勇者見習い殺人事件 解決編2
魔道具保管庫、そこに事件解決に繋がる大きな手掛かりがある。
私たちはガクの転移魔法で、魔道具保管庫まで移動した。
そこは相変わらず瓦礫や何かの破片が散らかっていた。日はおちはじめ、あたりはオレンジ色に染まっていた。
みんなが私の顔を見始めたので話を始めた。
「ドナはウルフロードの巣を壊滅させたあと、ここまで歩いてきました。」
皆が頷く。
「ここで質問です。ドナは今朝大けがをしながらヤールの門まで歩いてきたそうですね。つまり今朝まで生きていたというわけです。ということは一晩どこかで過ごしたということになりますがそれはどこだと思いますか?」
私はまた質問をした。さっきと同じように考える異世界人たち。
そして今度はガクではなく、エレナが何かを閃いたようで「わかった!」と声を上げた。
「ここから一番近くでちゃんとした寝泊り出来る所なんてヤールにしかない。でもそうじゃなかった、ドナが過ごした場所はここだったのよ。」
そうなのだ。恐らくドナは魔道具保管庫の中で一晩を過ごしたのだ。
「正解だ。」
エレナの回答になぜか赤羽くんが答えた。そして私に「俺にも推理披露させて」と小声で言うと話を続けた。
「ファント教会からヤール森林まで歩いて、さらにそこでウルフロードの巣を壊滅させたら大分疲れただろう。ここからヤールまで歩くのも大変だから、ドナはいったんここの魔道具保管庫で休むことにしたのだ。保管庫には結界もあったが勇者見習いのドナならそれを破壊して侵入することなんて造作もなかったはずだ。」
「まあそうでしょうね。」
とエレナが口を挟む。
「だがそこでドナは重大なミスを犯してしまったのだ。」
全員が唾を飲む。そして赤羽くんが声を低くしてこう言った。
「それは、魔物の警戒を全くしなかったということだ。」
そう、これがドナが大けがを負ったことに繋がる。
赤羽くんの言葉を聞いたガクが口を開く。
「そうか!魔物よけの結界を自ら破壊してしまったから、保管庫の中に魔物が入ってくる。そしてそのまま攻撃されてしまった。これがドナが大けがを負った原因なんですね。」
赤羽くんが首を横に振る。
「部分的にそうだが少し違う。確かに保管庫の中に魔物は入ってきただろう。でもそれだけでドナがやられると思うか?」
「確かに、保管庫という狭い場所であったとしても、ドナがただの魔物ごときにやられるとは思えない。」
ガクはそう言うと、手を顎に当て、再び考え始めた。
赤羽くんは話を続ける。
「ドナは魔物にやられたのではない。ドナが重症を負った原因は他にある。それは…」
風がひゅ~と静かに吹く。
「保管庫にあった魔道具だ。」
その場にいた私と赤羽くん以外の皆が、保管庫に何があったか考えを巡らせていた。
一番早く答えにたどり着いたのはガクだった。
「確か爆弾…それも普通の爆弾じゃない、魔力を込めるタイプの…そうか!」
「そういうことだ、ドナは保管庫でくつろいでいた、そこに魔物、恐らくウルフロードの生き残りが入ってきた。焦ったドナは高出力で魔法を発射させた。すると、周りにあった爆弾がドナの魔力に反応して爆破した。部屋にいた魔物は死んだが自分も大けがを負った。これがドナの身体にあった火傷の正体。」
「そういうことか、だから保管庫がこんなに粉々に…あ、でもまだわからないことがあります。この場にウルフロードの血はあっても、死体はありません。爆破されたと言っても少しくらいは死体の一部が残っているはずです。」
ガクの質問は当然のものだった。しかしそれにも答えはある、それに赤羽くんは気づいているのだろうか。
「仲間が死体を自分たちの巣に持ち帰ったんだろう。巣にはたくさんのウルフロードの死体があったがよく見るとちゃんと並んでいた。それはウルフロードたちの仲間意識の強さからきているのかもしれない。死体の中には明らかにドナの魔法でやられたとは思えない死体もいくつかあった。これらが恐らく爆破によって死んだオオカミたちだ。それにこの場に死体の一部が落ちていたとしても、他の魔物が餌としてどこかへ持っていってしまう。これがこの場にウルフロードの死体がない原因だ。」
私と全く同じ考えだ。
「そうだったのか…」
ガクが頭を押さえた。
「『勇者見習い殺人事件』の流れを説明する。ドナは教会から1人でヤールまで向かった。その道中、ヤール森林にあったウルフロードの巣を壊滅させる。その後、魔道具保管庫でくつろいでいた所にウルフロードがやってきた。慌てて魔法を出すと周りの爆弾に反応し、爆破。大けがを負ったドナは治療を受けるためヤールまで歩く。ヤールの門までたどり着いた所で生き残りのウルフロードが現れた。これは奴らの狩りのやり方、獲物が本拠地まで着いたところで襲うというもの。そしてドナはそのまま襲われて死亡。
これが一連の流れだ。」
私も他のみんなも異論はなさそうだった。
そして最後に赤羽くんはこう言った。
「『勇者見習い殺人事件』なんて名前を付けたが、実際は殺人事件ではなく、色々な要素が重なってできた悲しい事故だったというわけだ。ドナが大けがを負ったこと、ウルフロードの習性が事故を複雑化してしまった。」
事件は解決したが現場は暗い雰囲気になってしまった。その中でガクが重い口を開いた。
「空も暗くなってきたので、とりあえず教会に戻りますか。」
私たちは教会に戻った。
読んでいただきありがとうございます!
ブックマークや★★★★★もお願いします!
誤字脱字報告もお願いします
次回からは事件とは少し違う話になります。今後も応援よろしくお願いします!




