怖い顔のおじさん
帰り道、わたしは気付く。
気付いてしまった。
通学路の途中、いつも通る古いアパートの前。
知らないおじさんが立っていた。
もちろんアパートの住人なんて知らないんだから、
知らないおじさんがいるのは当然と言えば当然なんだけど…
あれから毎日毎夕方、いつも見るそのおじさん。
すごく怖い顔をしている…
他の人は何も気にしていないっぽい。
あんなに怖い顔でこっちを睨んでいるのに…
わたしだけ?
わたしにだけ見えてたりする?
それってつまり…
あんまり怖くなったから、
近くに見つけたクラスメートに声をかける。
ぜんぜん話したことがない暗いこだったけど、
そんなこと言っていられない。
「ね、ねぇ… あそこにいるおじさんって見えてる?」
わたしがそう言うと、
彼女はわたしの腕を握って走った。
わたしはびっくりして声も出せず、
ついていくのに精一杯だった。
古いアパートから大分離れて、
もう家まで後少し。
近くの公園でやっと彼女が立ち止まる。
はぁはぁとお互いに息を切らしている。
やっと落ち着いて彼女が話す。
「絶対にあれに近づいたらダメだよ!」
彼女はすごく真剣な顔をしている。
あぁ、やっぱりそうなんだ。
そうだったんだ。
わたしは恐怖で震えた。
そして同時に彼女と出会えたことに感謝した。
彼女は優しくわたしの手を取って
わたしの家に向かって歩く。
わたしは新しい友達が出来たと喜んだ。
あぁ、危ないところだった…
まさか見える人があんな近くにいるなんて…
せっかくの呪いが台無しになるとこだった…
でも大丈夫みたい。
不幸中の幸いとかいうやつかしら?
すごくすごくめんどくさいし
すごくすごくイライラするけど
一番近くで見られるかもしれない。
憎い憎いあのこが苦しんで消えていく姿を