誘拐事件⑤
馬車と違って逃げるスピードの馬に乗り続けるのはきつい。でもさっき首筋に剣を当てられたから怖くて動けない。
フレッドも敵だったんだ…
何勘違いしてたんだろう、私。
怖い。
一体どこまで行くんだろう?
「このソーダの森は我が領地から隣のハミル辺境伯の領地へと続き、更にその向こうはマゼラン王国になるんですよ」
ふと公爵様が仰ったことを思い出した。
そうだ、このソーダの森は木々が多過ぎて兵が一気に押し寄せられない、つまり進軍には向かないから、国境になっていたんだった。
公爵家の領地はすごく広い。でもなんでハミル辺境伯の領地を挟むとはいえ国境に近い領地なのかと不思議に思って尋ねたら、公爵家の騎士団の戦闘力を買われてのことだって知ってビックリしたのを覚えてる。
5代前、忠誠心が強く、王家と親戚筋で随一の騎士団を誇るドーソン公爵家を王都近くの領地から国境近くの領地へと王命で遷移したらしい。
公爵家の屋敷は領地の中でも比較的国境に近いところに位置していて、有事には公爵家の敷地内に詰めている騎士団が即出動出来るようになっている…。
のんびりした公爵家からは考えられなくて、ビックリしたっけ。
ソーダの森は早馬だと僅か3日で国外へ出られる、そんな場所。
既にもう1日経過してる。
あと2日もすれば国外に出てしまう。
マゼラン王国…
確か公爵様は「我が王国と友好関係にあります」って仰ってたっけ。
じゃあなんで?
前方に少し開けたところが見えてきた。
すると突然スピードが緩まり、皆馬を降りて違う馬に乗り換えた。乗ってきた馬はそのまま放たれたみたい。
そっか…いくら馬でもこれだけのスピードで走り続けたら疲弊するよね。だからスピードを落とさない為に乗り換えるんだ!
…ということはこの拉致は用意周到に実行されたということ。
精神的にもそうだけど、肉体的にも正直キツイ。お尻も痛い。でも私もまた急いで新しい馬に乗らされ…そのまま再び走り出した。




