元勇者密室殺人事件 手掛かり
密室殺人、それは事件が起こった現場が外から出入りすることが出来ず、また被害者がその部屋の中にいることだ。
赤羽くんが殺された今回の事件では、教室が完全に密室状態になっていた。前後の引き戸の鍵は閉まっていて、窓の鍵も閉まっていた。そして教室の鍵は教室内に置いてあるので、内側から鍵を閉めることは出来るが外側から鍵を閉めることが出来ないのだ。犯人はどうやって密室殺人を成功させたのだろうか。
そこで私は閃いた。
もしこの教室に赤羽くんよりも早く着いて職員室まで鍵を取りに行った人物がいたら…
私は慌てて職員室に向かった。赤羽くんもついてくる。
「失礼します。2年3組の小野寺です。山田先生はいますか?」
相変わらず職員室はコーヒーの匂いが漂い、独特の雰囲気がある場所だ。
「おう小野寺、今日は赤羽といい朝早いやつが多いな。」
マグカップを持ちながら担任の山田先生が出てきた。
「質問なんですけど、今日教室の鍵を取りに来たのは誰ですか?」
山田先生は、こいつは何を言っているんだ、というような顔をした。
「鍵を取りに来たのはお前の後ろにいる赤羽だよ。そうだよな赤羽。」
「あれえ、そうでしたっけ?」
「おいおい、さっき取りに来たばっかりだろ、大丈夫かお前。」
山田先生は冗談交じりにそう言った。
「そうでしたか、失礼しました。」
私は職員室を後にした。
となると犯人は赤羽くんよりあとに学校に到着した。でも私よりは先にいた、ということになる。うーんこれだけじゃ犯人はわからないな。こうなったら事件現場を思い出しながら推理していくしかない。
いや、赤羽くんに聞いていなかったことがあった。
「そういえば赤羽くん、殺されたってことはそれだけ誰かに恨まれていたってことだけど、心当たりはある?」
「いやー完璧超人探偵の俺を恨む相手なんてこの世にいないよ…あっ」
「心当たりあるの?」
「いや、ないない。」
この反応、間違いなく心当たりがある反応だ、でもなんでそれを言わないのだろう。あっ、もしかして
河合さんのことなのかもしれない。河合さんの件は私に知られないように赤羽くん1人で解決してくれた。だから私には言えないのか。だとしても河合さんは赤羽くんを殺す程恨んでいたのだろうか、
「うーん難しい事件だな。」
犯人は赤羽くんを殺したい程憎んでいて、でもその赤羽くんは生き返って、
ん?ってことは、犯人なら生きている赤羽くんを見たら驚愕するはずだ。これは大きな手掛かりになる。教室に入ってきて赤羽くんを見たときの反応を見れば犯人がわかるはず。
「赤羽くん、とりあえず急いで教室戻ろう。」
私と赤羽くんは教室で待機した。教室に入ってくる他の生徒の反応を見る為だ。しかし中々こない。それもそのはず、私と赤羽くんはかなり早めに教室にいたからだ。それでも待ち続けた。すると1人目の生徒が教室に入ってきた。私はその生徒の反応をじっくりと観察した。
「小野寺さんどうしたの、そんなジッとこっち見て。」
「あ、ごめん。なんでもない。」
特に変わった様子はない。
この調子で私は教室に入ってくる人全員の反応を確認していた。しかし誰も赤羽くんを見て驚く者はいなかった。
おかしいな。
でも一つ重要なことがわかった。出欠確認の時間になっても河合さんは教室にこなかったのだ。
「ええと、河合は今日は休みっと。」
山田せん先生が河合さんの席を見ながら言った。
これでますます河合さんへの疑惑が強まった。でも違和感があった。
本当に河合さんが犯人なのだろうか、
その違和感こそが後に事件を解く大きな手掛かりになることを今の私に知る由もなかった。
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