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タキオンの矢  作者: 友枝 哲
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第17話:お前ら、いったいなんなんだよ!!

<前話のあらすじ>

ルナは地球-コロニー通商会合のパーティーに参加していた。

そこで人々の心の内を垣間見る。

また、”OneYearWar”を開発した会社社長と話をしている時、あるプレイヤーの話が出た。

そのアクセス情報はルナが以前ゲーム内で見たプレイヤーのアクセス場所と同じ、E地区中央店という遊技場。

ルナは会合を抜け出し、その場所に向かうのだった。


 

 ルナは疲れた足取りでSPのアンドロイドと一緒にパーティー会場の正面玄関の方に歩いていった。


 そして、アンドロイドに囲まれながら一人車に乗り込んだ。


 AIの運転手が音声ガイドを行った。


「ご自宅に移動します。」


「うん。お願い。」


 ルナが返事をすると、車が自動で移動し始めた。


 そして、移動し始めて少しした後、再びコロニーのある場所が思い起こされた。


 ルナが視線でアプリを立ち上げると衣服を選択した。


 ルナの来ているドレスがモーフィングし、可愛らしいパンツ、フリルの付いたどこか上品さも兼ね備えたブラウスに変化した。


 ルナはAI運転手に言った。


「お願い。行き先変更して。E地区中央区に。」


「かしこまりました。」


 高速のインターチェンジを車がグルっと回り始めた。


 移動する車の中には目を輝かせているルナがいた。





 ソルが次のお客の待つE地区の中央区に降り立った。


 少し目を斜めに動かすと、BCDが宙に時計を表示させた。


「ふう。何とか間に合いそうだ。」


 そう言いながら、先ほどのアンドロイドとの一悶着で部品が壊れてないか、鞄の中を確認した。


 ソルはすぐにお客の待つアパートに到着した。


「302か。」


 そう言うと、まだつなぎが赤い状態のソルは一気に三階までジャンプした。


 上がったところがちょうど302と303の間で、すぐに302のドアにタッチした。


 ソルは腰のボタンを押して、つなぎの色を元に戻した。


 ソルには部屋の中で呼び鈴が鳴っているのが聞こえた。


 だが、時間が経っても人が出てこない。


 もう一度、ドアにタッチする。


 再び呼び鈴の音。


 すると、小さな足音の後、わずかにドアが開き、住人がその隙間から声を出した。


「今日はもう修理はいいから、帰ってくれ。」


「えっ?でも、空調の調子が悪いって。」


「いや、あー、それ。いや、もういいんだ。もういいから。」


「えっ?どういうこと?でも、こんな夏の季節に大変じゃないの?

 もしお金のことなら、後でもいいんだけど。」


「。。。」


 住人も若干ソルに申し訳ないと思う気持ちが芽生え、もう少しだけドアを開けた。


 ソルからバツの悪そうな住人の顔が少しだけ見えた。


 住人が小声で話し始めた。


「すまん。ついさっき、このあたりの住人にUnion-Roswellからメッセージが出回ってよ。

 この修理屋の修理部品を回収するって。これは自分達の部品だって。」


 ドアの隙間からウインドウが飛び出してきた。


 そのウインドウに描かれていた顔写真はまさにソル本人だった。


 ソルは自分の身分がばれないように省庁への登録情報をハッキングにより一部修正していた。


 だが、顔写真が出回るとさすがにどうしようもなかった。





 ソルは仕方なくマンションから細い裏路地に出た。


 そして、次のスケジュールを見ると、詰まっていた予定がみるみるキャンセルになっていった。


(なんなんだ、あいつら。クソッ!)


 グッと拳を握り、アパートを囲む壁に拳を突きつけた。


 ソルは歩いて、中央通りに出ると、先日覗いた遊技場が見えた。


 そこには以前にも増して、人だかりが出来ていた。


「なんだ、あれ?」


 遊技場の回りで人がガヤガヤと騒いでいる。


「やっぱり、この動き、まさかこの子、『RedDevil』じゃないのか?」


 ソルが人の隙間から奥を覗いた。


 ゲーム機二台がこの人だかりの中心になっていた。


 一台には年にして十代前半の青年が座っている。赤く短い髪に、白いTシャツとダメージジーンズっぽい半ズボンを着ていた。


 頭にはカチューシャのような形の機器を着けていた。


 肌は日焼けしているように健康的な小麦色であった。


 ソルは、もう一台に座っているのが女の子であることに気がついた。


 年にして十代後半。


 貧困層の遊技場にしては場違いに高級な素材の服を着ているのが目についた。


 そして、その女の子も頭にカチューシャのような機器を着けていた。


(うん?こいつ、何かどっかで見たことがあるような、ないような。。。)


 ソルが遊技場に少し近づいた。


 人が取り囲むゲーム機の上に、3D立体表示されたゲームの現況が示されていた。


 二人が操っていると思われる戦闘機は、進行方向に対峙する戦闘機やロボットを次から次へと撃墜し、どこかに向けて進んでいた。


 一機は覚束無い動きで、一機は何か明確な意思を持った動きで、相手の放つイオンビームを避け、反撃をしていた。


 群衆の中の人たちから(RedDevil)という声が頻繁に聞こえるようになってきた。


 そして、何人かは動画を撮り始めていた。


 だが、ソルがふと気がつく。


 周囲の人が大きく騒ぎだしてからというもの、明確な意思を持ったような動きだった一機が、もう一機と同じように少し覚束無い動きになっていたことを。


「あれ?やっぱり『RedDevil』とは違うか。。。」


 周囲のそういった声がソルの耳に聞こえてきた。





 ルナは初めて触る遊技場のコントローラに最初こそ不馴れだったが、触っていくにつれて感覚がどんどん最適化されていった。


(はっはーん、きみのクセは分かったよ〜!)


