表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/47

麻雀がしたい紗耶香さん

この小説は某ピン東で-96000食らった日に書いてます


「麻雀部の活動は認めません」

 少し暗い部屋の奥で、きっぱりと、少女が言った。

「麻雀は賭博につながる不健全な遊戯です。競技として部活をするなんて、柳津さんの理屈は通りません」

 椅子に座ったまま、そう続ける少女。彼女のほかに、もう一人スカートを穿いた少女がいた。二人は向かい合う。

 にらみ合う。柳津さん、と呼ばれた少女は答える。立ったまま、腰に手を当てて。

「それこそ理屈が通っていないわね、佳ちゃん」

「ここでは中崎さんと呼んで」

「佳ちゃんだってわかってるくせに」

 柳津と呼ばれた少女――現肩書、人見高校麻雀部部長の柳津紗耶香――は畳みかける。目の前の少女――人見高校自治会クラブ統括担当中崎佳――へ、教え諭すように。

「今や麻雀が賭博だけなんて、誰が決めたの? オンラインの健全な麻雀だってある、純粋な競技プロを育成する団体だってある。ノーレートの雀荘だって東京で沢山開かれてるのに」

 紗耶香は続ける。

「この学校にはオセロ部だって、将棋部だって活動出来ている。その気になれば、お金をかけて将棋をすることもある。麻雀が賭博につながるから、認められないなんて道理はないわ。なぜ麻雀だけが、競技として認められないの?」

「競技じゃないからよ」

 中崎、という名札をたたきつけ、いらだちを隠さないまま佳が答える。

「逆に聞きますけれど。競技とは? 何をもって、麻雀を競技とするの?」

「ふうん……強い人が勝ち、上手くない人が負けること?」

「じゃあ」

 佳の顔に、スキを逃すまい、とする意思が見て取れた。

「残念だけどあなたの負けですね。どんなにツモが悪くても、どんなに配牌が認められなくても、腕があれば勝てますか?」

 紗耶香は天井を見上げた。それを言われると、つらい。

「長い目で見れば、強い人が勝てるわよね」

「逆に言えば、短期決戦なら運で決まるってことですよね」

「短期って、競技麻雀の公式戦は最低でも四戦一セット……」

「屁理屈をこねないでください」

 ぴしゃり、と佳は会話を打ち切った。

「わかりますか。競技じゃないんですよ、麻雀は。ただの遊びです。運任せにさいころをふって、出た目で勝ち負けを決める競技があるなら、教えてください。せめて、麻雀同好会として実績を残してください。ふさわしい実績をね」

 手元にあるファイルを机に軽くたたきつけ、それに目を落とす。

 もうそれ以上会話することはないらしい。


 はあ、とため息。紗耶香は生徒会室を出た。

 帰ろう、と紗耶香は思った。

 校舎の二階に、冬の肌寒さが残っていた。

 もう夕方。日が落ちている。

 校舎の窓越しに、夕暮れ時の街を見る。

 紗耶香は言った。麻雀部を守りたい。続けたいから。

「それでも、私は――」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