なんとか彼は生還したい
ひとまず、彼は状況を整理することにした。
なぜ目の前にいる女子--彼女は店員らしき人とチップのやりとりをしている--は、自分をここに招き入れたか。なぜ自分は入れてしまったのか。というか、ここは何なのか。
雀荘業の人間ならわかる。ここは裏の雀荘。マンション麻雀とか闇の店とか言い方はいろいろあるが、警察に届け出をしていないお店。それゆえに、警察の目が届いている店では叶わないレート・過激なルールを敷く。
最初の問題に戻ろう。たぶん、遼子は自分の紹介という体で、一緒に打てる人間を探していたのだろう。誰か遼子の周りにいる人間に、「明日歌舞伎町の〇〇で卓立てたいけど、打てる人いない?」みたいなことを聞いて。それが酒井理音のことだと勘違い。そして自分は、セキュリティ対策の合言葉をたまたま言えてしまったため、こうして店の顧客に仲間入り。
「ふう……」
一つ、理音は天井を向いて息を吐いた。
そうこうしているうちに、卓の準備ができている。
理音はルール表とおぼしきファイルを店の棚から取り、読んだ。
なるほどなるほど。
いつもと桁が二つほど違う気がするが、気のせいではないな。
なんだか日本語がおかしいな。
理音もまた、店員とやりとりすることに。ここ、どうやって見つけたの? そこの先輩の紹介です。お金は? その先輩とノリ打ちにしてるんで、彼女につけてもらえれば。いいですよね? 遼子さん?
いいよ。
いいんかい、という突っ込みを理音は飲み込んだ。




