本当の気持ち
「わ、私がやりました。」
赤羽くんの圧に押された河合さんが遂に白状した。
まさかこんなハッタリが効くとは。でもよく考えてみたらそうかもしれない。最初の、自分の手を見てしまうというミスから河合さんは精神的に少しずつ追い詰められていた。そして決めては赤羽くんの圧だろう。
正直ブラックライトの存在があろうがなかろうが最初から赤羽くんが圧をかけていれば白状したかもしれない。
「やっぱりお前だったか河合。今すぐユミに謝れ。」
その言い方には怒りも含まれていたがどこか優しさも感じるものだった。赤羽くんは、過ちを認めれば強くとがめない優しさも持ち合わせているのかもしれない。
「小野寺さん、ご、ごめんなさい。」
私は「うん」とだけ言った。
美波ちゃんは河合さんに何か言いたげだったがそれをこらえていた。これ以上大事にすると、私の為を思ってだろう。
まさか赤羽くんにこんな形で助けられるとは、赤羽くんが居なければ私は泣き寝入りしていたかもしれない。でもそれを救ってくれた。いやそもそも赤羽くんが居なければこんなことにはなってないのではとも思ったが、そんな気持ちはすぐにどっか行った。
ともあれ、これで全ての問題が解決した、私はそう思っていたが赤羽くんが河合さんの耳元で何かを言っていた。
何の話だろう?
いつも通り退屈な授業が全て終わり、みんなは帰りの支度をしていた。今朝は色々あったが、私も河合さんもいつもと変わらずに過ごしていた。
ふととなりの赤羽くんを見ると帰る準備をしている仕草がなかった。
「帰らないの?」
「ああ、ちょっと用事があってね。」
ふーんなんだろう
「あ、そうだ。明日の朝大分早めに学校来てくれない?ちょっと話したいことがあって。」
私は一瞬戸惑った、なぜなら私は朝とても弱いのだ。でも赤羽くんには今朝のことで恩があるので、それを承諾した。
「いいよ」
私は帰路につきいつもの帰り道を歩いていた。そこで忘れ物をしていることに気づいた。
あ、やばい。教室に水筒おいてきちゃった。お母さんに怒られる。
私は急いで今歩いていた道を反対に進んで行った。正門を抜け下駄箱で靴を履き替え、階段をダッシュで上った。そして教室の前に着いたときに中から人の声が聞えてきた。窓からコッソリ覗くと、そこには赤羽くんと河合さんがいた。
「それで放課後の教室に残ってってどんなよう?まさか告白?」
河合さんは顔を赤らめながら言った。
今朝赤羽くんが耳打ちしてたのは教室に呼び出す為か。盗み聞きは良くない水筒は諦めてさっさと撤退だ。
「いや告白じゃない。今朝の件だ。」
赤羽くんの言葉に私は足を止める。
「河合がなぜあんなことをしたのか正直に話してほしい。今後もう二度とあのようなことが起こらない為にも。」
「なんだ、そんなことで呼び出したの?私はもう謝って解決したことじゃん。」
さては河合さん、反省してないな。
「まあ理由を挙げるとしたら小野寺さんが赤羽くんと仲良くしてるのがムカついたからかな。」
理由はやっぱりそれだったか。
「それだけが理由なのか?」
「うんそうだよ、だって小野寺さんって正直ただの平凡なJKじゃん。っていうかどっちかって言うとちょっと地味じゃん。赤羽くんはそんな子より可愛い私と仲良くした方がいいよ。」
はっきり言いすぎだろ。
「はあ」
赤羽くんのため息が聞こえる。
「やっぱりあの場で理由を聞かなくてよかったよ。こんなこと本人に聞かせられない。」
もう聞いちゃったんだけどね。というかそのためにわざわざ放課後に呼び出したのか。これも私の為に
「お前は自分がやったことの重大さに気づいてないみたいだな。あの場で俺が犯人捜しをするって言ったときにユミはそれを止めようとしたんだ。」
「うんそうだった気がする。」
「その時に俺は感じたよ、ユミは傷ついてるって。何となくだけど。そして犯人捜しをすることでその傷が広がってしまうのではないかと思ったが、それでも俺は犯人が許せなくて結局犯人捜しをしてしまった、これは俺の自己満でしかなかった。だから今となってはあの時の俺を許すことができない。」
声だけで会話を聞いてるので赤羽くんがどんな表情で言っているかはわからない。でも、それでも、赤羽くんの気持ちが伝わってきた。
「それで何?私がした重大なことって。」
河合さんは逆に開き直っているように感じた。
「ユミを傷つけたってことだよ、俺とお前は。あの場ではユミは多少の笑顔を見せてなんてことないように振舞っていたかもしれないが、実際は深く傷つけたんだ。だから反省するんだ。そして心を入れ替えろ河合。お前は俺とユミが仲良くしていたら腹が立つかもしれない、でも俺はこれからもユミとの関係を変えることはしない。それが理由でまたユミに何かしようとするなら、今度は俺が絶対に止めるもう二度とあんな表情にはさせたくない。だからもうああいうことはやめろ。」
私は涙があふれていた。
本当は私も傷ついていたのだ、私自身もそれに気づいていなかった、気づかないふりをしていた。
「わかったよ。」
河合さんがそう言って教室から出ようとしたので私は慌てて階段の方に隠れた。河合さんは私がいる場所とは別の方向に走っていった。
私は家まで走った。
赤羽くんが私の本当の気持ちに気づかせてくれた。私は確かに傷ついていたのだ。でもその気持ちを救ってくれた。そしてもう一つ自分の気持ちに気づいた。
私は赤羽くんのことが好きだ。
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こんな話を書きましたが、次回からは事件があったりするので是非見てくださいね。




