拉致先の隣国③
色々考えてみた。
拉致はハミル辺境伯の差し金だけど、何故隣国であるマゼラン王国まで連れ去ったのか。
そしてノーフォード辺境伯は女神の化身の拉致を知っていて看過している。もしこのままこの屋敷で生活をし続け、どこにも行かないというのなら、この拉致はマゼラン王国としての表向きの指示ではない。
ノーフォード辺境伯の単独判断かそれとも王家がわかっていて目を瞑ったか。もし王家が絡んでいるならこんな国境近くの領地ではなく王都へ移動させるだろう。
そもそもハミル辺境伯は何故私を拉致したのか?目的は?私は活版印刷と複式簿記をこの世界に持ち込んだだけ。たったそれだけなのに?
結局"何故"がわからず、そのまま1週間が過ぎてしまった…。公爵様やローズ…みんな…心配してるだろうな。
私は軟禁状態でただ食べて寝るだけ。本も小説しかない。所謂ビジネス書とは程遠く、貴族向けのあまり面白くない恋愛話が殆どですぐ飽きてしまったし。
配偶者はお家が決めた相手で、本当に愛する人は別に居て…ってパターン(笑)
さすがに暇すぎて辛くて、手芸をしようとしたものの…貴族女性が大好きな刺繍は苦手だし…唯一作れそうなシュシュを作って、それで髪を結んで邪魔にならないようにして、身体を鍛えることにしたの。
大量にある衣装部屋の服の中から1番軽装っぽいものを選んでスカートを軽く紐でくくり、腹筋とかプランクとかしだしたから、部屋付きのメイドさんはギョッとしてたけど、気にしない!
もし助けに来てくれたら?
その時に体力がなくて足を引っ張ることをしたくない!
…助けに来てくれない、来れないかもしれないというのは考えないようにしないと涙が出るから考えないようにして。
無駄に広い部屋だったから、勿論部屋の中でジョギングもしたわ。
シャワーで軽く汗を流した後、飲み物を飲んでいたら、ノックがした!
え!?ノック?!
ご飯の時間以外にノックされるのはなかったのに!
メイドさんが扉を開けると、1人の30代後半らしき薄い茶色の巻き毛の男性が入ってきた!
誰?!
身なりからしてそれなりの人みたいだけど?!




