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誘拐事件③

女神の化身。


でも異世界ものでよくあるようにチート能力なんてない。魔法も使えない。強い力も何もない、日本にいる私と全く同じ。唯一違うのは言語だけ困らないという点。そこはチート能力だと否定しない。


でもなんで今頃さらわれたの?

存在そのものが尊いとは公爵様に言われたことがあるけれど、その為?


一瞬戸惑ったけど、押し黙る訳にはいかない。


「私位の歳の女の子ならこれが普通です」


「それより!あの…とか、ちょっととか、そんな呼び方しか出来ないのは不便です。だから名前をお聞きしました」


とキッパリ言い切ったらまたふぅと大きくため息をつかれ…じっと考えてから「フレッド」と小さく呟いた。


「フレッド?いい名前ね!私は菜那です!」

「…知ってる…」


多分物凄く考えたのは万一私が救出され、フレッドたちが逃げられた時に名前を知られていたら捕まる可能性が高まるからだろうと思う。


でも教えてくれた。

偽名かもしれない。

でも教えてくれたことが、まだフレッドが悪人になり切っていないと言えると思う。多分。


馬車のドアが開くともっと人相の悪そうな男がフレッドにお皿を2つ渡した。


「ご飯だ。朝まで何も出ないから食べられるだけ食べろ」


長いセンテンスを喋った!?


私が受け取ったお皿にはパンと干し肉と果物。彼が持つお皿には干し肉とパンしかない。量は彼の方が微妙に多かったけど。


「フレッドさんのお皿には果物がないんですが?」

「俺らはこれでいい」

「え、でも…」

「…女神の化身だけだ、果物は」


そういうこと?

確かに果物は街に出た時に思ったけど、決して安くはない。深い森が多いこの辺りでは果物はあまり取れないから貴重なんだと思う。


女神の化身として丁寧に扱われる。

女神の化身を得たい人や国が誘拐した?

でもこの国には6箇所から女神の化身が現れると言われるし、王家は私を大切にしてくださったし、他の公爵家も過去女神の化身が現れているらしいからあえてドーソン公爵家を妬むのもどうなの?と思う。


そういえば複式簿記の講義の時に4公爵家の他の3公爵様が来られていてご挨拶したし、皆さま少しでも自分達に便益を…という感じではあったけど、私に物凄く優しかった。


まさか。他の国ってことはないよね?


そんなことを考えながら馬車が走る中、食事を済ませた。私、乗り物酔いしにくいタイプでホント良かった!


「他の人たちはご飯を食べないんですか?」


またふぅとため息をついてフレッドが「食べながら移動するんだ」と答えてくれた。


食べながら!馬に乗る?!

でもカーテンがあって外が見えない。

確かに干し肉とパンなら片手で手綱を操りながら食べられるかもしれない…。


食べ終わるとお皿をフレッドに渡し…馬車の中で完全に足を座席に上げて、狭いからちょっと膝を三角に曲げて寝転んだの。


馬車はすごいスピードを出してるから物凄く揺れるけど、私は進行方向に向かって座ってるから、座席から落ちることは余程のことがないとなさそう。


我ながら図太いと思う。

でもいざという時に逃げられるように体力は温存しておかないと。


…少し寝たと思う。

以前より更に馬車の車輪の音が響くから、きっとかなり夜が深まったと思う。


目が覚めて少ししたら、突然ガタン!と馬車が激しく揺れ、座席から落ちそうになり、フレッドが支えてくれたので、ゆっくり怪我しないように床に落ちることが出来た。


周囲がざわつく。

一体何があったの?

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