新宿歌舞伎町の雰囲気は少し暗い
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理音は、そのまま新宿の街を歩くことにした。電気屋と飲食店の並ぶ通りを抜け、都庁のほうまで行ってみて、駅のある地区へと戻る。こういうのは久々だな、と理音は思った。今まで、あまり一人で出かけるということをしていなかったし。仮に散歩に行くとしても、京王線柴崎駅前の商店街を歩くくらい。変わった店があるわけではない。ドラッグストアと、どこにでもあるチェーンの牛丼店と、いくつか八百屋やアパートが並ぶくらい。
日差しが強いな、と理音は思った。理音は目についたコンビニに入り、小銭を出して缶入りの茶を買った。そろそろ自分もキャッシュレスに移行すべきか、と思いつつ、賭場仕込みの現金精算文化から抜けやらない。
ふと、理音は立ち止まる。西口からすこし雰囲気が大人びる……というか、雑多で歓楽に満ち溢れた、遊びと夜の雰囲気のある方。日本屈指の夜の街、歌舞伎町につながる方の道。
見知った姿を見た。
白いスニーカーに、スキニーらしきジーンズ。快活な印象を与えるノースリーブのトップスと、黒髪。清楚な雰囲気とパンキッシュないでたち。
後ろ姿でも、そしてちょっといつもと雰囲気の違う服装でも、理音はその主がだれかすぐに分かった。杵田遼子である。高校生がこんなところで一人?
いや、今の自分が言えたことでもないが。
そこで、理音の記憶から思い起こされる記憶。あの人、あまり調子がよくないらしい。
どうしたんだろう。
……歌舞伎町。よくネットで見たニュース。立って客を待つ女性。
それでなくても、新宿といえば高校生は入れない、そういう店も多い。
いやなイメージ。イメージだけ、だよな。
それはさておき、どうしているんだろう? なんか顔合わせるのは気まずいけれど、でもどこに行くか気になる。
理音はその後ろ姿を追いかけることにした。
西口よりさらに密度の濃い人並みを抜け、理音はすこし距離を置きつつ、遼子の輪郭を目で追い続ける。
FPSプレイヤー(敢えて雀士とは言わない)の視覚、なめるなよ、と思いつつ、理音は歩く。
遼子は大通りを抜け、奥へ奥へと向かう。
これ、大丈夫? と思わないでもないが。
いや、大丈夫と思わないとまずい。東京随一の歌舞伎町の事情に疎い理音でも、雰囲気が分かる。
明らかに、危ない香りのする地区へと遼子は歩いて行った。
遼子は立ち止まり、細い道を見つけ、そこに入る。少し慌てて、理音も追う。
地面に、矢印のついた看板があった。たぶん生成AIで作ったと思しき、どこかでみた絵柄の女の子のイラスト。
かわいい子、揃ってます。
「揃っちゃだめ、遼子さん、揃えるのは麻雀牌だけにして!」
「……主語おかしいよ」
理音は口をふさぐ何かの感触を覚え、ついで地面に引き倒される感覚を覚えた。
「あっ、遼子さん。考え直してくれます? 困ったことがあるなら話聞きますよ。法律は、守りましょう?」
「……雀荘業の息子が言えたことか」
なんか突っ込み方に違和感があるな、と理音は思った。
というか、バレてたのか。




