ねこさんとカエルくん
さっきまで降っていた雨は上がり、おひさまが顔を出し始めたころ、ねこさんは今日もおきにいりの窓辺で、ひなたぼっこをしています。
ねこさんぽかぽかぬくぬく、……すやすや ぐうぐう。
ぴょーん! ぴちゃっ
ぴょーん! ぴちゃっ
庭の花壇辺りから、楽しそうな音がきこえてきます。
ねこさんはふわあっとあくびをして、外を眺めました。
「やあ、ねこさん!」
「やあ、カエルくん。今日もおきにいりの傘でいつもの特訓かい?」
「うん! 今日こそはあの雲の上に乗ってやるのさ!」
カエルくんは空を見上げ、両手を広げると誇らしげにいいました。
カエルくんは、雲に乗って世界を旅するのが夢なのでした。
それを聞いたねこさんは、またふわふわとあくびをしました。
「そうかい、がんばってね」
「うん! ねこさん、ありがとう!」
カエルくんの特訓は続きます。
来る日も来る日も、
雨の日も、夏の暑い日も、雪の日は少しだけ眠そうだけれど、毎日毎日続くのでした。
今日は春のぽかぽか日和です。
ねこさんはいつも通り特訓するカエルくんを眺めながら、ぽつりと呟きました。
「そう言えば昨日あっちゃんが風船でお空に行くんだってはしゃいでたっけ……」
カエルくんの飛び跳ねる姿が、あっちゃんにそっくりなのでした。
「ケロロっ!? 本当かいっ!? うわぁ〜! あっちゃん羨ましいなあ!」
「あ、えっと……」
目をキラキラさせ、飛び跳ねるカエルくんを前に、ねこさんは少し困ってしまいました。
実は、あっちゃんの赤い風船はひとつしかないのです。
「うーん、じゃあ……、あっちゃんから風船を借りてこようか?」
「いいのお!? やったあ!」
カエルくんは大はしゃぎ。
ぴょんぴょんぴちゃぴちゃ!
ぴちゃぴちゃぴょんぴょーん!
ねこさんはあっちゃんの赤い風船をもってくると、
カエルくんの体に風船の紐をやさしく巻き付けました。
「カエルくん、準備はいいかい?」
「うん! ねこさん、もちろんさ!」
ねこさんが手を離すと、ゆっくりとカエルくんが浮かんでいきます。
カエルくんが喜んだのもつかの間、春風がカエルくんに向けびゅうっと吹き荒れました。
「うわあああっ!」
ねこさんより高くカエルくんは浮かんでしまいました。
びっくりしたカエルくんは叫びました。
「ねこさん、たすけて!」
どんどん高く遠くなっていくカエルくんに
ねこさんも大慌て!
「カエルくん! 今助けるからね!」
ねこさんは急いで木に登り、赤い風船を引っかきました。
赤い風船は、ぱちんっと割れてカエルくんはねこさんの背中に落ちました。
カエルくんはねこさんに抱きつきながらいいました。
「こわかったよぅ、ねこさんありがとう、ありがとう……」
「カエルくん、ごめんね。あんなに高く飛ぶなんて、ぼく思ってなかったんだ」
「ねこさん、でも僕わかったんだ!」
「ん?」
「空はとーっても怖かったけれど、
ねこさんといっしょに居られるだけでしあわせだって!」
「ぼくもカエルくんが居ないと、さびしいなあ……」
2ひきは木の上で泣いたり笑ったりしました。
それからカエルくんの日課は空飛ぶ特訓ではなく、ねこさんとのひなたぼっこになりました。
おしまい
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
2023年は良い年になりますように。