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タキオンの矢  作者: 友枝 哲
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第25話 : 身体、耐えてくれよ!!

<前話のあらすじ>

ソル、りょーたろがルナを富裕層エリアに自動車で送り届けようとしていた。

移動途中、E地区中央区を通りかかった時、見覚えのある遊技場(ゲームセンター)が見えた。

車を止めてもらったルナは遊技場で”OneYearWar”をやりはじめた。

夢中になり、本気でプレイするルナ。

だが、そこにこの界隈を牛耳るマフィアのアンドロイドが現れた。

アンドロイドはルナを連れ出そうとする。

それを助けようと、ソルが能力を解放するのだった。


 

 りょーたろがソルとルナを交互に見つつ、驚きの声を上げた。


「おっ、おい、ルナちゃん、つれていかれちまうぞ!!」


 だが、ソルは落ちついていた。


「どうせゾディアックの警備アンドロイドだろ?つれていかせろよ。」


 ソルがルナに向かって大声を上げた。


「一回家に帰っとけよ。またな。」


 だが、ソルの声を聞いて、引っ張られるルナが叫ぶ。


「違うよ!こいつら、私の警備じゃない!お願い!助けて!!」


「は?何?帰りたくないからって嘘つくなよ!」


 周囲の男からも情報が入る。


「いや。あいつら、このあたりを牛耳っているマフィアだ!”エリア51”だよ!」


 ソルの頭が混乱し始めた。


「本当に違うってば!!」


 ソルがルナの声紋を分析していた。


(True)


 ソルのBCDの表示が真実を告げた。


「本当にヤバいやつかよ!!」


 ソルが慌てて腰のボタンを押した。


 すぐに高エネルギー充填音が鳴り出した。


 そして、ソルが思考で出力を変えた。


 ソルの視野右下隅に緑色の表示が現れた。


(Gear02)


 ソルが纏うシャツに描かれている黒い帯が赤くなり、次第に虹色に光りだした。


 ソルは瞬時にアンドロイドの位置を確認した。


 ルナを掴んでいる一体。さらに奥に一体。ルナが座っていたゲーム台の反対側に一体。出口に一体。


 まずはルナの救出が最優先だと最初のターゲットを絞った。


 ソルには隠れてヘッドギアを着ける暇がなかった。しかたなくそのままのカッコで行動を開始した。


 虹色に発光する帯を纏ったソルが、ルナのいる方に急加速し、ジャンプした。


 ソルの移動経路に虹色の軌跡が残った。


 ソルは着地と同時にルナを掴んでいるアンドロイドの腕を掴み、ルナから引き離した。


 その後、すぐさま、ソルは身体を回転させ、アンドロイドに蹴りを叩き込んだ。


 アンドロイドが遊技場の外に吹き飛んでいき、アパートの壁に激突した。


 アパートの壁が崩れる。


 アンドロイドの重量は軽量化されているとはいえ、150kgは下らない。


 そのアンドロイドが人工重力を忘れたかのように直線で吹き飛んだ。


「家にでも帰ってろ!」


 回りの人々が呆然となった。ただりょーたろだけはしたり顔になっていた。


 その様子を見て、他のアンドロイドが大腿筋あたりから何かを取り出した。


「は?ちょっとタンマ!!」


 三体のアンドロイドが取り出したものをおもむろにソルの方に向けた。


 ソルも咄嗟に思考によって出力を上げた。


(Gear03)


