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拉致先の隣国④

「夜遅くに申し訳ございません、女神の化身様」

「…あの?」

「…サミュエル・ノーフォードと申します…」

「ノーフォード辺境伯様の…ご家族ですか?」

「いえ、私が当主です」


ノーフォード辺境伯⁈

目を見開いたから多分目は1.5倍にはなっていたと思う…。


「中へ入っても?」

「はい、どうぞ」

…あなたのお屋敷ですから!と思ったけど、思い悩んで青白い顔をしている辺境伯にははいどうぞとしか言えない。


黙って俯いて応接セットのソファで座り続ける辺境伯。…重苦しすぎてたまらない!なんとか言って!


どう言おう?

「で、私をどうしようと?」

いや、それで殺しますなんて言われたら最悪。生きながらえて逃げられる方法はどうしたらいい?!

「ドーソン公爵邸へ帰らせてください」

…いや、ストレートすぎでしょ。

「せめてお庭の散歩位はしたいのですが」

…これ?これじゃない?そこから話しが進めば…!よし!


「ノーフォード辺境伯、ずっと部屋の中ですので、せめてお庭を散歩させていただけませんでしょうか」

「女神の化身様…はい、承知致しました。執事へ指示しておきます。…ただ護衛は付けさせてください」

「はい、わかりました」


また重苦しい沈黙が流れる。

もう!ハッキリ言って!


多分私のイライラが伝わったんだと思う。意を決したようにノーフォード辺境伯が口を開いた。

「申し訳ございません。女神の化身様、私がここへお連れしたのは事情がございまして…」

「え、違うでしょう?ハミル辺境伯が、でしょう?」


ノーフォード辺境伯が驚いて私を見た。

いやいや、ハミル辺境伯が不用心過ぎたから知ってるし?


「…ご存知でしたか。実は領地は山崩れが起きたこと、特産の小麦が虫害で殆ど採れず、それが3年連続で続いたものですから、ハミル辺境伯に借金を致しました」

ノーフォード辺境伯がそこで息をついた。

「しかしその額は巨額で…返済をどうするかと困っていたところ…ハミル辺境伯から提案がありました。奴にとって目障りな女神の化身様をこのノーフォードへ連れて来るので、匿って欲しい、と」


またため息をついた。

「勿論最初は断りましたが…借金が巨額過ぎて断りきれませんでした。申し訳ございません!」


ノーフォード辺境伯が土下座をした。

いや、辺境伯が土下座って!

慌ててまたソファへ座らせたわ。


ノーフォード辺境伯からの提案はこうよ。

①ほとぼりが冷めたら私はハミル辺境伯邸へ移され、第二夫人とされる

②ノーフォード辺境伯邸で後妻として過ごす(妻は死別、子は2人あり)


どっちも妻限定じゃない!

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