうすべきなのか、人間自体が答えを出すべき問題なのです。」


 そういうと、生徒全員のVRを解いた。


 次に、担任は現在のコロニー内の様子を映し出した。


 カメラの角度が変わるにしたがって、豪華な屋敷が映っている場所から荒んだアパート群が映っている場所に映像が変わった。


「ご覧いただいた通り、アンドロイド10体に一人当てられる人間の多くは、特に特殊な技能を要するものではありません。


 そして、それらは全て日雇いとして賄われています。


 また、ベーシックインカム制も相まって、このように貧富の差が非常に大きく現れています。


 あなた方がどちら側になるのか、それはあなた方次第。


 あなた方の今の勤勉さにより決定されると言っても過言ではありません。」


 カメラの映像は荒んだアパート群を映していた。


 そのアパート群の中を、1本の細く赤い線が輝いていた。


 ルナだけがその赤い線に気がついた。


(ん?なんだ、あれ?)





 ソルが、次の依頼先に向けて、荒んだアパート群の間を円筒コロニー周回方向にものすごい勢いで走っていた。


 ソルの目の前に高さ十メートルほどの壁が立ちはだかる。


 コロニー縦方向に区域を分断する壁だった。


 通常、この区域を越えるには壁に開けられているトンネルを潜る必要があった。


 しかも、そのトンネル内では検疫があり、暗黙の了解として、通常、貧困層の者は富裕層エリアに簡単には通り抜けられなくなっていた。


 ソルは走り出す前のように、腰に付けているデバイスを再び触る。


 デバイスが高周波の音を出しだした。


 そして、エネルギー充填が完了したのか、音が変化した。


 その瞬間、ソルがジャンプした。


 その衝撃で地面が若干へこんだ。


 ソルの身体が15メートルほどまで飛び上がった。


 高さ10メートル、幅20メートルほどの壁をも一気に飛び越えていく。


 壁の向こうの景色は全く違うものだった。


 貧困層側の色合いである灰色のアパート、茶色の壁に対して、富裕層では真っ白な豪邸、手入れの行き届いた緑豊かな庭。


 各豪邸に当たり前のようにある噴水やプール。


 そして、ゆったりと設置され、緑豊かな街路樹を備えた道幅の広い道路。


 その道にソルが大きな音を立てて着地した。


 ソルが着地と同時に再び走り始める。


 散歩をしている人、子犬を連れたアンドロイドを信じられないほどのスピードで追い抜かした。


 あまりの突然の出来事に散歩をする人が、まるでUFOでも見たかのように、目を見開いて口をあんぐり開けていた。


 子犬は追いかけたくてハシャぐがアンドロイドがそれを制止していた。


 ソルは数十秒すると、再び区域を分ける壁に差し掛かった。


 その壁は先ほどの壁よりも少し高かった。


 再びデバイスを触る。


 デバイスが同じように高周波の音を出し始めた。


 そして、同じようにエネルギー充填完了音が鳴り、ソルがまたジャンプした。


 ソルの身体が先程よりも高く舞い上がった。


 その壁の上は高速道路になっていた。


 道路には、上部が青紫色に、下部が赤褐色に包まれた卵型の乗り物が何台も走っていた。


 卵形の乗り物は道路表面から数m浮いて走行していた。


 この卵型の乗り物はイオンクラフト(周囲の空気をイオン化させ、電荷を持った分子がイオン風を生み、その風で浮力を得る)という技術で出来た浮上型モービルであった。


 ソルはそのモービルも飛び越すほど高く飛び上がっていた。


 が、そのイオンクラフト車のさらに上を1台だけ猛スピードで走ってくるイオンクラフト車があった。


 ソルとそのイオンクラフト車の距離がどんどん近づいていく。


「やべっ!!」


 ソルが衝突しそうになっているイオンクラフト車を見た。


<次回予告>

宇宙コロニーの隔壁を飛び越えるソル柊。

その時、ソルは1台のイオンクラフト車と衝突しそうになった。

ソルはそのイオンクラフト車の中にあるものを見た。

また、ソルは貧困層である事件に巻き込まれそうになる人を見る。

ソルはそこである行動を取るのだった。

次回、第4話 ”母ちゃん、見て、見て!!”

さーて、次回もサービス、サービスぅ!!


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