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平凡JKと異世界帰りの自称名探偵  作者: アタリ・ツキ
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異世界ペンション連続殺人事件 2人目の犠牲者

「犯人はクストだ。」


不適な笑みを浮かべるゲル。

雪はどんどん強くなっていき、もはや吹雪のようになっていった。


何を言っているんだ、こいつ。クストさんにはアリバイがあると何回も言っているじゃないか。


「どうしてクストさんが犯人だと?」


「まあ座れ。」


俺はゲルに従ってロビーの椅子に座った。ゲルも椅子に座り足を組むと話し始めた。


「お前の推測では、犯人は俺かパレントのどちらかだということらしいが、そもそも俺とパレントには犯行は不可能だ。もちろん根拠はある、まずお前とクストは丁度この場所で被害者の悲鳴を聞いたんだろ、つまり悲鳴を出したその瞬間まで生きていたってことだ。そして慌てて現場に駆け付けたらもう死んでいた。よく考えろ、この場所から事件現場までは走ったら大体5秒だ。」


そこで俺は気づいた。確かにゲルとパレントさんに犯行は不可能だ。


「被害者を殺害し、その上お前とクストが現場に駆け付ける前に自分の部屋に戻る、これを5秒以内に行うなど無理だ。」


ゲルは言い切った。

ゲルの言っていることは正しい。しかし、それでなぜクストさんが犯人ということになるのかがまだわからなかった。

どうやら俺はそれが顔に出ているようだった。


「なぜクストが犯人なのかわからないようだな。今から説明してやる。クストは金属魔法を使うんだろ。つまりお前とこの場所で談笑しながら被害者の部屋では金属で出来た凶器を操り、殺害することも可能だったんだ。」


どんな名推理が飛び出てくるのかと期待していたが、その内容はあまりにお粗末だった。


「そんなことが可能だと本気で思っているんですか?あなたも魔法が使えるからわかるでしょう、自分の分野の魔法だからといって遠くにある物を正確に動かすなんてとても簡単なことではない。ましてや自分が操作する物質が自分から見えていない状態、さらに攻撃する相手も見えていない状況で正確に首だけ狙い撃ちなんて不可能です。」


ゲルは、俺の反論に表情一つ変えずに不敵な笑みを浮かべたまま言葉を返した。


「クストはパレントの元パーティーメンバーだったそうじゃないか、元冒険者ならそれくらいやったっておかしくないんじゃないか?俺は商人だからよくわからんが。」


この言い方、そんな魔法の使い方は出来ないと自分でもわかっているんだ。

こいつ、自分が犯人と疑われたときにはまともな根拠を出して無実を証明した癖に、他人を犯人だと決めつけるときは全く証拠もなしの無茶苦茶な理論で攻めてきやがる。

恐らく俺の反応を楽しんでいるんだ。負けてられない。


「じゃあ仮にゲルさんの言う通り、クストさんが犯人だったとしたらなぜあなたはクストさんとのペアを承諾したんですか。」


「身をもって証明するためさ、クストが犯人だということを。」


それはつまり、クストさんと同室になり自分が死んだときに容疑者はクストさんしかいなくなるということか。自分の命を証拠にするつもりか、本当だとしたら狂ってやがる。不死身の俺ならまだしもこいつは命が一つしかないんだぞ。

すると突然ゲルは笑い始めた。


「はっはっは、冗談だよ。クストが犯人だとも俺が死ぬとも思っていない。俺はこんな所で死ぬ訳にはいかないからな、ただ暇だったから君と探偵ごっこがしたかっただけだよ。吹雪がやんだらとっとと下山して事件は教会に任せればいいんだよ。」


ゲルはおやすみとだけ言い残すと1階の自分の部屋に戻っていった。

全く訳のわからない男だった。突然推理ショーを始めたかと思えばそれは単なる暇つぶしだったと、俺はやつの手のひらの上で踊らされていたのだろうか。


俺は2階の自分の部屋に戻った。パレントさんは寝ているかと思ったが、ベットに座っていた。俺に気づくと立ち上がり話しかけてきた。


「ゲルと一体どんな話をしてきたんですか?」


パレントさんは目が泳ぎソワソワして、少し落ち着きがなかった。


「いや、ただの世間話ですよ。」


「本当ですか?」


「本当ですよ。俺眠いので寝ますね。ベットは使ってくれて構いませんから。」


 俺は床に布団を敷き、毛布を掛けた。俺は布団の中で今までのことを振り返った。

 最初はパレントさんとゲルが怪しいと思っていたがゲルにより、それが否定された。そもそも被害者のヘスリーさんとはゲルもパレントさんも初対面だ。殺害する動機がない。他の客も恐らく同じだ。動機があるのは夫であるクストさんしかいないが、クストさんには崩しようのないアリバイがある。

 色々考える内にあの状況でヘスリーさんを殺せる人間がいると思えなくなってきた。

 だめだもう考えるのはやめよう。とりあえず今夜は寝ないでパレントさんの監視だ。まだ完全に疑いが晴れた訳じゃない。少しでも変な動きをしたらすぐ動けるようにしよう。

 しかし、何も起きることなく朝を迎えた。


「大変だ、みんな起きてくれ!」


1階の方からクストさんの声がする。俺は急いで1階に向かった。

1階にいたクストさんは顔色がとても悪かった。


「どうしましたか。」


「とにかく来てください。」


 クストさんについて行く。そこはクストさんとゲルが使っていた部屋だった。扉を開けるとそこから、嗅いだこともない異臭がした。鼻を押さえながらベットに横たわっている男へ駆け寄った。その男はゲルだった。目をカっと見開き、口からは泡を出している。脈を測ると脈はなかった。

 ゲルは恐らく毒殺されていた。






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