屁理屈
「じゃあ赤羽くんの席は窓側の一番後ろの席で」
と先生は言った。
ちょっと待って、てことはつまり私の隣の席じゃない。赤羽くんととなりになるってことは変人イケメンの隣、つまり赤羽くんからも絡まれるかもしれないしクラスの女子が集まってきて面倒なことに巻き込まれるかも…
「やったー主人公席じゃん」
赤羽くんはうれしそうに言いながら私の隣に座った。全クラスメイトの視線が私付近に集まってきた気がした。
絡まれませんように絡まれませんように、、と念じていたが彼は話しかけてきた。
「えーその本俺持ってるー、君もミステリー小説とか推理小説好きなの?っていうか君名前なんていうの?」
隣にきて早々こんな絡まれるとは思ってなかった。この本を持っていなければと一瞬思ったが大好きな作品を恨んだ自分を恨んだ。
赤羽くんも名探偵を自称するくらいだから推理小説が好きでも不思議はない。赤羽くんに見られる前にしまっておけばよかったと少し後悔した。
「小野寺ユミって言います。推理小説は小さい頃から好きです。」
少し愛想悪く言ってやった。
「そうなんだーよろしくね!あと敬語じゃなくていいよ」
それから赤羽くんは何かと私に絡んでくるようになった。そのこと自体は別に特別嫌というわけではなかった。しかし他にやっかいなことが一つあった。その理由は赤羽くんの人気の高さにある。
彼はクラスですぐに人気者になった。なぜなら赤羽くんはとても面白かった。例えば体育の授業のドッジボール男子が投げたボールを避けようともせず顔面で受けたり体育館を膝でスライドしたり身体を張ったボケが多くそれが主に男子に人気を博していた。
そんな人気者の赤羽くんの周りの人の中には私と赤羽くんが話しているのがおもしろくない人もいるだろう。そういう面倒な人間関係に巻き込まれるかもしれない。これが私の懸念点だった。そして私はそのことを彼に直接言った。赤羽くんからしたらこんなことを言われて良い気はしなかっただろう。でも私は平凡な高校生活を送る為に心を鬼にした。
しかし赤羽くんから思いもよらないことを言われた。
「わかった、学校で話しかけるのは少し控えるよ。ただし条件がある。まず俺の質問に正直に答えてくれ、ユミは俺が異世界救った英雄だって話嘘だと思ってる?誰もその話信じてくれないんだよね。」
自分の眉間が動くのを感じた。
私は最初赤羽くんが嘘をついているように思えなかった。しかしそれは根拠のない直観的なやつだったが、最近彼の行動に違和感を感じることが多かった。だからその質問に正直に答えた。これからの私の安全な学校生活の為に
「私はあなたの異世界から帰ってきた不死身の人間っていう話は嘘だとは思えない。」
「なんで嘘じゃないと思ったの?」
いつもの元気な赤羽くんと違って冷静に聞いてきた。
「あなたは痛みに対しての恐れがなさすぎる。編入初日のときにドアに頭をぶつけたときだって普通は何かリアクションを起こすはずだけどあなたは何事もなかったかのようにふるまった。そのときは周りの視線が恥ずかしくてそうしたのだと思ったけど他にも同じようなことがあった。男子が目の前で本気で投げたボールに何の反応も示さなかったり、体育服のハーフパンツを履いていて膝が出ているにも関わらず体育館を膝で滑っていた。これは不死身になったがために痛みへの恐怖心が強くなったからじゃないの?」
正直今言ったことはただの推測で証拠はない。だから彼に聞いた。
「膝見せてくれる?」
赤羽くんは大笑いした。
「よくそんなとこ見てたね。いいよ、はい」
赤羽くんがズボンを膝の上まで上げた。彼の両ひざは傷一つないきれいな膝だった。
「やっと俺の話信じてくれる人ができたよ。これで今まで異世界であった出来事を話すことができるよ。」
その言葉に私は戸惑った。
「ちょっと待って、私と話すのは控えるんじゃなかったっけ?」
「言ったでしょ条件があるって」
「条件は確か赤羽くんの質問に正直に答えるって条件でしょ、私はちゃんと答えたよ。」
彼は不敵な笑みを浮かべながらこう言った。
「俺は『まず』質問に答えてくれと言った。つまり条件はまだある。それは、俺の話を信じなかった場合だ。でもユミは俺の話を信じてしまったのさ。」
こんなの屁理屈だ。納得がいかない。だけどこれを否定したところで話しかけるということができるのは赤羽くんだから私にはもうどうすることもできない。
目の前にあるこの整った顔をぶん殴ってやりたが高身長の彼の顔に手が届きそうにないし、
そもそも痛みを受けることに躊躇がない人を殴っても無駄だろう。
はあ~というため息を出す私に赤羽くんは「これからもよろしくね!」と言った。
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