 機体は部品選択で自分の使う機体に似せてカスタムし、全方位への攻撃、移動が可能なように設定していた。


 ただし、カラーリングは自分の機体のような赤統一ではなく、部品ごとに白、青、緑、赤、黄とカラフルではあった。


 母艦から発進し、先に開始していたある少年の機体に追い付くべく、急加速をした。


 ほぼ敵機を無視し、避けるだけ避け、あっという間にその少年の機体に追い付いたのだった。


 そこからは少年と共闘し始めた。





 少年は突然敵機の攻撃が少し和らいだのを感じた。


(敵機の攻撃が別のところを狙っている!?)


 その狙いの先を見て、ある一機が自分と共に闘っていることに気づいた。


 そして、その機体を見た瞬間、以前見た ”想い” が流れ込んできた。


 前回とは違った豪華なパーティーの様子、上辺だけの大人たちへの強い嫌悪感。

 だが、以前と同様に”OneYearWar”のプレイヤーとの繋がりから大事な何かを感じている様子も流れ込んできた。


(これはあの時の感じと同じ。この人、『RedDevil』だ!!)


 機体のステータスにアクセス場所の表示が出ていた。


(コロニー3-104、E地区)


 少年がその表示で気づいた。


(ん?同じ場所?)


 イオンビームが飛んでくる感覚を感じ、自分も回避行動を取る。


 チラッと横に並ぶ台に座っている人を見た。


 一人だけ頻繁にコントローラを操作している人がいた。


 高校生くらいの女の人。


(この人が!?)





 ルナは少年の動かしている機体が少し止まっているのを感じ、チラッと少年を見た。


 少年とルナの目が合った。


 ルナは目で合図を送った。


(何してるの?集中しなさい!!)


 少年はハッとして、機体の操作に戻った。


 ルナはそれまでは全く聞こえてなかった回りの声が一瞬だけ聞き取れた。


「この子、RedDevilなんじゃ!?」


(あっ、やばっ!!)


 そこから動きを少年の動きに合わせ、ギリギリで躱せる程度に抑えた。





 ゲーム機上部に示されているZ国の領域確保割合が徐々に増えていった。


 Z国は二機が所属している側であり、E国の三次元支配領域をZ国の領域が侵食しているのが分かった。


 それはまるでモグラがジグザグに穴を掘るような形で進行しており、今まさにそのモグラはE国の旗艦の方に向かって進んでいた。


 周囲の人は撮影した動画をすぐさまアップしていた。


 情報はあっという間に広がり、映像から人物が特定された。


(ルナ小林)


 そして、ネットでは動きの解析が進められ、結局のところ(この動きはRedDevilではない)と結論付けられていた。





 ソルはしばらく立ち見をしていた。


 全ての仕事がキャンセルになったため、行く宛てもなかったが、見物を止めて、ひとまず移動しようと思った時だった。


 黒色のエアクラフト車が遊技場の手前に二台停まった。


 そして、その車から黒いスーツを着た体躯の良いアンドロイドが4体降りてきた。


 すると、アンドロイドが見物している人を掻き分け、遊技場に入っていった。


 そうかと思うと、筐体内に座っているルナの手をグッと掴んだ。


 ルナの手が操縦桿から離れ、アンドロイドの引っ張る力によって、筐体の外に身体が引っ張り出された。


「ちょっとやめてよ!!」


「おい!お前ら、邪魔すんじゃねーよ!!」


 回りの男がアンドロイドを掴んだ。


 だが、別のアンドロイドがその男を一瞬で引き剥がした。


 アンドロイドが引き剥がした男の両肩をグイッと押して、椅子にズンと座らせた。


「あなたたちこそ邪魔をしないでいただきたい。」


 アンドロイドによって肩に手を置かれた男は立ち上がろうとするも、全く立ち上がることができなかった。


 そんなことをしている間にもアンドロイドはルナを黒い車の方に引っ張っていっていた。


「ちょっと。もう良いとこだったのに。ちょっと。。。もう。」


 ルナがどんどん引っ張られるが周囲の男たちはなす術がなかった。


 その様子を見て、ソルは怒りを抑えることができなかった。


「お前ら、いったいなんなんだよ!!」


 ソルは腰に付いたユニットのボタンを押した。



<次回予告>

遊技場に入り、ルナを連れていこうとするアンドロイド。

周囲の大人がそれを止めようとするも全く歯が立たない。

ソルがその様子を見て、思わず腰のボタンを押す。

ソルのシャツに描かれた黒い帯が赤く光る!!

次回、第18話 ”初めまして!だよね?”

さーて、次回もサービス、サービスぅ!!


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