雀荘自体は違法じゃない(合法経営とは限ら……)
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さもないとPCが熱暴走する呪いをかけます
とにかく、自分はそれを楽しんでいるということにする。
声を出そう。明るく接客しよう。
日が変わって、いつも通り家業の手伝いをする時間になった。
理音は『宝石』に入り、常連客と声を交わした。
人が増え、客がぞくぞくと入店する。出勤するメンバーも次々と準備を終えては挨拶を済ませていく。
そして今にいたって、心が明るいと感じているのが今の理音である。
ドリンクを運ぶトレーや灰皿、雑巾の類を点検しながら、松本女流プロと理音は言葉を交わす。
客がいっぱいなので、本走――打ち手が足りないとき、客の対局相手をする仕事――をしなくてもいい時分。
彼女が美人で背が高いから、話したいというだけではなく。
理音は実のところ、聞きたいことがあった。
「松本さん、そういえば話したいことがあったんですけど」
「なんだい? 彼氏なら募集してないよ」
「強くなるなら、何したらいいっすか?」
「……」
彼女は眼を見開いた。いろいろな感情と想いが、そこに込められているようで。
理音は、キレイだな、と思った。澄んでいるな、と。
「勉強する、いっぱい打つ、それ以外にあるかい?」
「金かけて打たないと、さすがに上達せんとか言い出しません?」
「まさか。まあ、賭博麻雀のほうがレベルが高いのは事実だが……いまどき、ネット麻雀しかしない子がプロになることだってあるからねえ」
そういうものか、と理音は思った。というか、もう少し具体的なアドバイスが欲しいとも。
理音は客が使うチップを整理しながら、もう一度たずねてみる。
「で、その勉強って何ってことですよ。たしかプロ団体って、講習会とかやってますよね? あれって高校生がいってもいいもんなんですか」
「ん、まった」
理音はドキっとした。彼女の細いしなやかな指が、理音の眼前に置かれる。唇に触れるか触れないか。
大胆な。そう思う暇は、状況を察した理音からすぐに飛んで行った。
松本プロの顔は、雀荘の一角――貸卓のほうに向いていた。何者なのかはわからないが、とにかくそういった話を聞かせるのはまずいということか、と。
理音はそう見て取る。
「松本さん、知ってるんですか? あの客」
「わからない……が、ちょっと警戒したほうがいいね。手つきがあまりにも慣れてないし、チラチラと周りを気にしすぎだし……」
なるほど、と理音は察した。
「Kですかね?」
「そうかもな。念のため、私が行こう」
そう言って、立ち上がった彼女はその卓に向かう。彼女は飲み物を伺い、灰皿交換の必要性を聞き、ついで何気なく、という体で口にする。
「お客さん、そちらのカバン、お預かりしましょうか?」
客の一人が、こういうのが聞こえた。
「ううん、ここに置きたいんだけど」
大きなカバンが、窓枠のところに置いてあったのがわかる。
松本プロは言う。
「そうですか。一応、チャックは閉めてくださいね。あと念のため。携帯をお使いのようですが、何かを撮るのは禁止でして……」
にっこりと、しかし少し冷たい声で。
「他のお客様のプライバシーもございますから」
Kは警察の隠語と、この店では定めている。内偵か? よくわかったなと理音は思った。
まあ、でも焦るには当たらない。
どうせこんな少額レートの賭場を検挙げたところで、実績としてはたかが知れている。
どちらかといえば、行き過ぎたルールを設けてないか、とか。そういう釘刺しだろう、ということ。
松本プロがレジのほうへと戻る。そして、店長と何か話す。
すぐに、二人は解散した。特に気にすることもないらしい。




