異世界ペンション連続殺人事件 解決編1
授業が全て終わった。いよいよ、「異世界ペンション連続殺人事件」の答え合わせができる。
「今日も、帰り道はユミの方から行くよ。」
「また?まあ別にいいけど。」
この前と同じように、帰り道が反対なのに私の道から帰るらしい。帰りの荷物を整理し終えた私たちは一緒に教室を出た。そして私は教室を出てすぐに自分の推理を話し始めた。
「『異世界ペンション連続殺人事件』、かなり難しい事件だったけど、やっと犯人がわかった。私は最初、犯人は1人だと思っていた。その思い込みが事件をより難解にしていた。つまり犯人は2人だった。違う?」
階段を下りながら赤羽くんは「続けて」とだけ言った。
「そして、2人で行う殺人をより一層周りの人間に疑われにくくする方法がある。それは『交換
殺人』。」
交換殺人とは、例えばAさんがBさんを殺したかったとする。そしてCさんがⅮさんを殺したかったとする。このAさんとCさんが殺す相手を交換することを交換殺人と言う。
AさんがBさんを殺した場合、その後の捜査でAさんがBさんを殺した時のアリバイがないことや、Bさんを殺す動機があることなどがすぐにわかり、簡単にAさんが犯人だと突き止められてしまう。これはCさんがⅮさんを殺害したときも同様だ。
しかし殺す相手を交換する。つまりAさんがⅮさんを、CさんがBさんを殺すとこれらの問題が解決する。例えば、AさんがⅮさんを殺しても、Ⅾさんを殺す動機があるはずのCさんにはアリバイがあるため、Cさんは疑われない。そしてAさんにはⅮさんを殺す動機がないため疑われない。Cさんも同様に、Bさんを殺しても、動機がないので疑われず、動機があるはずのAさんもアリバイがある為疑われないという仕組みだ。
「動機がない人やアリバイがない人ばっかりだったのは交換殺人をした為だったわけだ。まさかミステリー小説でも散々使われた古典的なやり方だったとは思いもしなかった。でも考えてみれば、すぐにわかったことだった。科学技術が発展した現代では交換殺人なんて成功しないことの方が多いけど、科学が存在しない異世界だったからこそ出来た方法だね。」
私がこのことに気づいたのは美波ちゃんとの弁当の具材交換でだ。私の嫌いなトマトを美波ちゃんが食べる、美波ちゃんが嫌いなピーマンを私が食べる。利害が一致したからこそ出来たことだ。
これを話し終える頃にはすでに学校の外にいた。そして当たり前のように赤羽くんは私についてきた。
「いい推理だね。じゃあ事件が起こった順に何が起こったか聞かせてくれ。」
「うん、まず最初のヘスリー殺害について、これは一見誰にも犯行は不可能だと思われたけど、1人だけ可能な人間がいた。それはパレント。」
「パレントには犯行は不可能だってゲルが証明したはずじゃないか、5秒のうちに首を切り、そして自分の部屋に戻る。これはどう証明する?」
赤羽くんは意地悪な笑みを浮かべて聞いてきた。
今から説明するつもりだったのに。
「それはパレントの魔法が関係してくる。パレントは光魔法つかいを自称してたみたいだけど、私の推理ではそれは嘘。パレントが使える本当の魔法は『透明魔法』。」
赤羽くんが何か言おうとしてきたのでそれを遮った。言いたいことはわかっている。
「パレントが実際に光を出すところを何回も見たって言いたいんでしょ?でもこれも透明魔法なら説明がつく。恐らくパレントは身体を部分的に透明にすることが出来た。さらに透明度も操れることが出来たはず。透明度を操れたってことは光の屈折度を操れたということ。このことから光を出す方法は、部分的に透明にしたり、また透明度を操作して、身体の中で光を屈折させて大きくしていった。その光こそが偽光魔法の正体。この方法を思いついたのは良かったけど、パレントには初対面のヘスリーを殺す動機がないと思っていた。でも交換殺人ならそれも説明がつく。パレントの共犯の人物にヘスリーを殺す動機があったってことだね。」
「鋭いねー」
赤羽くんはそう言った。
これに気づけたのは授業中に赤羽くんが太陽の光を鏡を使って屈折させて、私の目に当てていたから気づけた。推理に行き詰っていた私への彼なりのヒントだったのだろう。
「透明人間がいるのならヘスリー殺害も簡単だ。まず、挨拶のふりか何かでヘスリーの部屋に入る、次に凶器を見せてわざと悲鳴を上げさせる。これを聞いた赤羽くんとクストが現場に駆け付ける、現場につくまでの5秒間に首を切る。恐らくこの時点で2人は現場についていたと思う。でもパレントはそこで透明になる。そして2人が死体に気をとられているすきに部屋から出る。これがヘスリー殺害の流れ。」
赤羽くんは静かに聞いていた。
「第2、第3の事件についても今から話していくね。」
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