異世界ペンション連続殺人事件 クローズドサークル
ヘスリーさんを殺害した犯人は恐らくこのペンション内にいる。と思ったが、まだ誰が犯人かわからない。そもそも殺人事件の現場に立ち会ったことも初めてなのでなにをすれば良いかわからない。ましてやここは警察もいない世界だ。一体何をすればいいんだ。
その時俺はあることを思い出した。それは異世界召喚された当日、召喚された場所にいた白スーツに青髪の男にいわれた「面倒なことに巻き込まれた場合はわたくし、ガクにお任せください。教会にいつでもおりますので。」という言葉を。この世界では教会と呼ばれる組織が俺がいた世界でいうところの警察なのだそうだ。
そうだ、教会に言えばいいんだ。
「とりあえず教会に報告しよう。」
その言葉を言ったのは俺ではなかった。言ったのは40代位の男で銀色の髪をオールバックにしていた。
「そうだな、ゲル。」
そう言ったのはパレントさんだった、
このゲルと呼ばれる男とパレントさんは知り合いなのか。
ゲルの言葉を聞いたクストさんは慌てて部屋を出ていこうとした。この世界には電話がないので遠くにいる人間に何か伝えようと思ったら、直接言いに行かなければならない。その為クストさんは今から急いで近くの教会に行こうとしているのだろう。
クストさんが部屋を出ようとしたときパレントさんが突然「待って!」と言った。
「今は雪が降り始めてる、そんな中山を下りていくのは危険だ。それにこの時間は魔物の活動が活発になっている。結界を張っているこのペンションは安全だがそとに出たらそれもなくなる。今は行くべきじゃない。」
パレントさんの主張は最もだ。クストさんは文字通り頭を抱えた。
「じゃあどうすればいいんだ。妻が盗賊に殺されたんだぞ。また盗賊がきて今度はお前が殺されるかもしれないんだぞ!」
クストさんは怒鳴った。
その時突然ゲルが口を開いた。
「ヒロとかいうそこのガキに護衛してもらえばいいんじゃないか。パレントから聞いた話によると勇者候補なんだろ。」
今この現場で殺人事件が起こったというのにこの男、すごく冷静だ。
しかし俺はその言葉を聞いてあることに気づいた。
「それはできません。」
俺の言葉にゲルは一瞬、眉間にしわを寄せた。
「なぜだ、もしかしてこの事件の犯人がお前で教会に言われると不都合でもあるのか。」
憎たらしい言い方だ。腹は立つが今は無駄な言い争いをしている場合じゃない。俺はなぜ教会にいかないかの理由を話す為に今回の事件が盗賊の犯行ではないことを窓の外の雪に足跡がないことなどの理由を基に説明した。
だが俺の説明で他の宿泊客が動揺していた。
「じゃあこの中に犯人がいるかもしれないってことですか。」
若い男が俺に聞いた。
「そうです。この中に犯人がいる可能性が高いです。なので俺という戦力が教会に報告するためにペンションを離れてしまったら、そのすきに犯人が逃げたり、また別の人間を殺害する可能性があります。
なので今俺がこの場を離れる訳にはいかないんです。」
「なるほどな、じゃあどうすればいいんだ、雪がやむまで殺人犯と一緒に過ごせというのか?」
ゲルは皮肉ったらしく言った。俺にはこの皮肉嫌味ジジイを納得させる方法があった。
「そこで提案があります。とりあえず皆さんロビーに来てもらえますか。」
ロビーにペンションにいる人間全員が集まった。俺も含め人数は7人だった。
「まずは簡単な自己紹介をお願いします。名前、職業、何の魔法を使うか。まずは俺から、名前はヒロ、商業は冒険者、魔法は使えませんが、炎の大精霊と契約したので炎使いです。」
「パレントっていいます。商人をしてます。光魔法を使います。」
その後も自己紹介は続いていき7人全員終わった。
光魔法のパレント、金属魔法のクスト、煙魔法のゲル、夫婦で来ていた夫、岩魔法のレン、妻、草魔法のアン、旅人、紙魔法のピアー
ヘスリーさん殺害に使えそうな魔法は今のところなさそうだ。すこしでも手がかりになるかと思ったが、
「自己紹介を終えた所で、俺の提案というのは、ペアを作って一晩過ごすというものです。ペアを作れば犯人に襲撃されても二人ならなんとかなります。さらに、犯人はペアになった人の目があるので中々行動を起こせない。例え、事件が起きたとしても殺害された人のペアが犯人だとすぐにわかるから犯人もそんな中で殺人をしようなんて思いません。」
「確かに、完璧な計画ですね。」
若い男、岩魔法のレンが言った。
「そもそも、犯人がたまたま居合わせただけの俺たちを殺す動機がありません。しかもこんな限られた状況の中2人も3人も殺していたら教会によってすぐに犯人が捕まるでしょう。今回の事件はたまたまヘスリーさんに恨みを持っていた人間がこの場に居合わせた為犯行に移した。これ以上の被害者が出る可能性は低いでしょう。無差別殺人だったら話は別ですが、その場合ならこんな山の中にあるペンションでは実行しないと思います。」
俺はみんなの不安を消す為にそう言ったがこの考えは甘かったとあとになってから思い知ることになる。
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