拉致先の隣国②
手芸と読書。
貴族の成人女性はそれで1日過ごすと以前ローズに教わったっけ。
部屋の中はまだ部屋付きらしいメイドさんが1人いて、真っ直ぐ部屋の入口のところで立ってる。…私からの指示待ちなんだろうな。
お願いすることなんてないし…気の毒だけどそのままいていただいて、私はベッドでごろごろして考えてみた。
ハミル辺境伯は何故私を拉致して隣国で友好国であるはずのマゼラン王国へ私を連れて来たんだろう?
あ!そうだ!
「あの!あなたのお名前は?なんとお呼びすれば?」
部屋付きの人に聞いてみた。
「…ジェインと申します」
「ジェイン?私のこの後の予定は?」
「…ございません。この部屋でお過ごしください」
「この屋敷の主人は?」
「…ノーフォード辺境伯です」
「ノーフォード辺境伯にはお会いするの?」
「いえ、今のところ予定はございません」
「…そう…。あ、ノーフォード辺境伯は外出中?この屋敷にいらっしゃらない?」
「いえ、おられます」
「…そう、ありがとう」
会う予定がない?!
客人としての扱いをされているのに?
何故?
エッと思って一瞬だけ顔に出ちゃったけど、それ以降は極力表情に出さないように頑張ってみて、会話終了後はまたベッドでごろごろした。
これまでの知識を総動員すると…
普通客人扱いだとまず屋敷の主人に会う。
それがない?
つまりこの屋敷の主人の客人ではない。
でも客人としておそらく最高級のもてなしをされている。それはドーソン公爵家との比較しか出来ないけど、ドーソン公爵家とさほど変わらない位と思えるから。
食事は食堂へ行くのではなく全て部屋で。一気に提供されるのではなく、フルコースを専用ダイニングで提供される。私の居室として提供されているのは寝室・リビング・ダイニング・衣装部屋。1つ1つが物凄く広い。
女神の化身としての拉致。
最高級のもてなし。
でも客人ではない。
このノーフォード家は正式に私を客人と認めたくないけれども女神の化身として丁重に扱わねばならない立場にあるということ。
つまり拉致そのものを認めないということ。
という結論しか出ない。