 ソルが纏っている虹色の帯が、より強く光りだす。


 ソルの周囲の空気が目に見えるほど歪み、それが波となり周囲に拡がったように見えた。


 その波動を受けたアンドロイドの身体が激しく振動しはじめた。


「身体、耐えてくれよ!!」


 その隙にソルが再び急加速し、ゲーム台の物陰に隠れた。


 アンドロイドの処理に遅延が生じ、レーザーを射出するも、そこはすでにソルが過ぎ去った場所であった。


 ソルがいた場所の床や奥のゲーム台がレーザーのエネルギーでドロッと溶けた。


 りょーたろが叫びながら何かをソルに向かって放り投げた。


「ソル!これ使え!!」


 ソルがゲーム台から飛び出した。


 ソルの移動する軌跡にレーザー光線が走る。


 飛び上がったソルは天井を蹴り、りょーたろの投げた約60cmの細長い棒を掴んだ。


 着地と同時にサイドステップをして再びゲーム台の裏に。


 着地した場所やソルの移動する位置にも3体のアンドロイドがレーザーを打ち込んだ。


 再びゲーム台がドロッと溶けた。


 ソルはゲーム台の影から再び飛び出し、奥のアンドロイドに向かって移動した。


 瞬時にソルがアンドロイドの右側に現れた。


 ソルはアンドロイドが銃を構える腕に向かって細長い棒を縦振り、さらに振り下ろした棒を左方向に横振りした。


 細長い棒はソルが掴んだ端の黒い部分を除き、先ほどまで灰色だった部分が刀のように細くなり、超振動により赤く光っていた。


 アンドロイドの右腕と左脚が見事なまでにシャープに切断された。


 ソルは横振りの後、再びステップバックし、ゲーム台の影に隠れた。


 ソルがギリギリ過ぎ去ったところにレーザーが次々と走る。


 そのレーザーの一本がソルに斬られて倒れるアンドロイドの下腹部に当たり、下腹部がドロッと溶けた。


 ソルは三度ゲーム台から飛び出した。


 ゲーム台を挟んだ反対側にいたアンドロイドは次のターゲットが自身であることを認識し、銃の構えを解き、両腕を広げ、身体を前に倒して、ソルを捕まえようとしていた。


 ソルが懐に潜り込んだ時、アンドロイドはまだ腕を広げた状態であった。


 だが、ソルは瞬時に判断する。


(こいつを斬っても、こいつが倒れてきて、おれは動けなくなる。)


 ソルが振動刀を離し、右拳を強く握った。


 指の第一、第二間接中間まで伸びたグローブの帯も虹色に発光していた。


 ソルは渾身の右ストレートをアンドロイドの胸部に叩き込んだ。


 轟音が遊技場全体に響き渡った。


 アンドロイドの腕が半分ほど閉じた時には、すでにアンドロイドの身体は宙を舞っていた。


 アンドロイドの胸部が大きく凹み、その身体はその奥のゲーム台に叩きつけられた。そして、叩きつけられた反動でアンドロイドは大の字になった。


 ソルはすぐさま落下途中の振動刀を掴み、奥のゲーム台で大の字になっているアンドロイドの前に移動した。


 次の瞬間、ソルが袈裟切りでアンドロイドの右腕、右脚を一刀両断した。そして、すぐに離脱する。


 そこにレーザーが打ち込まれた。


 凹んだ胸部にレーザーが突き刺さった。


 ソルが紙一重でレーザーを避け、出口に立っているアンドロイドの目の前に移動した。





 最後に残っているアンドロイドは常時カメラから襲ってくる男の位置データを取得し、レーザーの射出位置計算を行っていた。


 だが、ノイズが入り、予測位置が発散してしまう。


 再度計算。


 計算結果がまとまった。


 射出角度微調整のため、脚と腰、そして腕のモータアンプに指令値を送る。


 フィードバック数値が返ってくるが、その値にもノイズが入る。


 動きにオーバーシュートが伴い、その補正にも時間がかかる。


 全てのモータ座標が許容値に入る。


 レーザー射出。


 しかし、射出した位置にはすでに男の姿がなくなっていた。


 アンドロイドのカメラが映す映像の別の位置。そこに男がアップで映り込んだ。


 それはまさに男が切りかかる絵であった。


 避けようとする動作の指示値にノイズが入る。動作の決定に遅延が発生。


 次の瞬間、右腕の肘から先に関する温度、圧力、モータフィードバック信号、負荷率など100以上の情報が喪失した表示が示された。


 さらに次の瞬間には左脚部の膝より下のそれも表示された。


 映像が傾き、姿勢制御不能と表示された。





 崩れ落ちるアンドロイドの前で、ソルが右手に振動刀を持ち、仁王立ちになっていた。


 ソルの目が赤色に染まっていた。


 ソルの額は汗ばみ、肩で息をしていた。


 りょーたろの振動刀を受け取って、実に5秒もかからずの救出劇であった。


 回りの人々が驚きで声を失っていた。


 だが、最初にソルの蹴りにより壁に激突したアンドロイドが瓦礫の中でレーザー銃を構えていた。


 その照準がソルに向けられようとしていた。


<次回予告>

アンドロイドからのレーザー一閃。

そして、謎の着信。

ルナの言葉がソルの心に響く時。

それは互いの想いが交差した時でもあった。

次回26話 ”心の繋がりを感じたい”

さーて、次回もサービス、サービスぅ!!


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